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【考察】PROVIDENCEの疑問点を解消する。引用や小ネタも。【PSYCHO-PASS】


 こんにちは、塩ラーメンです。まず始めに、お詫びと訂正です。これまでいくつかPSYCHO-PASSシリーズの考察をしてきましたが、色々なご指摘を頂き、私の認識が誤っている箇所がありました。

 特に、シビュラは犯罪者の脳の寄せ集めであるとの認識は誤りで、常守の「悪人の脳をかき集めた怪物」という台詞に引っ張られていました。シビュラを構成するのは「一般的な常識や倫理に囚われない」免罪体質者という条件なので、中には犯罪を犯していない個体も存在するという認識が正しいでしょう。
 ただし、シビュラの構成員にはある程度の凶悪犯が存在することは事実であり、彼らにとってシビュラは贖罪の一環として機能している側面もあることは言えると思います。

©サイコパス製作委員会


 またラウンドロビンはパノプティコンを元にしている説も映画FIから否定されます。ラウンドロビンはシビュラのデバックシステムとして開発されたものでした。


 さて、『劇場版PSYCHO-PASS PROVIDENCE』が公開され、今のところ4回鑑賞して参りました。色んなアニメや映画を観ている私ですが、特に思い入れの強い作品がPSYCHO-PASSシリーズですので、今作 見終わってみて、色々と複雑な気持ちでいます。
 じつは本作は第3期TVシリーズと並行して2016年に制作していたという話を脚本の冲方さんがされていて、そこから数えるなら公開まで7年かかっていることになります。それほどの年月をかけて作られた作品だからこそ、とても厚みのある作りになっていました。
 結末はもちろん、各所に疑問点や議論の余地があり、そもそも設定がおかしくないか?という話も出てきています。今回はそうした点をまとめていき、順番に考察をします。
 ということで、今回の動画ではより深く掘り下げ、なるべく慎重に考察していけたらと思います。そのために今回、はじめて考察にご協力を頂く形で動画を作っております。ご協力頂いたのは れもんさんです。


※このnoteは『劇場版PSYCHO-PASS PROVIDENCE』と、その性質上シリーズ全てのネタバレを含みます。

※動画を作った際のメモ書きですので、良ければ動画もご覧下さい。




・慎導篤志という人

 塩谷監督は、慎導篤志を、常守から見て「将来そうなるかもしれない未来像」と仰っていた。彼は自分の信じた正しさをなすためには表では言えないことをしてきた人物。ただしそれを肯定せず、自分の手が汚れていることもしっかりと自覚している。

 「システムの価値は認めています。他に信じるものがあるだけです。」という常守の発言に「いいね、そういうの」と顔を曇らせる。

 結婚式のスピーチでは「正義は相対的だが、真実は絶対的だ。」と述べており、その真実のために生きている、信じるものを持っている人にも見える。自分はその結果様々な嘘をつき手を汚してきたので、同じ道を辿ることになるだろう常守を心配し「良いねぇ、そういうの」と顔を曇らせたのだろうと解釈する。

・慎導篤志は何をしていた?

 彼は矢吹と協力し、ピースブレイカーに諸外国への破壊行為をさせていた。何のためにかと言えば、シビュラに敵対する勢力、反乱を黙らせるため。シビュラを輸出し、国のトップを変えるためである。
 つまり、『劇場版PSYCHO-PASS』にて描かれたシーアンの事件が世界各国でも起きていることが分かる。

・ピースブレイカーの活動

 ピースブレイカーは少なくとも東南アジア連合、スリランカ、北インド、パプアニューギニアにおいて活動していたことが、今回劇中の資料(活動記録)から確認できた。
 北インドにおいても活動していたことが分かったため、チベット・ヒマラヤ同盟王国に対しても何らかの影響を及ぼしていたと推測できる。(劇中で紹介された活動記録の時期が不明であるため、同盟王国成立・援助開始・援助打ち切りに対してどのように関与していたかは不明)

・砺波の目的、動機

 戦場で子どもを抱えていたシーン。海外で虐殺などの破壊行為をさせられていた。何故こんなことが起きるのか…と悩んだ結果、問題は貧富の格差にあると、そして「人が統治する限り、誰かが不当に搾取され続ける」という結論に辿り着く。
 そして「機能不全の法」などの台詞から法律廃止論者であることも分かる。人や人の作った法ではなく、AIによる統治を望む。アナーキズムとは違う。人による統治のせいで貧富の格差が生まれると考えたため、人ではなく機械による統治を理想とした。そのために部隊の解体後もシビュラによる統治を各国で実現するため、過激な破壊行為を続けた。
 今回の目的としては、紛争係数を悪用するためストロンスカヤ文書を手に入れ、各国で紛争を過激化させようとしていたことが分かる。
 そんな砺波が機械だと思っているシビュラの中身を知ればどうなるか…というところだが。

