見出し画像

『雪の女王』読んだ本 ご紹介!

ハンス・クリスチャン・アンデルセン著『雪の女王』
『人魚姫』、『マッチ売りの少女』などアンデルセンの童話は子供の頃読んでいましたが、『雪の女王』を読んだのは初めてです。童話というよりはファンタジーや冒険小説と言った方がいいような作品でした。
今回のレビューはネタバレしますので、ご注意下さい。

あらすじ
悪魔が作った鏡は、よいものや美しいものは小さく映り、悪いものや醜いものは実際よりも大きく映ります。その鏡が砕け、粉々になって降り注ぎました。その破片が少年カイの目に入り、心臓に刺さります。見えるものが歪み、心も冷たくなり、性格が一変してしまいます。そんなある日、カイは雪の女王に連れ去られ、仲の良かった少女ゲルダは、いなくなったカイを捜す旅に出ます。出会いと別れを経て、ゲルダはカイが囚われている雪の女王の宮殿へ辿り着く、というのがメインのストーリーです。

絵が素晴らしい
僕達が読んだのは大判の絵本です。ヤナ・セドワさんの絵は、青を基調にして氷のように冷たい物語世界を繊細に描き出しています。物語とともに絵も隅々まで鑑賞したくなるような美しさです。美術学校を出て最初に手掛けた作品というのがビックリです。絵を見ているだけでも引き込まれます。

山賊の娘
ゲルダの旅の途中では、いろんな動物や人達と出会いと別れがあります。ある者は旅の邪魔をして目的を忘れさせようとしますし、ある者はゲルダの思いに共感し、力を貸してくれます。中でも一番印象に残ったのが山賊の娘です。この出会いがゲルダの旅を終結に向かわせるのですが、個性が強烈でした。乱暴で一見自分のことしか考えていないようなのに、ゲルダの身の上を聞いて情にほだされ、協力してくれるという愛すべきキャラです。

180年前の作品
『雪の女王』初版が出版されたのは1844年ですが、今読んでもとても面白い話です。しかしファスト映画や物語の結末を知った上で読むような、合理的といいますか、効率を求めるような読書では面白さを感じられない部分もあるのではないかと思いました。それが、話が前後してしまいますが、ゲルダが旅で最初に出会った魔法使いのおばあさんや花達が語る物語のエピソードです。本筋には関係なく、伏線にもなっていません。なくても物語に影響のない部分を無駄と切り捨てるのか、独立したエピソードとして楽しめるか、そこで評価が変わってくるのではないかと思いました。

ラスト部分もそうです。いよいよここからネタバレします。読んでみようと思われる方はご注意下さい。

雪の女王の宮殿に乗り込んだゲルダですが、女王は不在です。カイを連れ去った時までは、理知的で文字通り氷のような冷たさ、冷酷といっていいような個性を持っていた女王、作品タイトルにまでなっている女王が、クライマックスシーンに出てこないのです。ゲルダと顔を合わせることもありません。対決シーンを想像して読んでいると肩透かしを食らいます。

ハッピーエンド(ここもネタバレ注意です)
読み終えて、りまのに最初に言ったのは、
「これ、ずるくない?」
女王との対決シーンがないことを言っているのではなく、僕はカイが最後にどうなるのか注目していました。再会してもカイの心は凍ったまま。反応がありません。その時ゲルダが流した涙が心の氷を融かして彼は元通り。ゲルダ、女性の涙か。う~む。
「王子様のキスと同じくらい、ずるくない?」
正直ここが、う~ん、微妙……僕はそう思ったんですけどね。

りまのです。『雪の女王』のラストシーン。私は最初なんの違和感もなく、良い物語だなと思ってましたが、はるとさんの指摘を読んだら、たしかに、ラストシーンで雪の女王が出てこないのは、どうなんだろうと思いました。

ゲルダの涙が、カイの心臓に突き刺さっていた鏡のかけらをとかしたシーンは、ずるいかな?でも、よく読むと、そのシーン、こう続きます。

カイはゲルダを見、ゲルダは二人がおさないころからなじんだ賛美歌を口ずさみました。

たとえ バラが しおれ 横たわろうとも
神さまの 気高い愛は けっして枯れない

今度はカイが泣き出しました。カイの涙は、別の鏡のかけら —— 目にはいりこんでいたもう一つ ——をも洗い流し、カイは、ゲルダといっしょだった、幸せな日々を思い出しました。

『雪の女王』ビーエル出版

。。。おさないころからなじんだ賛美歌が、ここで出てくるのですね。物語はていねいに作られていて、私は、このお話、ずるいとは思いませんでした (^^)

この話を読まれた方はどう思われたでしょうか? 気になるところです。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?