大岡信のモダニズム批判

大岡信氏が若き日に書いた 現代詩試論。
 ぼくは、詩は詩人の肉声を伝えるべきものだと頑なに信じている。小ブルトン、小エリュアール、小アラゴンはたくさんだ。まして、小西脇、小北園、さらに,クレジットさえわからぬ模倣のごった煮に至っては,まさに,反吐だ。

大岡さんが22.3歳の頃のデビュー作とも言えるこの試論はおおいに話題になったという。この一節を,当時新人作家だった開口健が賛意を表明、大岡さんに手紙を送ったのだそう。
大岡さんが
 肉声に対して恥を感じるというくせは現代詩が持った悲しむべき病である。
とも書いた点に,完全同意を表明するためわざわざ見知らぬ若者に手紙を書いたのだ。開口健もまた詩から出発した作家である。嬉しい,ありがたい詩論である。
詩はその詩人の肉声でなければならない、モダニズムに批判的、という点がことに。
さて,今商業詩誌にとられている作品群に、その詩人の肉声が聞こえるだろうか。