・砺波のシビュラに対する理解

 常守との会話でシビュラのことを「AI」と呼ぶ。どのくらいシビュラについて理解しているのか。
 砺波はジェネラルというAIについて、元はシビュラの補助システムであり、サイコハザード対策の医療用AIと説明していた。よって、劇中でモニターに映し出されたジェネラルを構成する人の脳は、シビュラと同じく免罪体質者であったと推測できる。
 また、この場面で砺波は「博士の脳を文書の代用として組み込んだが上手くいかなかった」と発言していたが、これは博士が非免罪体質者であったため、ジェネラルに組み込んでも上手くいかなかったのではないか。
 つまり砺波は免罪体質者について認知していない可能性が高い。だからシビュラについてもAIであると認識、もしくは人の脳を繋ぎ合わせた知能であるということまでは認識していた(?)
 人による支配は嫌うのに、人が作ったAI、もしくは人の脳を使った知能による支配は「正しい」とする。自己矛盾を抱えた人だなと。この辺りは後ほど設定の面からも議論したい。

・紛争係数、戦闘係数

ストロンスカヤ文書:機械的な、AIによる演算(?)によって紛争が起こる可能性を数値化したものが紛争係数。
→『虐殺器官』と同じような要素。伊藤計劃の書籍は1期でも引用されているので読んでおくのが吉。アニメ化もされている。

 戦闘係数は、北方列島にあるピースブレイカーの本拠地にて算出されていた、そのエリアで戦闘の起きる可能性のことだろうか。

 紛争係数と戦闘係数はどちらも新しく登場した概念で、似た名前なので混同してしまわないように気を付ける。

・パウロ、ヨハネ

 パウロは熱心な迫害者で、イエスの十字架の後の人物。徹底的にイエスの教えに従う者を逮捕したり石を投げたりしていた。しかしイエスの奇跡を目の当たりにすることになり、熱心な宣教師へ変わる。砺波はこのパウロと自分を重ねている。

冒頭で砺波がテモテへの手紙から引用している。

あなたについて以前預言されたことに従って、この命令を与えます。その預言に力づけられ、雄々しく戦いなさい(テモテへの手紙一 1章18説)


 テモテはパウロの協力者(弟子)であるため、パウロからテモテへ向けられたこの手紙を引用しただろう。砺波をパウロとし、ジェネラル()からの言葉を、隊員や憑依された者(テモテ)に告げるという構図になっている。

 一方、雑賀先生はヨハネではないかと狡噛に冗談を言われる。「パトモス島で黙示録でも書くか」というのは聖書の中にあるヨハネの書いた巻『ヨハネの黙示録』のこと。世界の終わりの様子を見せられたヨハネが何とか当時の言葉でそれを書き留めている。
 「十本の角と七つの頭を持つ獣」など様々なものが登場するのだが、もしかしたらこれは未来の戦車だったり…?もちろんヨハネはそんな最新技術を見たことがないので、預言の通りになる可能性もあるのかもしれないという余談。

・二分心仮説とディバイダー

 『神々の沈黙』にてジュリアン・ジェインズは、前2000年期までは人間たちは意識を持たず、「二分心」の命令に服従していた、という仮説を打ち立てる。
 意識とは言語の比喩から形成されるものであって、言語が生成される以前には意識は存在しなかったとした。言語がまだない古代人の心は、神々の声を出していた部分と、現代でいう心に分かれていたと考えたそう。

「遠い昔、人間の心は、命令を下す「神」と呼ばれる部分と、それに従う「人間」と呼ばれる部分に二分されていた」(神々の沈黙 p.109)

 今回これは「ディバイダー」という装置を分かりやすくするために引用されていた。選択やそれによる罪悪感を他人に押しつけるための装置「ディバイダー」。これによって犯罪係数が上がらない状態を作り出した砺波たち。
 それはつまり、シビュラに選択の全てを委託し、思考放棄する状態と同じでは?今作は、ピースブレイカーという組織の精神構造をシビュラ社会全体の縮図として提示しているのではないかと思う。
(これに言及されている方はあまりいなかったので、気付いていた方はコメントしてください。)

