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スガシカオ「AFFAIR」から20年後の事柄

入稿日、8月2日はスガシカオの10枚目シングル「AFFAIR」発売から丸20年の節目にあたります。無論、記念日特集に取り上げないはずはありません。いつもの如く、主観全開で紐解いてまいります。テレビ朝日系ドラマ「愛人の掟・あなたに逢いたくて」主題歌。ファンの間で屈指の人気を誇るカップリング曲「ぬれた靴」収録。

メジャーデビュー以前から原型が存在していたことでも有名な楽曲。2007年リリースの『ALL LIVE BEST』購入特典として抽選配布された別歌詞のデモ音源は、某動画サイトでも視聴可能です。『Clover』リリース時、宅録全盛の気配を感じさせるサウンド。本編ではよりバンドサウンドに重心を置きながらも、当時の空気感がほのかに残っています。

アクの強さ、エグみ、歪んだ恋愛感情。あるいは泥くささ、青さ、カサつき。共感と心地良い違和感とが入り混じっている。鬼才・村上春樹の目に留まらないはずはありません。挙げ始めればいよいよキリがありませんがしかし、「黄金の月」のヒットによって氏の二面性ある世界観はますます増幅され味わい深く響いてくることとなりました。

前作とのギャップに驚かされた部分も大きかった。9thシングル「SPIRIT」はそれまでの氏のパブリックイメージを振り払うかのように、圧倒的なまでのメジャー進行の応酬。一点の曇りもない多幸感、しかしやはりこのあたりにも二面性が滲み出てしまう。何か裏テーマを感じさせる、影の長いアンビバレントな音楽。当時、主宰はまだ小学4年生でした。

ここで改めて、デモ音源と本編の歌詞とを見比べてみることにします。

「そんなことが度々起きて/悲しい出来事が静かにやってきました(デモ)」までの一節は両作に共通している世界線。注目すべきは次の一節です。すなわち「ぼんやりと最後の言葉だけが/繰り返すこともあるけれど/僕の周りでは毎日が/ゆらゆらと流れてる」と続くデモ音源に対し、本編ではやや異なる世界線を見せ始めます。

「気づかないうちにぼくの両手は/真夏のヒマワリをひきちぎってしまった/最後にひとつだけ/"もし君に酷い言葉残せるなら"」。「最後の言葉」の輪郭がよりはっきりと鮮明に映る。つまり明確なまでに、空虚感が喪失感/離別体験へと変わっている様子がわかります。これを微細な変化と一言で括るのはあまりにも。あまりにもでは、とメタ推理全開の主宰は思うのです。

デビューシングルリリースは1997年、3年後に当シングルがリリースされたという時間軸。デモ音源として残されていることから、実質3年以上の熟成期間を経て完成したと言える。純粋無垢を彷彿とさせる向日葵と、対照的な世界線。自他共に認める「難産」の時期にリリースされたという点からも、何か氏の大きな転換点になっている作品と呼んで差し支えないはずです。


2020年8月2日

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