読書感想文『モモ ミヒャエル・エンデ作 大島かおり訳』

モモ、きっとみんな一度は聞いたことのある作品かと思います。
私も読んだことあったかなーと思ったけど、読了感からたぶんなかったな。

副題「時間どろぼうと ぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子の不思議な物語」
からも分かるような、ファンタジーな内容です。
が、想像以上に響くものがありました。

きっと読んだことある人多いと思うけど簡単に要約すると、

心にゆとりを持って生活していた人たちが、成功や物質的な豊かさを手に入れるために時間を節約することで、心の豊かさを失い始めてしまう。
みんながせかせかして、イライラして、無気力になって、何も愛することができない状態になってしまう。
その名も致死的退屈症。
これは灰色の男=時間どろぼうのせいで、モモの活躍で人に心の豊かさ、ゆとりが戻ってくる。

私自身、今までどちらかと言うと時間に追われて生きてきた。
というか時間に追われていた方が安心だったというか、暇な状態は不安に駆られるので、常に何か目的を持っていたかった。

でも何か違うんだよなー、何かしっくり来ないんだよなーと思い始めていたここ数年。
自分の中のなんとも言えない思いを、この本を読んで少し客観的に見れた気がする。

そしてびっくりするのが書かれているのが1976年なのに、現代にまんま当てはまるということ。
今の今を見ている人が書いたんではないかというくらいの風刺的な内容。
忙しすぎて自分を見失っている人、ぜひ読んでほしい。
あとは育児中の人。

小説の中で、子供達も灰色の男たちに時間を盗まれてしまう部分があるのだけど。

子供たちをあすの世界のために教育することが必要→役に立たないことはさせるな→子供たちは夢見ること、夢中になることを忘れさせてしまう

とうくだり。
あー、そうだね、そう考えちゃっていたかもと。
夢を見てほしいと思いつつも、直接的に分かりやすい教育を優先させてしまうよね。
それが全てダメではないけど、何か教育の根本を考え直さなきゃと感じた。

今回、何かの媒体で、モモを大人になって読み返してやはり良かったというインタビューを読んで、気になって借りてみたのですが、これは読んで本当によかった、出会えてよかった作品でした。

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