 もし、シビュラに全てを委ねるのではなく、ただの「補助」としてのみ使う社会になれば、これまで犯罪係数が低かった人も、実はシビュラに罪悪感を肩代わりさせていただけで、本来なら犯罪係数の高い人だと分かるかもしれない。

・三好達治「大阿蘇」

もしも百年が この一瞬の間にたつたとしても 何の不思議もないだらう
雨が降つてゐる 雨が降つてゐる
雨は蕭蕭と降つてゐる

 この詩は3期でも引用されていた。慎導灼がメンタルトレースを行う際に「雨が降っている」という部分を使っている。映画FIでも回想シーンで慎導篤志がこの詩を口にする。

 もしも100年がこの一瞬の間に経ったとしても…の解釈を3つ挙げておく。

①永遠に感じるような輝の潜入調査の心境を表現。

②約100年間にわたる世界紛争ついて、永遠に繰り返し続いていくと皮肉った表現。

 慎導篤志が輝イグナトフを射殺する場面にて、「もうすぐ雨は止む」と発言している
 →日本の開国や世界の復興によって、彼の弟などの外国人も幸せに暮らせる未来が到来することを表現??

③PSYCHO-PASSの世界は現代と近いという表現

 この世界がちょうど100年後であることは無視できない。100年後の世界でも現代と近い(そんなに変わらない)部分がたくさんあり、現代にも通じるテーマがあるという意味。

・引用が多い理由

 ひとつは勿論エンタメとして。引用をした方が含みが出るし、この作品はそうした文脈の上にあるのだと立場を示すことができる。

 もうひとつは、脚本の深見真さんのインタビューで語られている。

 第1期の時からよく聖書や古典を引用していますが、これをきっかけに『読んでみよう』と思ってくれたらうれしいなと。人類はそれこそ、何千年も文章にして記録を残してきたわけで、古典にはすごく面白い先人の知恵が詰まっている。
 第1期の宜野座伸元のせりふに『愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ』というのがあるのですが、本を読んで、何か危機を回避できたら得じゃないですか」


古典には知恵が詰まっているし、先人から学び危険を回避出来たら得だから。という理由があるようだ。

・狡噛は裁かれないの?

 所沢の収容施設にいる際、狡噛の犯罪係数は211と表示されていた。つまりエリミネーターでの処刑ではなくパラライザーで確保・収容が適応される。よって施設に拘留されることに落ち着いた。
 その後は、他の潜在犯が執行官適正によって引き抜かれるのと同様に、優秀な狡噛を外務省が引き取った。ということか?
 つまり、あの世界における狡噛の裁きは終わっていると言える。

砺波を殺害したにも関わらず、パラライザーでの確保となっている理由としては…

①公安局員ではなく外務省職員であったから

 公安局員の場合、ドミネーターの犯罪係数に基づいて行動しなければならないが、外務省職員は銃火器を用いて敵を制圧することが認められている

②常守を助けたから

 常守を殺そうとしていた砺波を撃ったので、あの場面なら正当な殺しだと判断された。

③優秀なので今後も使えると判断された

 優秀な人材は殺すべきでは無いという判断

・狡噛が対峙する未来の自分

 1期の槙島、劇場版のルタガンダ、SS Case.3のガルシアは全員、狡噛の有り得たかもしれない姿。劇場版では常守に「槙島と同じところに祭り上げられるかもしれない」と彼もカリスマ性を持ち合わせていることを指摘されていた。
 今回は砺波という人物が「外務省に暴力装置として使われる」未来の狡噛として出てきているのではないか。狡噛には暴力装置としてではなく刑事(捜査官)としてやり直して欲しい。

・宜野座と須郷の外務省入り

最終的に外務省へと移った宜野座と須郷だが、なぜそうなったのかイマイチ分からないという声も見かけたので2つ説を考えてみる。

①公安局に居場所が無くなったため

 この2人は直接的に常守の裏切りに加担した。シビュラはピースブレイカーの独立を認める判断を下し、常守はそれに反し彼らを逮捕するために動く。常守は裏切り者。霜月、雛河、六合塚は後方支援で問い詰められたら常守を盾にできる位置にいる。
 裏切った執行官、一度首輪を捨てた猟犬を公安局がもう一度飼うことはない。居場所の無くなった優秀な人材なので、外務省が身柄を引き取った。

