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人生ベスト3の漫画

好きな漫画を挙げろと言われると多すぎて答えられないけれど、漫画の歴史の中でも特筆すべきものはいくつか挙げられる。

もう十分すぎるほどオッサンになってしまった私の中で不動のベスト1だったマンガがある。それは映画のベスト1としての「バック・トゥ・ザ・フューチャー」くらいの正真正銘のベスト1だった。

アドルフに告ぐ

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近現代史に大きく関わる一つの謎から紡ぎ出される数々の伏線をストーリーの怒涛のうねりのなかで回収していく壮大なミステリー
時代に翻弄される様々なキャラクターの出会いと別れ
戦争、人種問題、人間という存在について
それをすべて丸め込んだ手塚治虫の才能を最も昇華させたような作品。

私の中では初めて読んだその日から30年ちかく不動の1位だった。

漫画版 風の谷のナウシカ

生命や自然や文明というものを取り扱った漫画として、火の鳥も素晴らしいのだけれど、~~編ごとにわかれていてそれなりにバラツキがあるし、回答の無いテーマだけに、叙事詩というか神話のようなものになっていて、完全にどこかに着地したとは言えない弱さがある。

ナウシカは映画版は岡田斗司夫も言ってたとおりご都合主義の終わり方をしていて、ちょっといまいちだったけれど漫画のナウシカは全然違う。

そもそも火の七日間が本当はどういったものなのかも映画ではわからない。そこには「そうなってしまう理由があって」、それが「結局人間ってこうなんだよ」という諦めに近い視点、達観した思想を含んでいるのが素晴らしい。

やっぱりどれだけ複雑なストーリーであるかどうかも大事だけれど、そういったエンターテイメントなストーリーのラストで、テーマをもういちど人間の本質に戻して着地してくれるものが好きです。

これがベスト1でない理由は「漫画」というくくりに入れて評価した場合に、どうしても漫画風にコマ割りした絵コンテのように見えてしまうところです。(ただ、それもそれでおそろしく素晴らしいのだけれど)

進撃の巨人

ついに私の中の人生ベスト1マンガが更新されそうです。それが進撃の巨人です。こんなスケールで、すべての伏線がからまって織りなすドラマを見た事がない。

群像劇のようにも見えるし、大河ドラマのようにも見える。人間の本質が描かれて、キャラクターはまるで生きているかのように行動する。

巨人とは何なのか?

とてつもなくシンプルな謎を追いかけていたら、そこにいたのは人間だった。

どうすれば良かったのか?何が足りなかったのか?なぜ、人は争うのか?なぜ、人は生きるのか?そして、、、、、

自由とは何か?

今まで見てきたすべての作品を大きく超えるスケールで、この世界がすでに作者の頭の中に完全に出来上がっているのがすごい。先を決めずに書いたらこうはならない。
寄生獣の物足りないところはこの辺で、始まった時点で終わりが決まっていないから伏線回収と着地が弱い。それを全ての面で凌駕している。

もうすぐ完結してしまいます。コミックスも予定ではあと1巻。どんな決着がつくのか予想できませんが、おそらく人生ベスト1マンガを更新する事になると思っています。

また、この話で申し訳ないのだけれど、映画えんとつ町のプペルで「町を一応守ってくれているはずの雲」を、主人公のエゴで吹き飛ばして外の世界を見せてしまいます。進撃の巨人に出てくる壁も世界中から悪魔の末裔と呼ばれる住人を一応まもってくれていたものでした。地ならしとともにその壁は完全に無くなってしまいましたが、エレンの行動には意味も理由も動機も迷いも全て含まれていて、それでもなお地ならしを発動させなければならない状況で、この選択はストーリーとして成立しています。
しかし、ルビッチは「自分が見たい、町の人にも見せたい」を、雲が何のためにあるのかを知らずに、自分のエゴを通します。ここががっかりポイントなんです。西野さんは「人に迷惑をかけてしまうような挑戦」はダメだと言っているにもかかわらず、ルビッチの行動は無邪気なエゴによって外の世界を見せてしまう。これは本当に良いのだろうか?
ここに誰も言及しないで「さすが!」「私も挑戦します!」「感動しました!」と言っている人が多いのが非常に残念なんだよな、、、、(いや、面白かったんですよ、でもね、、、)

次点

トップ3はどのような方向からの評価をしても超傑作です。語りつくされているのはわかっています。それとは違って個人的に響いた作品はこちら。

キラキラ!

