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優しい人たち。妊娠5週目②

前回は、総合病院でのショックな診察の話。
「流れちゃうかもね」と軽〜く流産の可能性を示唆され、めそめそ帰宅した。

翌日、かかりつけの漢方医院を受診した。なかなか予約がとれない病院だが、奇跡的に直前に空きがでていた。妊娠が確定してからの方がいいかと思ったが、辛い時にいつも助けてくれた先生に、どうしても会いたくなった。

ここまでの事情をすべて把握した先生は、いつでも穏やかで優しいのに、珍しく強い口調になった。

「流れちゃうかも、なんて確証もないのに医者が言っていい言葉じゃない。安定しにくい時期だからこまめに様子を見ましょう、と言うのなら普通のこと。違う産院に行ってごらん。そんな医者のせいで、あなたが傷ついちゃダメだ。」

普段と違う、先生の力強い言葉に、また涙が込み上げた。
そして先生は続けた。

「まず着床したことが、本当に本当におめでたいことだし、奇跡的なこと。だから、おめでとうね。」

1人あたり10分ほどしかない、限られた診察時間の中で、先生は「おめでとう」を3回も言ってくれた。

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先生の助言のとおり、違う病院をたくさん調べて、自宅からも職場からも近い個人医院へ電話をした。
他院で言われたことを伝えてそちらに行ってもいいかと尋ねると、電話口の女性の方が快諾してくれた。

「お産はもううちではやっていないんだけど、妊婦健診はできますよ。不安でしょう、今お昼休みだけど、大丈夫だからいらっしゃい。」

優しくて、温かくて、また涙がこぼれた。感情が忙しいし、涙脆すぎる。

到着すると、「電話ありがとね」と先ほどの女性が言ってくれた。昔はお産も扱っていたが、今は妊婦健診だけのよう。これまた優しそうなおじいちゃん先生が内診してくれた。

前回とは違い、内診がまったく痛くない。長引くこともなくピンポイントのエコーで、先生は妊娠5週の小さな小さな胎嚢を見つけてくれた。
内診代でエコー画面を共有しながら、ドアップに拡大してくれた。

「ここに、チラッチラッと点滅している点が見える?これが赤ちゃんの心臓ですよ。アップにしているからボヤけて見えるけど、胎嚢のサイズも心臓も、正常です。」

ご想像通り、もちろん涙が出た。「良かった…良かった…」それしか言葉が出なかった。
おじいちゃん先生は、「診察がとても難しい赤ちゃんが小さい時期だから」と、他院を悪く言うことも決してなかった。それがまた、先生の人柄を表していた。「ここが袋で、拡大しているから鮮明じゃないけど、これが赤ちゃん。記念にどうぞ」と説明つきでエコー写真をくれたのが、また嬉しかった。

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その後2ヶ月ほど妊婦検診をしてもらいながら、市の相談窓口の助産師さんにも相談して(めちゃくちゃ親身になってくれた)、お産ができるアットホームで最高に優しい助産師さんや先生がいる個人医院へ、転院した。

始めこそいろいろあったけど、その後の経過は順調そのもので、最初の総合病院ですべての悪い出来事を済ませたのかと思えるほど、それからは素晴らしい出会いしかなかった。

さぁ、いよいよつわりの始まりです。

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