オラファー・エリアソン展、またやってんの?(麻布台ヒルズ行ってきました)

オラファー・エリアソン展が麻布でやっていると聞いて、真っ先に思ったのがこれです。覚えている方も多いと思いますが、オラファー・エリアソン展は2020年に東京都現代美術館で開催されていて、約4年ぶり。今回は麻布台ヒルズギャラリーという初めて聞いたギャラリーでの開催ということですが、どうやら2023年にできためちゃくちゃ新しい施設らしい。そして手がけているのは森ビルです。

そしてオラファー・エリアソン展を前回やったのって森美術館だっけ?と勘違いするほど、オラファー・エリアソンはなんというか「森ビルが好きそう」な作品が多いです。

オラファー・エリアソンというアーティストを雑にタグ付けするならば、「SDGs」「光と影」「インタラクティブ」「偶然性」あたりでしょうか。環境破壊をテーマに、環境に配慮した素材を使って、自然の成り行きが生む一回きりの偶然性を作品にする。そしてなるべく鑑賞者に「鑑賞」で終わらせないような見せ方をする、そんなアーティストだと思ってます。

わかりやすい例を挙げるなら、モーダルシフトで作品を運んだときの揺れを作品にするだとか、カラフルな多面体の中にライト(この光もエコな作り方をしてる)を入れて壁に投影することで、見る度に作品が変化する(加えて鑑賞者も巻き込まれる)みたいなコンセプトの作品です。影も自然もその瞬間ごとに違う形をするという点で共通します。

ですから、オラファー・エリアソンは現代美術家の中ではかなりわかりやすいコンセプトを掲げるアーティストといえます。正確に言えばちょうどいいわかりやすさといいますか…私自身コンセプトはわかりやすければわかりやすいほど良いと思っているので、オラファー・エリアソンはかなり好きなアーティストです。なんかカッコいいステートメントだけど、そう思ってるの作者だけだろ…みたいな作品は基本的に好きじゃないです。

(特に現代)アートの効用に「あえてわかりにくいものを提示することですぐに答えが出ないことに耐性をつける」みたいなものがあるにせよ、訴える力はあってナンボでしょう。オラファー・エリアソンの作品は素材がどういう環境配慮をしているかという情報を食べても美味しいですが、作品自体のパワーもあって(作品のパワーと俗っぽさはある程度比例すると思ってます)、いい感じです。ちょうど森美術館で展示されそうな具合には。

というわけで今回の展示です。

《蛍の生物圏(マグマの流星)》(2023)
《瞬間の家》(2010)

前回見た現代美術館の展示だと、それぞれこの辺りの作品と類似点が見られます(以下の3つは今回の展覧会では見られないので注意!)。

《太陽の中心への探査》(2017)
《ときに川は橋となる》(2020)
《ビューティー》(1993)

上のライト入り多面体はおそらく同じシリーズの別バージョンといったところでしょうが、《瞬間の家》《ときに川は橋になる》《ビューティー》あたりもコンセプトに共通点を見出すことができます。「暗いところで水の一瞬一瞬の姿を切り取る」くらいにまとめることができるでしょうか。

今回展示されていた《瞬間の家》は、真っ暗闇のなか、水が噴き出ているところに等間隔でストロボの激しい光と「パシャ!」という音が響き渡り、まるで水の動き(や鑑賞者を含めたその空間)をカメラで切り取られるような、幻想的だけども居心地の悪い、そんなインスタレーションでした。

さらに古い《ビューティー》は暗闇に虹を発生させる作品ですし、《ときに川は橋になる》は水の動きを作品にしたものですが、一瞬を収奪する《瞬間の家》とは違って、循環を感じさせるスクリーン投影が特徴でした。細かいところは違いますが、美術館で暗いところに入る水を使ったインスタレーションという点では共通しており、どれも心に残るインパクトを持った作品です。

ただし今回の展示は規模の割には料金が高く(一般1800円)、やや満足感に欠けるのは否めません。自分みたいにオラファー・エリアソン好きなら楽しめるでしょうが、そうじゃない人はどうなんだろうと思いました。

また、展示が駅前ナイズされている印象も抱きました。現代美術館のときはもっとオラファー・エリアソンが行っている環境問題に対する取り組みにフィーチャーされていた記憶がありますが、今回は「光と影でキレイ」「なんかSDGsぽくてオシャレ」、つまりチームラボ化されている印象が強く感じてしまいました。

というのも、麻布台ヒルズには自作の魚を描いて作品にできる(Twitterで見た)ことで有名なチームラボが入っているので、やっぱ同列扱いか〜という気持ちに。まあバイアス入ってますがね。とはいえ自分はむしろチームラボは好きな方(割と行ってる)なので、ディスりたいわけではないですけど、もう少し差別化が欲しかったというのが正直なところ。

美術館のオシャレスポット化(アートミュージアム化)はむしろ喜ばしい、と断じるほどラディカルな立場ではないですが、ウェルカムだとは思ってます。オラファー・エリアソンの作品は硬派とオシャレアートの両方の側面を併せ持つ♡ので、今回の駅前オラファー・エリアソン展は、アートの駅前化を象徴する(象徴するって言葉あまり好きじゃないですが)展覧会とも言えるでしょう。

それはオラファー・エリアソンの作品が麻布台ヒルズタワーの中にオブジェクトとして常設されてることからも言えます。

最終展示は展覧会の外で

わざわざ新たなランドマークに選ばれたのはすごいことですし、オラファー・エリアソンが(日本において)なんだか時代に選ばれたことがわかるような展覧会でした。今後その名前を覚えておいて損はないでしょう。

月末まで開催しているので、行くならお早めに。

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