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綺麗過ぎる経歴を持つ祖母とどーしようもない孫

私の祖母の経歴はあまりに綺麗過ぎて、愛情を注がれた分、愛情の注ぎ方も分かっていて、「落ち度の無い人生」を今も現在進行形で送っている。
そんな祖母の孫である私は、なかなかに酷い人生を送っていてあの祖母の良い部分で遺伝したところといえば色白なとこくらいだと思う。
私にとって色白であることは重要なポイントだ。

祖母は山を持つ父と母の間に産まれた為、裕福な家庭で育った。
末っ子なので甘やかされることもあり、上には兄貴達がいるので皆がそれを恐れて虐めてくるなんてこともなかったという。
誰かが悪口を言い始めれば、一緒になって言うのではなく、「あの人にもこういう良いところがあるから」とフォローするタイプ。
因みに、「悪口を言われても、『知らなかった』『初めて聞いた』で通しなさい。頷いただけで、一緒に悪口を言ってた』と言われるから」と教えてくれた。
そして、兄貴の友達である祖父が祖母のことを好きになり、周りを固めてゆく。
祖母はあの時代の人には珍しく、一瞬仕事をしていて無遅刻無欠席。
いつだったか、「人様に迷惑をかけるほど恥ずかしいことなんてある?」と凛々しい姿で言っていた。
朝起きたら、いつ救急車のお世話になってもいいように、と化粧をする。
祖母の息子にあたる父は、寝起きで髪の毛が爆発している祖母の姿なんて見たことがない。
祖母は、料理、裁縫、茶道、花道、日本舞踊を習う徹底した大和撫子っぷり。
祖父と結婚後は、専業主婦ガチ勢になる。
今でこそホームに入った祖母だが、それまでは80代でも基本的に朝晩は自炊、昼食ですら買ってきたパンと一緒に自分で皮剥きをした林檎を食べるので結局は包丁を使う。
毎朝6時半か7時には起床する。
生活リズムを崩さない。
長年一緒にいたら夫への不満もありそうなものだけど、そんなものは聞いたこともないどころか、「おばあちゃんはね、おじいちゃんに凄く大事にしてもらったの。自分の女房を綺麗にするのも男の仕事だ、って言ってデパートで服を買ってくれたりね」と惚気るその姿は少女特有の可愛らしさすら感じる。
祖父は祖父で、「俺はいい女を嫁に貰ったなぁ」という台詞を残してあの世へ旅立った。
どんな状況でも弱音を吐かず、祖父のお葬式でも涙目になることはあれど泣くことはなかった。
ご近所付き合いも良くて、ご近所さん側から何かしようかと提案してくるほどだ。
うちの父は仕事人間でお金には困っていなかったのだが、そんな父含む私達家族が祖父母に会いに行った日にはガソリン代として諭吉を渡し、身体がだんだん弱ってきてお使いなどを頼んだときには手間賃として矢張りお金を出す。
多分、これは祖母なりの「他人に迷惑をかけたから、お金は出すべき」みたいな価値観なんだと思う。

なのに、私と来たら。
男を見る目が無いので顔面をぶん殴ってくる男を捕まえたり、自炊? てか、家事? 何それ状態で気が向いたときしかしないし。
お金に困れば、「おばーちゃん、助けて」と言い諭吉を貰い、精神病になって生きているのが嫌になった上に満足に働けないので水商売をして、一度だけおばーちゃんからは「今日の日給を渡すから出勤しないで!」と言われ欠勤し(ほんとに日給分をくれた。ただ否定するだけでなく代替案を用意するところが、いかにも祖母って感じで素晴らしい)。
水商売を辞めた後は、「恋愛感情って金になるんだな」と自分に向けられた要らない恋愛感情はお金に変えた。クズである。

何でこんな人間になっちゃったのかなー、と思う。
最近は、賛否両論ある転売で小銭稼ぎをしている(買い占めはしないので見逃してほしい)。
私は多分自分にどこまでも甘いのだ。
祖母は対照的に自分には厳しくて。
祖母の魅力を色々書いたが、一番遺伝してほしかったのはあのメンタルの強さ、精神的な健康だ。
情緒不安定になることもなく、弱音も吐かない。
私より何十歳も歳上のおばーちゃんなのに、私より色んな意味で強くて毎日をしっかり生きている。

人生とはなかなかに上手くいかないものである。

#創作大賞2023 #エッセイ部門

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