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青と緑と教会と。五島列島の旅―前編―

10月のある日、少し落ち込むことがあった私は気分転換を求めてスマホでネットサーフィンをしていました。

地理や旅行が好きな性分なので、気がついたら日本の色々な土地のことを調べながら、次はどこに旅に出ようか…と考えます。
そんな時ふと頭に思い浮かんできたのは、朝ドラで見た長崎県・五島列島の美しい景色。

3秒後には決めていました。

そうだ、五島、行こう。

博多から五島へ―人生初の船中泊―

12月初頭の金曜日の夕方、仕事はまだ続いていますが自分の心は既にウッキウキです。
なぜなら、パソコンを閉じた後は念願の五島列島への旅が待っているのですから。

仕事を終えてすぐに最寄り駅に向かい、新大阪からさくら号に乗車して目指すのは博多駅です。

博多駅に到着し、バスで約15分のところにある博多ふ頭を目指します。   

博多駅前はイルミネーションですっかり冬ムード。
すごい都会や…

博多ふ頭で、五島列島行きのフェリー『太古』に乗船します。
23時45分に博多を出港し、目的地である五島列島・福江港には翌朝8時半頃に到着予定。寝ている間に五島に着く、非常に便利な交通手段です。

船内は2階建てで、2階には家族向けの個室やカプセルホテルのようなベッドもあります。
船上から眺める朝焼けの空。

朝7時頃に目覚め、甲板で朝食のおにぎりを食べ、船内の自動販売機で買ったホットコーヒーで暖まる。
こんな至福の時間を過ごしていると、目的地の福江港が見えてきました。

いよいよ、夢にまで見た五島列島に足を踏み入れます。

福江、穏やかな海

福江島は五島列島のメインランドと言える島で、人口2万人以上を擁し中心街の規模もそれなりに大きい一方、火山と波風が形成した自然が豊かな島でもあります。
旅の1日目は、朝ドラでも登場したこの島の絶景を巡ることにしました。

大洋を望む場所、大瀬崎灯台

レンタカーを借り、まず目指すは五島の最西端・大瀬崎灯台です。
朝ドラでは主人公の友人がこの灯台で三日三晩過ごし、仕事で病んだ心を癒やされていましたね。

福江から車で1時間程度で、灯台までの山道に繋がる駐車場に辿り着きます。
車を降りて下り坂を20分ほど歩くと、視界が開けて遠くに大瀬崎灯台、そして広く青い東シナ海が見えてきました。

遠くから見た大瀬崎灯台。
灯台の先に広がる東シナ海。

青い海が水平線の向こうで空と一体化するまで遮るものは何もなく、その青はどこまでも深い色合いです。
島々の緑が彩る瀬戸内海に慣れている自分にとっては、海と空しかない景色は圧倒的で、海の穏やかさに反して恐ろしささえ感じました。

古代、日本から中国大陸への船旅はまさに死地を潜り抜けるようなものだったといいます。
九州から西へ進みこの五島列島を過ぎると、待っていたのは波風が荒れ狂う大洋。当時は船の設備も乏しく、生きて大陸に到着し生きて日本に帰ってこられるという保証は全くありません。
船の上の人にとって、この大瀬崎灯台は最後に見る日本だったかもしれない。
美しく果てしない青色は、その深さのあまり彼らを呑み込んでしまったのかもしれない。
彼らは、今まさに漕ぎ出そうとしていた大洋をどんな思いで眺めていたのでしょうか。

島を駆ける

灯台から駐車場に戻り、島の北西岸に沿ってぐるっと回るルートに入ります。 
EVのバッテリーの残量を気にしながら車を走らせていると、目に飛び込んでくるのは島の幾多もの美しい景色です。

漁港の景色。海と山の色があまりにも美しい。
これほど広い砂浜を見たことがありません。

ドライブを始めて4時間ほどで、日常に疲れた自分の心は完全に洗われていました。
海は穏やかで、空は明るく、山は優しい。
まだ旅の序盤ですが、「五島に来てよかった」と心の底から感じました。

島の北岸に沿ってドライブを続け、立ち寄ったのは魚津ケ崎(ぎょうがさき)公園。
朝ドラでは小さい舞ちゃんが自分の意志でばらもん凧を飛ばした、彼女の人生において非常に重要な場所です。

魚津ケ崎公園の景色。
木が強風でなびいているというわけではなく、元々こういう形に成長しています。海風に晒されるこの場所の気候の厳しさを物語ります。

この魚津ケ崎は平安時代には遣唐使の潮待ちの場所だったそうで、五島列島にはその他にも遣唐使ゆかりのスポットが多数あります。
大瀬崎灯台の項で書きましたが、彼らにとって五島列島は大洋への出口。当時の大洋航海はまさに命懸けです。
空海も最澄も、この五島が最後の日本の景色になるかもしれない…という覚悟でこの魚津ケ崎にいたのかもしれません。

福江の街

街の中心部から少し離れたところには、標高200mほどの鬼岳があります。
全面が草に覆われたなだらかな斜面は他の山々とは一線を画しており、福江の街からも存在感は抜群。
街のばらもん凧揚げ大会がここで開催されるなど、福江のシンボルとしてそびえ立っています。

鬼岳は火山活動によってできた山です。サラサラ系の溶岩が固まってこの形になったんでしょうか。

レンタカーを返却してゲストハウスにチェックインすると、五島列島らしく隣には教会がありました。

福江教会は冬らしい彩りになっていました。

島旅というものは青い海と緑の山に癒されるのが常ですが、五島列島に特有なのはその青と緑の間に教会があること。
この日は絶景巡りがメインでしたが、2日目は改めて教会巡りを楽しむことにします。

前編はこれでおしまい。後編では、福江島の北にあり教会が多数所在する「上五島」と呼ばれる地域を巡ります。


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