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『鎌倉殿の13人』の頼朝のキャラがブレすぎていて理解できない件

毎回驚かされてばかりの『鎌倉殿の13人』だが、
昨夜の壇ノ浦の回は斬新すぎて、声も出なかった。
まさかと思っていたら、そのまさかだった。

平知盛ぬきの壇ノ浦。

知盛ぬきの壇ノ浦なんて、
丸ビルのない丸の内、

みかんの乗ってない鏡もち、
いやむしろ、鏡もちに乗ってないみかんじゃないか。
あれはみかんじゃなく橙(だいだい)だというツッコミはこの際なしだ。

あきれるあまり、自分でも何を言っているのかわからない。

源平サーガ屈指の名場面、稀代の名台詞、
「見るべきほどのことは見つ」
なしの壇ノ浦なんて、"To be or not to be"なしのハムレットじゃないか。
上のよりはましな比喩が書けたが、落胆が軽減されるわけではない。

それでも、しかたない。
義経でさえ今回は脇役なのだ。
義経ファンとしては屋島の戦いが全カットで気を失いそうになったが、いちおう壇ノ浦では菅田将暉さんの八艘飛び(ワイヤーアクション含む)が正味3分くらい見られたから、よしとすべきなのだろう。CGの絶妙な微妙さぶりも、コロナ禍にあって密を避け予算を削るためのNHKさんの血のにじむような努力の結実なのだろう、きっと。

さればともに耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍ぼうではないか、という覚悟くらいこちらにもある。
私なんかちょろい視聴者だ。人間ドラマさえ面白ければCGがどんだけしょぼかろうと喜んで観る。
だが、面白くない。
というか、理解できない。
義経が脇役なら、このドラマの主役はいったい誰なのだ。

くりかえし書いてもうクレーマーになりかけていて悲しいのだが、
頼朝のキャラクターがブレすぎていてついていけない。
今回も、捕らわれて鎌倉へ送られてきた平宗盛と対面して、
「不思議なものだな。こうして父の敵を討つことができた今、宗盛の顔を見ても、なんの怒りも湧いてこなかった。
むしろ、あの男と清盛が重なり、
幼き頃に命を救ってもらったことを感謝していたぐらいじゃ

なんだそれは。
だったら初めから平家討つなよ。

ていうか直前のシーンで「平家が滅んだ」ってめっちゃ嬉し泣きしてたよね?
同じ人? 人格分裂してない?

もしかしてタイトル読み間違ってますか、私。
『鎌倉殿の13人』じゃなくて、
『鎌倉殿が13人』だった?
『24人のビリー・ミリガン』的な?

中村獅童さん演ずる梶原景時が渋い感じでつぶやいていた。
「鎌倉殿も、九郎殿も、おのれの信じた道を行くには手を選ばぬ。
そのようなお二人が並び立つはずはない」
うん、それはいいんだけど、だったらその「おのれの信じた道」って何なんだという話だ。
いまのところ頼朝も義経も口を開けば
「憎い平家を滅ぼす」
と言ってただけで他に何のビジョンも示していない。
その平家が滅びちゃったんだけど、頼朝これからどうするつもりなんだろう?

おのれの道を行くわりには、何のビジョンもない。
そんな男に滅私奉公している義時くんが痛ましい。
というか正直、イタい。
どうせまた「武士の世の中を作る」とか言いだすんだろうけど、
武士の世の中のどこがどう良いんですかという話だ。
そこが知りたいのに、いまだに何も出てこない。
よく歴史上の武将ランキングで
「こんな上司ならついていきたい」
なんていうのがあるけど、私はこのドラマの頼朝には百パーセントついていけないし、義時にもついていけない。それが悲しい。
まあ私がついていかんでも頼朝も義時も1ミリも困らんだろうとは思うが。

「腰越状」が義経の直筆じゃないとかそういう新説(?)を説明ゼリフにねじこんで新機軸を出した感を醸しているひまがあったら、
頼朝がどんな気もちでそれを読んだかという、人間ドラマのほうこそ刷新してほしかった。
いまのところ、義経をいじめる猜疑心の強いクズ野郎という従来の悪役(ヒール)的頼朝像から1ミクロンも出ていない。

今後コペルニクス的大転回があって、鎌倉幕府の壮大な野望がつぎつぎと明らかに!というサプライズが来るのかもしれないが、
それならいいかげん今までに明らかにしておいてほしかった。
知盛ぬきの壇ノ浦というサプライズというよりは超弩級がっかりをくわされたことを考えると、
今後のサプライズもその路線なんだろうなという気はする。
大姫ちゃんじゃなくても鬱になりそうだ。



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