②ピースブレイカーの真相を捜査し続けるため

 事件の終了後、シビュラは「慎導が自白データを残していた」こと、「矢吹、慎導両名の死を以って、事件調査は終了とする」ことを告げた。常守は「政府の罪を2人に被せただけじゃない」と言っていたので、ピースブレイカーの創設には2人以外の人間も関与していることを察したのだろう。
 また、シビュラは慎導の自白データからビフロスト関係のことを知り得ていたはずなので、今後のビフロスト解体に向けた計画やピースブレイカー残党への対処が必要であると考えたのだろう。

 このように、真相を解明したい常守と、ビフロストを取り込み解体したいシビュラの利害が一致したことで、宜野座・須郷の外務省への移動が許可されたと考えられる。


・常守は何故2発撃った?

①事故でないことを強調するため。

 1発だけだと事故と思われるかもしれないので、意図的に殺そうと思って撃ったことを示すために、かつ最小限の2発撃ったのではないだろうか。

②シビュラに対して、慎導篤志と同じ道を歩んだのだと皮肉を込めて伝えるため?

 慎導は輝イグナトフに対して2発撃ち、その後責任を負って自殺。常守も同様に局長に対して2発撃ち、容疑者として収監される形で責任を負う

・常守は有罪か

 局長を撃った常守だが、殺したと言えるのか?犯罪とされるのか?というのは今作の中でも議論されていたのと同様に、私達ファンも議論しているところ。

 ひとつ面白い考察があり、それは常守の局長殺害事件は犯罪不成立であると考えられるというもの。法律に詳しい196さんの考察なのでリンクを貼っておく。長いのでお時間のある時に。


・局長の血が赤色に

 局長は義体なので、撃たれると血ではなく緑色の液体が出てくるはず。赤いのは設定の変化?それとも殺されることを分かって赤に変えておいた?

①あらかじめ打ち合わせしていた説

 常守が撃つことを打ち合わせしていて、赤色の血が流れるように設定しておいた説。

→厚生省の慎導篤志のポストへ出世することになり、常守はそれに一旦乗る。シビュラは「嬉しい誤算です」と、常守が思惑通りになってくれると思っていた。これは常守が護送されている時の「これがあなたの選択ですか?」というシビュラの台詞からも分かる。
 つまり素直に捉えるとこの説は考えにくいのだが、どこかの解釈を少し変えるだけで、この説も有り得るのだと思う。

 式典のシーンは、常守の撃たれた傷も治り、かなり時間が空いているように見えるため、シビュラと話し合う時間は大いにあったはず。
(事後、霜月の動きの速さから、少なくとも彼女とは打ち合わせしていたように見える。)

②技術が進化し血が赤くなった説

 義体であると知られてしまった場合、有用な人間も処分しなければならない事態に陥る可能性があり、リスク管理の点から緑色の血液は好ましくない。1期や2期において、義体が破壊されたこと踏まえて、改善されたのかも…

・それ高いので返してくださいね

 試作段階のSG型ドミネーターを宜野座に渡し、霜月は「それ、高いので返して下さいね」と言っている。霜月はストレートなもの言いをしないので、きっと「無事に帰ってきてください」という意味で言ったんのだろう。素直じゃない霜月、良い。

・何度も映る換気扇

 これは今作PPPに限った話ではなく、1期からずっと強調されてきたものだが、換気扇のファンがよくアップで映る。これは監督が多大な影響を受けた映画『ブレードランナー』のオマージュ。

 1期で槙島が挙げていたフィリップ・K・ディックのSF小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』 を原作としたハリウッド映画だ。

・UF-2 KIGISU

須郷の操縦する戦闘機が起動した際、モニターに「UF-2 KIGISU」と表示される。「きぎす」とはキジのこと。戦闘機の名前としてはしばしば鳥の名前が使われるため、須郷の操縦していた機体の名前はKIGISUなのだろう。


<疑問点>

・「法」って刑法のこと?

