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2023.7.20 スーパーから“中国製品”が消える日

先日、こんなニュースを目にしました。

<中国、15年ぶりに首位陥落!>

一体なんのことだ?
と思えば、今までアメリカのモノの輸入に占める割合でトップを独走していた中国が、メキシコ、カナダに抜かれ15年ぶりに首位から陥落。

つまり、アメリカが中国以外の国と関係を強化して本格的に『脱中国化』を
始めたということです。

じわじわと現れ始めた『脱中国』の影響…。

今回は、“アメリカにおける脱中国の実態”について少し書いていこうと思います。


数字で見るアメリカの脱中国

我々は普段、経済を見る際にはマクロ経済とミクロ経済の両方を見ます。

マクロ経済は統計、ミクロ経済は各々の消費者の行動です。

一般的には、この両方を見た方が正しく経済を判断できると言われています。

しかし、中国の場合は、マクロ経済、つまり統計による判断は大体間違っています。

なぜなら、中国では数字の捏造が横行していて、信用できるデータが少ないからです。

但し一つだけ、比較的参考になるデータがあります。

それは貿易に関するデータです。

理由は簡単です。
貿易というのは相手がいます。

例えば中国が、アメリカにたくさん輸出しているとして、中国がそのデータを改竄すれば、
「いやいや、中国からはそんなに輸入していない」
と、アメリカ側のデータとの間で食い違いが起きてしまいます。

ですから、貿易のデータは比較的捏造しにくいのです。

では、今回は中国の海関総署(税関)が発表した輸出入の国別データを見ていきます。

驚くべきことに、中国の対米輸出総額は前年比で18.2%もダウンしています。

・日本は13.3%減
・EUは7%減
・ASEANは15.9%減

一方、対ロシアは114.3%増加しています。

理由は非常に分かりやすく、ロシアが経済制裁されていて、みんなロシアと商売しなくなったからです。

その分、中国がロシアへ輸出するようになっている。

たったそれだけです。

更に、アメリカにおける中国製品の割合を見てみると、武漢コロナが流行する前は平均20%だったのに対し、2023年5月には13.3%にまで減少しています。
もはや全体の1割に近いような状態です。

つまり、アメリカでは中国製品が、もうかなり少なくなってきたということです。

中国製品なしの生活はできない?

今から16年前、2007年にヒットした一冊の本があります。

『A year without made in China』

1年間、中国製品のない生活をしてみるという内容で、日本語訳にもなっています。

著者はSara Bongiorniというジャーナリストで、家庭の主婦であり母親でもあります。

彼女はある日、自分の家にあるものは見る限り全部中国製じゃないかと気づきます。

クリスマスに飾るオーナメントや運動靴、家電製品まで何から何まで中国製だと…。

そしてSaraは、中国製品のない生活はできないのだろうかと考え、1年間だけ実験をすることにしました。

旦那さんを説得して、家族が使う全ての製品から中国製のものを排除して、中国製品無しの生活をしたのです。

結果は“極めて難しい”。

中国製品ではないものを探しても、まず見つかりません。

運よく見つかったとしても、ものすごく価格が高い…。

彼女は、遂に完全に中国製品のない生活はできなかったのです。

彼女のこの経験は2004年、つまり今から20年ほど前の話です。

しかし今、同じことをしてみたらどうでしょう?

アメリカにおける中国製品の割合は、たったの13.3%になりました。

今なら中国製品無しの生活が普通にできるのではないでしょうか。

中国製に代わるものも、アメリカのマーケットに溢れています。

中国無しでも、アメリカの主婦が生きていけるような状態になったのです。

新たに生まれた2つの経済圏

中国の税関が発表したデータからは、2つの事実が分かります。

1つは、“アメリカを中心とする民主国家の脱中国が加速している”ということです。

中国からモノを買わなくなったということは、中国へのサプライチェーンの依存が非常に少なくなったということです。

これは脱中国に向かう一つの流れになります。

そしてもう一つの事実は、”2つの経済圏が形成されつつある”ということです。

・アメリカを中心とする民主国家の経済圏
・中国を中心とする独裁国家の経済圏

対ロシアの輸出は114.3%も増えています。
ある意味で中国とロシアとの相互依存が深まっている最中です。

ロシアは他の国々が物を売ってくれないので、中国から買わないといけません。
そして中国は、他の国々の減少した輸出分をロシアに輸出するということになるわけです。

自ずと中国とロシア、もしくはイラン、北朝鮮、シリアなどの独裁国家は
1つの経済圏になるわけです。

中国は彼らとお互いに相互依存が深まっていくわけですから、彼らに物をたくさん売るようになって、別のところへは売れなくなっていきます。

だから民主国家は、意図的に中国からサプライチェーンを他のところに分散するようになります。

民主国家側を見てみると、2008年からアメリカとカナダとメキシコの三国は、USMCAという自由経済圏を提携しました。

基本的にはこの3ヶ国の内部で部品を使えば、アメリカへの輸入はゼロ関税です。

当然、あらゆる国は工場をメキシコに建てるようになります。

つまり中国でなければいけない理由がなくなり、自然と2つの経済圏が形成されるのです。

これがアメリカの脱中国の実態です。

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