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きらめく時間を終えてなお残るもの

 「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」を観た。


 小説としてよく知られた『若草物語』に、今回は『続・若草物語』の内容も含めて再構成されている。姉妹たちは各々思いを寄せる美、ひそめた信念を持っている。それでいて互いへの愛情も深い彼女らが、きらきら笑ったり身を寄せ合ったりしているのを見ているだけでも満足だった。この映画は、「若草」であった少女たちが、その時間に幕を下ろすまでを切り取っているのだ。何も疑うことなく、家族さえいれば幸福、と言い切れる時間の終わり。永遠のように思われて実は短いその時間を通り抜けて、なお手の中に握りしめるものの選択と変容。

 四姉妹はみな美しさを持っている。ジョーの持つ美、として原作でも描かれているのは彼女のたっぷりとした茶髪だ。映像としてそれを見られるのは本当に楽しかった。劇中、特にジョーと対比して描かれるエイミーは、フランスにいることもあって、金髪をきっちり結い上げている。それはそれはかわいらしいけれど、無造作に結んだだけのジョーにどうしたって惹かれてしまう。姉妹たちがおとなしやかに髪をまとめている中、彼女はあちらこちらのほつれ毛を、動くたびにふわふわと遊ばせていた。またほつれ毛を増やしながら、当時の女の子にしては大きすぎる動きで感情を見せる。いたずらな妖精みたいで、ローリーでなくとも恋せずにいられない。そんな彼女が、現実の呪いを振り払うようにして、持てる情熱をすべて傾けて、全身全霊で書いたお話。現し身を置く現実とは違った地表を羽ばたけるはずだったそれさえ、現実の常識とやらにねじ曲げられた。それでも守り通したお話の核が行き着く様を見守るジョーの、唇に浮かぶほのかな微笑が切なく美しい。


 ジョーの溌剌としたさわやかさが充ち満ちていた。彼女には、デニムの青がよく似合う。もちろん、実際に映画の中でデニムの服を着ているわけではないのだけれど、そんな色のブラウスがよく映えていた。ぱっと明るくて、タフで、どこかしら深みのある青。ジョーの色だ、と思った。

本や文房具、心をときめかせてくれるものに使います