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夜明けの鏡7(オリジナル小説)

私は尚輝と病院の帰り、あの虹色に光る玉がとても気になった。
私の病気が治ったことは、とても嬉しい。
でも、こんなことってあるのだろうか?
あんなに頑張っても、治らなかった病気
医師の先生には間接的に治らないから寛解を目指しましょう。と言われた。
私は嬉しさと同時に何か表現できない恐ろしさを感じた。

「ねえ、尚輝、変だと思わない。あんなに治らなかった病気がこんなに簡単に治るなんて。」

私の言葉に尚輝は子供をあやすような顔をして
私に言った。

「かの子、病気が治ったんだよ!何を心配するの?かの子が元気になったことが一番だよ。」

私はそれでも不安が拭えない。尚輝の笑顔は嬉しいけど、私は自分の思いを訴えるように尚輝に言った。

「やっぱり変だよ!この玉!あの病気が治るなんて、やっぱり変だよ!」

私が激しくそういうと尚輝は、しようがなさそうな顔をして、玉をじっと見つめた。

「……かの子、この玉、なんか生きてるみたいで不気味だね……この玉はハイキングコースで緑色の人に与えられたって言ったね。今からハイキングコースに行こう。何かわかるかもしれない。」

尚輝はそういうと私の手を取り、山のほうに向かって歩き出した。
私は尚輝の手にひきずられるように一緒に山に向かった。

山はここからは近い、私達は一刻も早く山に行くためにタクシーをつかまえて山に向かった。
やがて、山が視界に大きく映る。
山道も見えてきた。

タクシーが山道の入口に着いた。私達はタクシーから降りて山道を登っていった。

「かの子、玉が与えられた場所に着いたら言って。」

尚輝の言葉に私は、うなずいた。
やがてあの緑色の人と出会った場所に近づいてきた。

「このもう少し上。」

私がそういうと尚輝の足は早まった。私はついていくのが精一杯だったが、すぐにあの場所についた。

「ここよ。ここで緑色の人に出会い、虹色に光る玉を与えられたの。」

私がそういうと尚輝は辺りを詳しく調べ始めた。私は近くの大きな石の上に腰掛けて、尚輝の様子を見ていた。

「これと言って変わった様子は無いね。かの子試しに、ここであの玉を出してみて。」

私は尚輝に言われるままに、玉を出してみた、何の変化も無い……。

「かの子、次は何か念じてみて。そうだな、あの木が折れるように念じてみて。」

私は尚輝の言うとおり、玉に木が折れるように念じた。すると、木はバキバキ!と大きな音を立てて根元から折れた!

尚輝はびっくりした顔で私を見つめていたけど、うんと私に合図して

「かの子、その玉はあの緑色の人の言う通りかもしれない。どんな力かはわからないけど、かの子はその玉で人々を幸せにすればいいんだよ!」

そういうと尚輝は、さあ帰ろうと私の手を繋いだ。私達が踵を返し帰ろうした時、私はこのまま家に帰るように玉に念じた。
もう一度その力を確かめたかったから。

すると、一瞬のうちに私達は家のリビングにいた。尚輝はびっくりした顔をして、私の両肩を握って。

「かの子!これはすごいよ!本当にかの子はたくさんの人々を助ける為に選ばれたんだよ!
かの子!世の中には科学ではわからないこともいっぱいある!大切なことは、かの子がこれから何をするかだよ!」

尚輝は少年のような笑顔で何かわくわくして少し興奮しながらそう言った。私はその笑顔を見ていたらすごく嬉しくなった。

「尚輝、私、今まで本当につらかった分……。」

そこまで言って涙があふれてきた。

「私、私ね。自分が苦しかった分、たくさんの人々が幸せになるように、この力を使うわ!」

私がそういうと尚輝は黙って私を抱きしめた。私の顔は涙でぐしゃぐしゃだった。尚輝は私の涙を拭おうとせず、ただ、うんうんと、うなずいていた。
私は尚輝の胸に顔をうずめ泣きながら、この玉でみんなを幸せにするんだ!と心に誓った。


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