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朝日と白い犬と

まだ暗いうちに目が覚めてしまったので、早朝に少し歩いてみた。最近はあまり眠れてない気がする。朋子と一緒にと思ったけど、車椅子を押していくのが最近はしんどいので、ひとりで。途中で苦しくなったので、ゆっくりゆっくり坂道を歩いた。ベンチに座って休んでいたら朝日が昇ってきて空がオレンジ色で綺麗だった。ここはよく朋子と来た場所なんだけど、なんだかここに来るのはこれが最後かもしれないと思って、泣きそうになった。

最近はすぐ涙が出て来る。

ずっとチョロチョロついてくる犬がいて、小さくて白い犬で、あれは何犬なんだろう?ゆっくりとしか歩けない俺の足にフンフンと鼻を近づけてきて可愛いなと思った。ベンチまではついてこなかったから、家に帰ったんだなと思っていたら、帰り道、車道に赤が混じった白い塊になって転がっていた。歩道から飛び出してしまったのか。さっきまで俺の足元でフンフンしていたのに。

悲しかった。でも、死っていうのはこういうことなのかもしれない。

いよいよ、式の日が近づいてきて、昨日は最後の練習をしたんだけど、トニモンが破けたダンスシューズに黒いガムテープを貼ったのを履いていて笑った。シゲやんが「それ履いて式に出るつもり?」って聞いたら、トニモンが「そうだけど、まずいかな」って。踊るのはダンスシューズがいいらしいけど、高いから履けなくなるまで大事に履くんだと言ってた。そういえば、余興の練習をすると床に黒い粉がたくさん落ちるんだけどトニモンの靴の欠片だったみたい。俺の式のために新しい靴を買うんだとしたら申し訳ないな。

帰りにすごくタバコが吸いたくなってトニモンが吸ってたやつをもらったんだけど、吸えなかった。口に近づけると吐き気がして、でも、せっかくトニモンがくれたから線香花火みたいに火が消えるまで眺めてた。

タバコはもういいかな。長い間ずっとタバコなしじゃいられなかったけど、やっと心からタバコと別れられたような気がする。少し寂しいけどね。



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