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2022.5.22 姉妹都市 宮島とモン・サン=ミシェルの共通点

フランスのモン・サン=ミッシェルをご存知でしょうか。

四方を海で囲まれ、街全体が要塞のように岩山の上にあるフランスの街です。

世界遺産にも登録されており、その幻想的な美しさから、日本人にも人気の観光地となっています。

島の頂上には、巨大な修道院が築かれ、いかにも“ヨーロッパらしい”街並みですが、広島県の宮島『厳島神社』と意外にもたくさんの共通点があります。

今回は、どのような共通点があるかを書き綴っていこうと思います。


モン・サン=ミシェルといえば、海の上に浮かんだように見える姿で知られるフランスの修道院建築物です。

フランス西海岸のサン・マロ湾にある小島の上に建てられていて、高さは80mもあります。

この島自体は小さな花崗岩の円錐形の岩山で、その上にトゲ刺すように塔が建っている姿が特徴的です。

海に囲まれた海と建築物との見事な調和は、日本人にも非常に人気があります。

この小島にモン・サン=ミシェルが建築されたのは、708年のことでした。

アヴランシュの司教オベールの夢に大天使ミカエルが現れ、岩山の上に聖堂を建てるようにというお告げを受け、それに従って礼拝堂を建てたのが発端になったと言われています。

以来、この島は聖地となって巡礼者が訪れるようになりました。

一方、厳島神社も海の中に建ち、海と調和しているという意味で、モン・サン=ミシェルと同じ趣があります。

建築物が海の中にあるという例は、世界でも数少ないと言って良いでしょう。

この厳島神社は、瀬戸内海の広島湾に浮かぶ宮島にあります。

周囲31kmの小島ですが、標高530mの弥山という山があり、島全体が信仰の対象になってきました。

こうした山の麓にある神社ですから、やはり聖なる場所として崇められてきました。

厳島神社は最初、推古天皇元年である593年に創建されたといわれています。

現在の姿に整えられたのは1168(仁安3)年、平清盛の時代です。

平安時代の寝殿造の建築様式を巧みに取り入れた華麗な社殿に特徴があります。

まるで海を敷地としているような海と調和した厳島神社の姿は、モン・サン=ミシェルとよく似ています。

厳島神社は満潮のときは島となり、干潮のときは地続きとなるような場所に建てられています。

潮が引くと鳥居の傍まで歩いていくことができます。

このように、潮の干満によって姿が変わるという点はモン・サン=ミシェルも同様で、干潮時には島までの道が出現します。

厳島神社は干潮のとき以外は海水に床柱が浸っているため、台風や高波と満潮が重なると、海水が廊下の上にまで達することもあります。

海の状態によっては危険な状態にもなり得るというのは、モン・サン=ミシェルも同じでしょう。

これも両者の類似性として挙げても良いように思います。

厳島神社の沖合200mの海上に建つ朱塗りの大鳥居は、高さ16mあります。

四本の控え柱を持つ両部鳥居の形式をとっています。

楠の自然木が使われていて、モン・サン=ミッシェルの石造りの城と比べると華奢に見えますが、木というものが本来の建築の素であることを考えると、それを維持している厳島神社の美しさに心が惹かれます。

私は両方を訪ねたことがありますが、海と調和するその姿を見ると、これらの建物が自然との調和を図っているように感じます。

むろんモン・サン=ミッシェルは石造りで、そこには自然を支配しようとするヨーロッパの伝統的な感覚がありますが、島の城壁の外には木が繁っていて、決して単なる人工の島ではありません。

海と樹木、そして建物が遠い地平線の先で孤立するかのように建っている姿は、現代の目から見ると、自然の中に生きた建築となっていることに注目したいと思います。

ゴシック建築というのは、元々樹木を真似しています。

尖塔にしても柱廊にしても、木が空に向かって伸びる様をイメージしています。

それを考えると、石の建築でさえも、元は木であるという見方ができます。

そういう意味でも、厳島神社の木の建築と重ね合わせて考えることができるのです。

さらにいえば、モン・サン=ミッシェルは都であるパリから離れた場所に位置しています。

厳島神社も、奈良あるいは平家の都であった福原(現在の神戸市)から離れたところにあります。

この“都からの隔絶性”も類似点の一つとして挙げても良いでしょう。

そういった様々な類似点を考えると、日本人にとって厳島神社は、海と調和した建築として見るべき価値があるのではないかと思います。

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