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トンデモ発明家の最狂ストーリー!?ー映画『メン・オブ・ビジョン』


発明家にとって大切なことは
「自由な発想、そして可能性への信念」

そう語るのは,8年前に回転柱を発明した発明家のハーバート・モス。

映画『メン・オブ・ビジョン』はスランプ中の発明家と新人発明家が織りなすブラック・コメディです。

今回は、知れば知るほど驚く20世紀初頭の常識、
アレはどうなっているの!?と気になる撮影の裏側まで、作品を通してお届けします!

ここから先はネタバレを含みますので、ぜひ作品をご覧になってからお読みいただけると嬉しいです!

〈タイトル〉『メン・オブ・ビジョン』
〈監督〉Frank Todaro
〈作品時間〉19分18秒
〈あらすじ〉
発明家のモスはスランプに陥り、投資家からの資金も底を尽きていた。そんな中、彼のファンであり同じく発明家のウォルターが現れる。そして彼の発明品の中に驚くべき物が…!

SAMANSA


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◎ 実際の科学とデタラメが重なる時代!?

本作の舞台となった20世紀初頭。
産業革命を経た欧米諸国はこれまでの宗教的、風土的な習慣から科学に傾倒し始めます。

電話機や発電機、写真や自動車が発明されたのは19世紀。

20世紀はこういった発明品をさらに実用的に、多くの人に使ってもらえるように改善してものを生み出していくような時代だったのです。

とは言っても、現代ほど科学への信用・信頼はありませんでした。

だからこそ劇中では今だとちょっと笑ってしまうような発明品もたくさんあります。

モスが発明した「イルミナトラ」。

イルミナトラを紹介するモス

どこにでもおけて、スイッチで簡単に消すことができるという優れもの(?)です。

しかしすでに白熱電球が普及し始めていたこの時代に、またロウソクに戻るのかと投資家たちはがっかり。

そんな時に、モスは「自由な発想と可能性への信念を持つこと」が発明には大切だと高らかに主張し、その姿は歴史上の発明家たちの勇姿すら連想させます。

その一方で、モス自身にも固定概念は発明の妨げになると投資家たちに説いていながら、新人発明家のウォルターには嫉妬心からかその発明品に欠陥があると決めつけています。

また装置を生み出すことが発明だとも決めつけており、実はモスこそ固定概念に囚われてしまっている人物として描かれています。

だから、彼は最後までイルミナトラを手放すことができなかったのです。

ちなみに本作は実話なの?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実はモスやウォルターは存在せず、全くの作り話。

しかし、劇中に登場したモス、ウォルターの教授であるシカゴ大学のジョージ・エドガーは実在しますし、ファスナーや、絆創膏は本当に20世紀初頭に発明されたもの。

ここでもフィクションとリアルが重なり合って、ユーモアが溢れていますね。

◎ 発明の裏で


20世紀において新たなものが発明されたと言っても、必ずしも人類にとって有益なわけではありませんでした。

本作で登場する「ラジウム水」。

モスが多くの人が悩まされている頭痛を改善するための医療装置を紹介する際に、ウォルターは「ラジウム水については聞きました」と発言しています。

ラジウムとはウランが崩壊した放射性物質。
1898年にフランスのキュリー夫妻が発見したことで知られていて、
ラジウム温泉などが日本でも有名ですね。

しかし放射性物質ということで、必要以上に摂取すると体内で被曝をする恐れがあるもの。

実は20世紀初頭においてラジウム水は、元気が出るだけでなく、飲むだけで癌などの病気を治癒させることさえできる魔法の水として販売されていたのです。

当時は天然水にも放射性のラドンガスが含まれているゆえに、水に放射能を当てれば当てるほどさらに健康に良いという誤った情報が広まっていました。

アマチュアゴルファーで実業家でもあったエベン・バイヤーズ氏はラジウム水の愛好家の1人でした。

約3年間にわたって飲用してきた彼はやがて、徐々に髪が抜けたり歯が抜けたりと体調不良に悩まされることになります。

1930年代、これを不審に思った連邦取引委員会が動き、ここで初めて、放射能によって被曝すると体内細胞を破壊したり、癌の原因になることがわかったのです。

それ以降はラジウム水の販売は禁止されるようになりました。

私たちは、科学による目覚ましい技術や産業の発展の恩恵を受けていますが、
実のところ、何が正しいのか、実は体に悪いのかというところは分かりません。

私たちの常識の中にも後世の人々が驚くようなものがあるのかもしれませんね。


◎ あのカートはどうやって持ち上げていた!?


マグネットの強力な反発力が、自分の体重をかけた重たいカートさえも浮かすことができるとわかった、この場面。

カートにぶら下がるモス

お分かりの方も多いと思いますが、こちらの場面ではCGを使った現代ならではの撮影が行われていました。

フランク・トダロ監督はこれまでCMの仕事をしていたこともあり、現場の仲間に協力をあおいで、カートをCGで製作することにします。

実際は写真の通り、カートの下部分の板のみを作り、その両側と上をワイヤーで固定したところにモスは掴まっていたのです。

実は板にぶらさがっていたモス

カメラのアングルと俳優の演技によって、あたかも本当にカートにぶら下がっているような演出は
1番の目玉である、新人発明家のウォルターがカートに押しつぶされて死んでしまう場面でも用いられています!

モス同様、ウォルターの下にマットレスをひき、実際の下部分のカートごと彼を下ろすだけ。

あとはまたCGでカートの上の部分を付け足して、ウォルターが本当に潰されてしまったかのように思わせるのです。

板にぶら下がるウォルター


言葉にするとなんとも単純な仕組みですが、実際の映像を見てあっ!と驚かれた方も多いのではないでしょうか?

1980年代以降映画において使われ始めることになったCG。

現代の映画やドラマでは必要不可欠なものですが、このCGも初めて開発されてから実用的なものになるまで膨大な年月と多くの人々の努力が捧げられてきました。


CGはまさに、現代の科学技術の賜物だと言えます。


私たちの身の周りには、誰かが発明しようと奮起して作られたものや、その失敗から偶然生まれたもので溢れています。

いつも使っているものこそ実はどんな経緯で生まれたのか、調べてみるのも楽しいかも知れません。

私たちも発明家になる日が来るかも知れない⁉︎とワクワクさせてくれるような本作。

メン・オブ・ビジョン』はSAMANSAで配信中です!
ぜひ自由な発想と可能性への信念を持って、もう一度ご覧ください♪

※タイトルを押していただくと予告がご覧いただけます★

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