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夜明けの鏡13(オリジナル小説)

真希と静佳の家に尚輝と車で急ぎ着くと二人とも無事だった。どこにも怪我も無い。
ただ、私が急に一瞬のうちに二人を家に送ったため、腰を抜かしていた。

私達が着くと二人は安心した顔をして、尚輝の車に乗った。

「かの子、あの連中また来るよ……。どこに逃げるの?」

静佳が不安そうな顔で私に言う。確かに逃げる場所なんてない。私は尚輝の顔をのぞき込んだ。尚輝は運転しながら私に少しひきつった笑顔を見せた。

「施設長の家に行きましょう。施設長なら私達の話しを聞いてくれるわ。」

私はみんなを励ますようにそう言った。

「そうね、とりあえず施設長に相談したらいいと私も思う。」

真希が前を向いたまま、かたまったような表情で言う。

「よし、施設長さんの家に行こう。」

尚輝がそういうと車は施設長の家に向かった。やがて施設長の家に着いた。施設長も夜分ということもあり、私達が訪ねてきたことに驚いている。
とりあえず施設長の家にあがらせていただき
私達はこれまでの経緯を話した。

「うーん、なるほど、かの子さんの不思議な力に謎の組織が接近してきた訳ですね。」

施設長は難しい顔をして、そうこたえた。
施設長はしばらく天井をみつめ考え込んでいたが、顔を下げると私達に言った。

「私の知り合いに久米さんという方がいてね。とても頼りになる方でね。仕事は小さな会社を経営しているが武道の達人なんだよ。私から頼んでおくから、しばらく久米さんのお宅でお世話になるといい。」

施設長はそういうとスマホを取り出して久米さんに連絡をした。

「もしもし、夜分遅くに大変申し訳ございません。私、佐川です。久米さん実は……」

施設長が久米さんとお話をしている間、私はこれからどうすればいいのか考えていた。
必ずまた、あの人達は来る。尚輝や真希や静佳を巻き添いにはできない。
そう思っていると施設長がスマホを切り、私に真剣なまなざしで言った。

「久米さんと話はつきました。今から久米さんが迎えにきます。その車で久米さんのお宅で身を隠していて下さい。仕事のことは大丈夫。私がなんとかしますから。」

施設長はそういうとすごくやさしい笑顔で私達を見つめた。
それから30分経った頃だろうか。久米さんの車が施設長の家に着いた。

久米さんはとても屈強な身体でやさしい顔つきの方だった。

「はじめまして、久米です。みなさん大変な目に遭いましたね。でも大丈夫。さあ、車へどうぞ。」

私達は久米さんの車に向かう。その時、突然3人の男達が物陰から現れた。
久米さんの車から2人の男の人が現れて、その3人を一瞬のうちに倒し押さえつける。

「お前らは何者だ!」

久米さんの車から現れた人がそう叫んだ。
取り押さえられている男は苦しそうな声で言う。

「小田先生のところのもんです……俺たちはかの子さんに用があるだけだ。殺しはしませんよ。小田先生の命令なんでね。」

男はそういうと久米さんに強烈な当て身を喰らわされ気絶した。

「奴らはかの子さんの知り合いをみんな見張っているようだ。さあ、私はかの子さんとは今日が初対面。奴らが追ってくることはありません。安心して下さい。ああ、こいつらは私の弟子です。今回みなさんのボディガードをします。」

そう久米さんがいうと弟子の方々は静かに挨拶した。

「こいつらには聞くことがある。」

そういうと久米さんはトランクから縄を取り出して3人の男を縛りつけてトランクに放り込んだ。
私達はそのまま久米さんの車に乗った。

「あとのことは心配しないで。何かあれば連続しますからね。」

施設長のその言葉に私は静かにうなずいた。車は静かに久米さんの家に向かって走り出した。
時折り闇の中をよぎる灯りが何故か不気味だ。
私は本当にどうすればいいか?久米さんの車がより加速する中、私の不安も加速していた。

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