見出し画像

🌛白拍子とジャワガムラン「月影之川」(インドネシアの三つの言語、日本語と日本古語で歌い舞う六楽章の組曲)~その創作の舞台裏~(その1)

 「ムーンリバー」を日本語に訳すと「月影之川」。水に映った月、これを日本語で特別に月影と呼びます。「ムーンリバー」に着目した点は、これまでも随所で述べてきました。

 2020年4月7日にコロナ感染症の対策として緊急事態宣言が出されました。通勤、通学も一旦中断されました。そして合気道の道場も閉鎖されました。そこで私は、毎朝、近所の綾瀬川をランニングすることにしました。ホール、ライブハウスで行われる音楽、演劇の公演もほぼ完全に中止になりました。当分、音楽活動はできないのではないか?と思ったミュージシャンは相当いたのではないでしょうか?

 綾瀬川を走りながら、当時、使われ始めた言葉「ソーシャル・ディスタンス」が頭をよぎり、「じゃぁ、川を挟んでライブをすればいい訳ね」と次なる企画が浮かびました。

 まさに緊急事態宣言が出て、対面の声明や白拍子のレッスンが不可能になったので、オンラインのレッスンの体制を取った途端に、香港の研究者たちから、声明のオンライン・レッスンの問い合わせがありました。一人は、「水月観音」の仏教美術史で博士論文を書いた李俊彤先生、もう一人は、「8世紀の唐時代の中国語の音韻(発音)」の博士論文を書いた蕭振豪先生です。

 それで、李俊彤先生に色々と教えてもらいながら、水の中から現れる神様「水月観音」を、川を挟んでやろうと思い作曲し、無理矢理Takeshi Lua君を誘い、綾瀬川上流でゲリラ・パフォーマンス(突然、予告なしに勝手にライブを始めること)を始めました。

 これはさらに綾瀬川の源流の秩父川に行って、2020年の仲秋の名月に撮った動画です。

綾瀬川の源流の秩父川にて 2020年の仲秋の名月に撮影 

 Takeshi君は、カチャピ(Kecapi)というインドネシア、西ジャワのチター属の弦楽器の即興をしており、何度かインドネシアに行って。現地のミュージシャンとも共演をしています。

カチャピの演奏例の一つ

 Takeshiくんとは、満月の夜にいつも野外でゲリラ・パフォーマンスをしていました。なかなか、川に映る満月を見るのも簡単ではないこともわかりました。そういえば「ムーンリバー」という曲は、川に映った月のことを歌っているのか、と思うようになり、「ムーンリバー」を声明の作曲方法で、書いてみようと思いました。

 その香港のもう一人の先生、蕭振豪先生に「ムーンリバー」を8世紀の当時代の中国語に翻訳してもらいました。さらに天台声明を日本に持ち帰った円仁(794〜864)が聞いたであろう中国語の発音の再現をしてもらい、作曲しました。

 2021年1月18日、久々の屋内での演奏でした。屋内で演奏するって、こんなに楽なんだ、とTakeshiくんとしみじみ思ったものです。

 そのうちに、 Takeshiくんの方が、野外のパフォーマンスに熱心になり、いろんなところをロケーション・ハンティングしてくれるようになり、さらに吉松章くんも、必ず参加するようになりました。いろんなミュージシャン、パフォーマーも参加して「月影之川」をゲリラ・パフォーマンスするようになりました。

<つづく>

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?