あらすじ
高校2年生の主人公杉田慎平は、アルバイト先での下心のある行動から、天使のように美しい戸田恵美里(エミリ)と出会う。思春期の一時の気の迷いから、父親への相談もなしに青晶学園の芸能科に転校する。
いい加減に見える芸能科の同級生に翻弄されながらも、特殊な才能を発揮し、芸能科の窮地を救う一面を見せる。芸能科の同級生はアイドルの卵であり、すでに芸能活動を行っている者もいる中で、エミリは芸能界にデビューした。エミリは一気にスターダムに上り詰めながらも、外見と内面、作られたアイドル像、学校側の思惑、家庭環境に悩み、周りを巻き込みながら物語は進む。
from wikipedia

もう30年も前の作品です。青春もの、学園ものに必須の青さ!でも一歩間違うと闇。このバランスが不思議な作品。前作のホワイトアルバムもめっちゃ青い!

この作者の一番の代表作はお天気お姉さんになってしまうのかもしれないですが、他の作品でも特別な輝きを放っていると思います。
そのベースとなるのは思春期における性と自我のはざまにある心の中の光と闇。それがちゃんと描けた人だったと思います。

ストリッパー

山田玲司先生がBバージンのあとに描いた問題作。

Bバージンに夢中だった高校生のころ、探し回って見つけた「17番街の情景」。擬人化されたキャラクターが悩みもがいて生きている。

そして「インディゴ・ブルース」。エッジの効いた表現で、青白く光る痛々しい青春が見える作品。

私は漫画が単なる娯楽だと思ってたし、それでもかまわないと思うのですが、この人の作品に出会ってわかったのは

芸術や表現とは、いわば「戦い」なんだ

ということ。己の魂を紙のなかに込めるという行為がこういう事なのか、と初めて教えてくれた人。

この人の作品が、本当にどんな角度から見ても芸術であり素晴らしい表現なのか?と聞かれれば、「誰にとっても素晴らしいとは言えないかもしれない」と答えてしまいます。でも確実に誰かの脳天を直撃して、一生忘れられない経験として残っているはず。そんな作者の美学を凝縮したのがこの「ストリッパー」だと思う。

完全に固まった油絵を溶かす劇薬「ストリッパー」をタイトルとして、既存の”何か”をぶっ壊す、ロックンロール漫画という呼び名が似合いそうな作品。

「はじめから人間には個性も自由も無いのよ」

これを読んだのは大学生の頃だったと思う。これを読んだ時の衝撃を忘れる事は出来ない。

この人の初期の商業向けでない作品はTHE BOOMの「手紙」という曲がよく似合う。

僕はただ音楽を愛していたいだけだ。
ロックンロールにこめかみを撃ち抜かれたいだけなんだ。

そういえば最近はあまり山田先生の作品を追いかけてなかったけれど、調べてみたらオンラインサロンをやっているようなので入会してみましたw

遠藤浩輝短編集

メジャーで大ヒットした作品は無いとおもうのだけれど、この人はすごい。デビュー作でこのクォリティはすさまじい。

作品としてはEDENが最も長いのかな?EDENもすごい。途中のストーリーの迷走が無ければ漫画史に残る超名作になっていたはず。

EDENのあらすじ
体不明の硬質化ウイルスにより、人類は世界人口の15%を失った。20年後、人類は復興を始めるが……。人類はリセットされるべきなのか否か。神に、地球に、人類が試される――。その惨劇の最中に、人類が“選択”した未来とは? 

はっきり言ってエヴァを超えていたのではないかと思っている。20年前の作品だけれど、世界観が今後を予見しているように見えた。そしてその世界観は今になってより現実になりつつあるようにも見える。作者の世界観とセカイ観がとにかくすごい。

まだまだありますけれど、、、、

紹介したくなるような作品はまだありますけれど、長くなりそうなのでいったんお開きとさせて頂きます、、、w




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