 今回、劇中で語られる法は刑法であるべきだが、法務省の解体など、国は全ての法律を撤廃するという方針になっている。全ての法律を無くすことは、国家を国家たらしめるものが失われるということに他ならない。無秩序を意味する。シビュラが司るのは刑法であるはずで、「法」全ての撤廃という展開自体が疑問である。
 ただし、シビュラは包括的障害福祉支援システムであり、「最大多数の最大幸福」という目標を掲げ、市民の心理状態を計測・管理している。そのため、196 さんによると、シビュラは刑事法だけでなく、民事法や行政法、社会法等のあらゆる法領域に干渉しうるシステムと考えられるそう。
 であるならば、シビュラシステムがあれば法律など不要であるという国の方針には納得できるかもしれない。

・シビュラ=AI ?

 過去作との整合性はとれているのかという問題。ジェネラルは医療用AIとして紹介されていたが、シビュラシステムもAIであるのか?砺波も常守もシビュラをAIとして解釈しているような発言をしている。
 常守に関しては、シビュラの正体を簡単に口外しないだろうから、対外的にはブラックボックスのAIとして発言すると思われる。

 そもそもAIとは人工知能のことであって「人が実現する知覚や知性を人工的に再現するもの」のこと。

「言語の理解や推論、問題解決などの知的行動を人間に代わってコンピューターに行わせる技術(Wikipedia)」であるため、人の脳を繋ぎ合わせた「超知能」であるシビュラシステムは概念的にはAIではない。

 ただし、シビュラシステムは、膨大な演算処理を行うスパコン的な側面を持っており、機能的にはコンピューターと考えて良いのかもしれない。

ちなみに制作陣もシビュラをAIとして扱っている。

冲方丁(構成・脚本)
「シビュラシステムがAI(人工知能)によって人びとの職業を適材適所で差配していく」
(https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/php/business/php-20230512105831072)

塩谷直義(監督)
「シビュラやAI、いわゆる人工知能」
「シビュラシステムのような全体の幸福を指し示せるAI」
(劇場パンフレットより)

 いずれにしても、今作においてシビュラシステムをAIとして一括りにして扱ったことで、整合性などについて議論を呼んでいる。人間の脳の集合体をAIと呼ぶことの気持ち悪さもあるのかもしれない。

・時系列の問題

 最後の式典のシーンにおいて「シビュラシステム施工五十五周年記念 厚生省新官房職員任命授与式」という横断幕が掲げられていた。PPPの劇中が2118年であることを踏まえると、2063年にシビュラシステムが施工されたことになる。
 しかし、PSYCHO-PASS サイコパス 3 OFFICIAL PROFILINGの公式年表(最新)を確認したところ

2061年 シビュラシステム確立、鎖国政策完了、大規模省庁再編、食料自給率100%

2071年 シビュラシステムの施行

という記載があるのみで、2063年についての記述はなかった。

PSYCHO-PASS サイコパス 3 OFFICIAL PROFILING


 これらの情報を踏まえ、2063年から本格稼働用シビュラシステムの開発・工事が始まり、2071年に完成・運用開始がなされたと考えた方が綺麗に収まりそう。

 また、2031年には既にサイコパス測定による「職業適性考査」が開始されており、その後61年にシステムの確立、71年に施工と、段階を踏んでいることから、本格稼働以前のシビュラシステムは試験稼働のものであったと推測できる。

 また、今回のPPPでは「ビフロスト・ラウンドロビン」「法斑劫一郎」の謎が解消されなかった。この2つは、3期FIの劇中において、シビュラシステムの開発や運用に深く関わっていたと明かされている。
 そのため、今後4期以降でこの謎を扱う際に、2063年頃を舞台とした過去編が描かれるかもしれない。そこで時系列の問題についても解決すると嬉しい。

<不満の声>

・大掛かりなアクションが見せ場に

1期:事件が起こりその犯罪捜査をするといった刑事モノ

今回:外務省の内部抗争に巻き込まれる公安局。銃撃戦、大掛かりなアクションもの。ドミネーターもほぼ使えない(物語上仕方ない)

・省庁や世界情勢への説明が不足

 『劇場版PSYCHO-PASS』以降、厚生省以外の省庁が頻繁に登場し、日本と海外の関係性が描かれるようなった。しかしながら、その説明が不足しているため、説明不足を指摘するような感想ツイート・レビューを見かけた。

 オフィシャルプロファイリングや小説シリーズでは詳細に説明されているが、全員が読んでいるわけではない。テレビシリーズや劇場版の中でもう少し丁寧に説明するシーンがあってもよかったと思う。設定が難解であるために離脱してしまう人を可能な限り抑えるためにも必要。



何かご指摘や考察があれば遠慮なくコメントしてください。ご意見お待ちしております。

塩ラーメン

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