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特技は空元気

友人のヒキチさんが主催するみんなの大学校
障がいのある方や疾患等で支援が必要な方のためのウエブ上を基本とした「学びの場」です。18歳以上の方で障害者手帳をお持ちの方もそうでない方も「学びたい」お気持ちのある方が入学対象です。
というところ。

ここで、ナチュクリ講座を二ヶ月連続やらせてもらった。
今回は、始める前に、それぞれ簡単に自己紹介。
日本で自己紹介っていうと、大体所属と名前を言っておしまい
なことが多いような気がするけれど、今回は、名前と特技!

かなり多かったのが特技は「寝ること」な人。
特技が寝ることっていうことは、どこでも眠れるの?
と聞いたら
「うん。布団に入った瞬間に眠れる!」
「そうそう。横になったら、寝られる。」
という返事が返ってきた。

「人を殺すのが上手です。」

「仮想でな」のフォローが入るなど……。

「特技がないのが特技かしら……」
お子さんの介助で参加してくださったお母さんがそう言った。
ら……
ヒキチさんが、
「でも、お母さんいっつも元気ですよね。元気が特技なんじゃない?」
と言い出した。すると、お母さんはちょっと困ったような顔で
「う〜ん。実際は空元気なんですよ。介助で疲れちゃったりして
そんなに元気でもないんだな。」

あ〜、わかる!
実際はそんなに元気でもないけど、
ぶすっともしていられないし、
座っちゃったら立ち上がれなくなりそうだから、
なんとなく、動く。
すっごく元気なわけじゃないけど、なんとなく、元気を装ったり
元気そうに笑ってみたり……の空元気……。

と思って彼女の言うことばに心の中でうなずいていたら、
そうか、じゃぁ、ヒロコさんの特技は空元気だね
とヒキチさん。
すごいまとめ方だと、思わず苦笑。
でも、こうやって、ざっくりまとめて先にいかないと
進んでいけない日常や人生もあるよなぁ、
と、彼の仕切りを見ながら思う。

帰りの電車の中で、特技は空元気……に思いをはせる。
空元気が過ぎると、見栄をはってしまったり
実際以上に自分を大きく見せようと頑張ってしまったりして、
マイナスに作用することはありそうだ。

でも、座り込んじゃったら、立ち上がれなくなりそうだから
立てる間は立っているとか、
下向いたら涙が出てきそうだから、とりあえずちょっと目を上にもっていく
とかして、崩れ落ちないようにするための空元気は
もしかしたら、サバイバルの一つの方法かも……。
そんな気持ちになった。

お母様の介護を続けている友人が、
最近、お母様が「気にしないことにしたの」とよく言うの、と言っていた。
中医学などで言うと、気は生命のエネルギーみたいなもの。
それが体内を駆け巡っていれば元気だし、
何かの不具合でその流れが滞るのを気滞と言ったりする。
どこかがちょっと痛い、あのことがひっかかる……
そんな日常の不具合を、心や体に取り込んでしまう、
つまり、気の流れに取り込んでしまうことが
気にするなのかもね〜。
そんな話になった。

心配事や小さな不具合を流す。
まともに取り合って、気に取り込まない……ことが気にしない。
なんとなく、それは、今日ヒロコさんが言っていた空元気につながるなぁ。
そんな気がした。
不具合や不調を無視しろ
つらいことから目をそらせ
というわけではないけれど、
ガッツリ向きあって一大事にしなくてもいいことは、
まずはさらっと流してみる。
元気がなくなりそうなことに、正面から向き合わず、ちょっと空元気で
通り過ぎてみる。

Let it go.
取り合わない。流す。
そのまま行かせればいいんでは……。
それも一つの知恵。



得意技は家事の手抜きと手抜きのためのへりくつ。重曹や酢を使った掃除やエコな生活術のブログやコラムを書いたり、翻訳をしたりの日々です。近刊は長年愛用している椿油の本「椿油のすごい力」(PHP)、「家事のしすぎが日本を滅ぼす」(光文社新書)