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#19 ヨーロッパ研修記 〜ナチュラルワインとワイルドエールの交差点(中編:ドイツ・フランスの記録)〜

前書き

 ビールなのか、ワインなのか、はたまたシードルなのか、分からなくなる時がある。

 そんなことを言ったら馬鹿にされそうで、なかなか言えなかった。
 ただ、例えばワイルドエールやランビック。ほとんど発泡のないスティル、柔らかい酸味とバレルの香り、タンニンのような複雑な渋みを感じるビールを飲んだ時の、僕の本音だ。

 その正体が知りたくて、今回 "Wild" をキーワードに世界中のビール、ワイン、シードルの作り手が集まるWild Festival Groningenをはじめ、幾つものつくり手を訪れた。

 そしてその後、それぞれのお酒を学ぶべく、ベルギー、ドイツ、フランス、そして、イタリアと地続きのヨーロッパを南下しながら、思うこと。

 これはヨーロッパの移動中、その土地その土地で、感じたことを日記のような形で羅列しています。各チャプターは現在進行形で変化する思考の変遷を記録したような内容です。突然飛んだり、また結論のないまま終わったりもします。つまり、取り留めもない話ということです。挙句の果てには思いの外、長文になってしまったため、下記の構成で整理します。

  1. オランダ・ベルギー滞在時の記録(2023年10月17日-11月2日 滞在)

  2. ドイツ・フランス滞在時の記録(2023年11月3日-11月7日 滞在)※今回

  3. イタリア滞在時の記録(2023年11月8日-11月23日 滞在)

 前書きが長くなりましたが、総論としての僕自身の理解や解釈はありますが、あくまでも思考の変遷の記録であるため、各チャプターには、参考になりそうなブログや写真の追加、てにをはレベルの変更はあれど、内容に影響するような部分には手は加えずに、当時のメモをベースに公開しています。

ドイツ・フランス滞在時の記録(2023年11月3日-11月7日)

 ドイツを訪れるつもりはなかったが、小難しいことは考えずにただ美味いヘレスをごくごくと飲みたい。それだけが理由でミュンヘンに来た。
 あれこれのクロスオーバーなんてことは一回忘れよう。

 ミュンヘンといえばヘレス一択。いやデュンケルだって美味いけど、やっぱりヘレスだ。小さなグラスじゃなくて、どーんと大きなジョッキ、あるいはスッと長いタンブラーでビールを飲みたい。この街はビールで出来ている。6大ブルワリー以外にもいくつかビアホールがあって、どこだって大体朝からやってる。そして人も入っている。見るかぎり観光客もいるけどローカルもいる。この人たちは一体何をしているのだろう。

 しかし、ヘレス。なんでこんなに美味しいのか?いくらでも飲めると言うのは大袈裟でもなく、本当にスルスルと飲める。

 色々考えてみたけど、辿り着いた理由はとてもシンプルで、良いホップと良い麦がつくれるから。その土地で生まれるフレッシュで、良質な素材があるから美味しい。日本酒だってそう。良い米と良い水。

 お酒が先ではなく、作物や果物が先にあるということ。お酒は農業の結果であり、最終的な成果物。そんな単純なことに気づく。その土地で採れたものを、新鮮なうちに、その土地で食す。それが一番美味しいということ。
 だからこの国はビールだけではなく、パンだって美味しい。

 ステイしていたAir BnBの真裏にクラフトビールのボトルショップがあって、ふらふらと立ち入ってみる。ミュンヘンというドイツ屈指の大都市にも関わらず、ビールの多様性に関していえば思った以上に狭い。また試しにUntappedでクラフトビールのバーを探してみるが、他の都市と比べても極端に少ない。

ドイツのクラフトブルワリーのヘレス。めちゃくちゃ美味しかった。

 そうそう、この土地にはヘレスがあれば十分なんだ。

ミュンヘンの街に捨てられている空き瓶は大体アウグスティナー

 フランスはアルザス地方、ストラスブールへ。

 今回だけは唯一研修が目的ではない。大学時代の旧友に会うことが目的だ。と言ってもヨーロッパに来てから、何ならミュンヘンまで来たなら寄って行けば?というような感じ。いや、そんな言うほど近くないけど。

 この街はフランスとドイツの国境沿いの街。当然、ベルギーで訪れた各都市ともミュンヘンとも全てが違う。気候は肌寒い。街は小さく、穏やか。都会の流れとは無縁で、学生が多いからか?どことなく知的な雰囲気を感じる。

 街をふらふらと歩く。少し歩けばワインのボトルショップが見つかる。入ってみてもビールはない。これもやはりこの土地の作物が理由なのか。(正確にいうと入ったボトルショップにカンティヨンは置いてあった。ちなみに他都市のワインを中心としたボトルショップでもカンティヨンを目にする。なぜカンティヨンを置いているのか?その理由を聞かなかったことは数少ない後悔のひとつ。)

 なにせアルザスはリースリングやピノグリ、ゲヴュルツトラミネール、ミュスカなど白ワインの葡萄の名産地。街のボトルショップに入れば、€20前後で多くのワインが並ぶ。この価格帯で驚くほど美味しいワインが手に入る。
 逆に高いワインを探す方が難しい。一部を除けば高くたって€30程度だ。アルザスのワインは日本でもブランド化しているゆえ、飲んだことのあるワインもちらほらと。日本人の自分からするとこんなに安く買えるのかと思うけど、あくまでも地元の酒なんだろう。

 地元の病院の地下にあるワインカーヴに連れて行ってもらった。
 事前情報が何もなかったので一体どんな場所なんだろうと思っていたけど、これはすごい。とんでもない数のワイン樽が延々と並ぶ。

 こういう土地に来ると、先日まで訪れていたオランダやベルギーで感じたワインとビールのクロスオーバーなんてあり得ない。
 ワイン一択。いや、アルザス産のワイン一択。ミュンヘンだってワインとビールのクロスオーバーなんてしない、ビール一択。いや、ヘレス一択。

 友よ、調子に乗って二泊もしてごめん。おかげで旅の途中でゆっくり休み、力を蓄えることが出来ました。

ストラスブールからパリへ。そこからミラノ行きのフライトに乗り換える。

次回、イタリア編へつづく。

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青山 弘幸
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