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『はじまりの日』読んだ本 ご紹介!


『はじまりの日』は1974年に発表されたボブ・ディランの「Forever  Young」に詩人アーサー・ビナードが日本語訳をつけた絵本です。原詩はディランが息子のために書いたものですが、訳は平易な言葉でありながらどの世代が読んでもメッセージが伝わってくるような、普遍的な内容に昇華させているように思いました。とても素晴らしい訳です。

きみが 手をのばせば
しあわせに とどきますように

きみのゆめが いつか
ほんとうに なりますように

『はじまりの日』岩崎書店

上の引用は『はじまりの日』の冒頭です。
語りかけの相手である ‘きみ’ への願いが全編通して綴られます。
自分の手で幸せを作ってほしい。人としてまっとうに、自分の足で歩いていってほしい、などなど。読んで感じたのは、自分の人生は、幸せは、自分自身で作るものなんだよというエールです。

人生は平坦な一本道ではありません。生きていれば足が止まることも、迷うこともあるはずです。でも……

毎日が きみの はじまりの日
きょうも あしたも
あたらしい きみの はじまりの日

『はじまりの日』岩崎書店

何度か繰り返されるこのフレーズが、苦しい時を乗り越えるためのメッセージなのだと思いました。何度でも始められる。昨日までのことはともかく、今日からまた始めればいいんだ。そんな風に感じました。
この部分に対応するディランの原詩は、

Forever young, forever young
May you stay forever young

‘Forever Young’  Bob Dylan

いつまでも若く いつまでも いつまでも今のままで
というようなニュアンスでしょうか。もちろんずっと若いままでいられませんからそういうことを言ってるのではなく、純粋だった頃のことを、夢を持っていた頃のことを忘れてはいけないということでしょうか?
この絵本ではディランの詩を意訳し、思いをより昇華させてます。一番好きなところです。

この絵本で ‘きみ’ に贈られた願いは大それたものではありません。でも大切にしたい心が詰まっています。これからを生きていく子供に贈るにふさわしい言葉ですが、それだけではもったいないです。明日に希望を感じたい、ちょっと背中を押してほしい、そういった思いにも応えてくれる絵本です。

また本編以外にも、ポール・ロジャースの絵で見るボブ・ディランストーリーも細かいところまで見ていくと楽しいです。


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