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しらない

 新しく買ったシャンプー、しらないけどとても好みの香りで、泡立てながら「えっ、誰コイツ!」と思わず叫んだ。もちろん1人で。新しいヘアオイルも全然しらない香りでウキウキしてしまった。


 母方の伯母から「どれがいい?」と提案されたお財布はほとんどしらないブランド(しかしちょっと値が張る)だった。伯母は一年に一度だけ私を甘やかしてくれる。遠くに住んでいるからたまには伯母として見栄を張りたいらしい。とはいえしらないブランドはしらないしなぁ、と結局知っているブランドの財布を要求した。もちろんデザインも好みなんだけど。

 
 新年1発目のバイトは初対面の先輩と2人だった。しらない人と話すのが苦手なので凄く気を遣ってしまった。バイト歴は先輩とはいえ同い年なので気軽にどうぞと言われたけれど、マイナポイントについてお客様に丁寧に教えている姿や、上手で可愛らしいメイクや無数に空いたピアスの穴を見て、あぁこの人は私より“先輩”だなぁと思って身が引き締まる思いだった。結局ずっと敬語を使ってしまった。

 ちなみに新年最初の接客はお世話になっているバイトの先輩(プライベートで来店してた)だった。とはいえその先輩のことはよくしらない。一緒に働いたことがないから。先輩は夜勤、私は朝勤なので、お互い眠い目をこすりながら引き継ぎ業務について会話するくらい。
 ゆるゆると接客してしまって申し訳ないとは思いつつも、1週間ほど仕事を休んでいた肩慣らしに丁度いいなと思った。

 見知った常連さんもたくさんきて嬉しかった。「はい」「お願いします」「PayPayで」とか簡単なやり取りしかしない常連さん達の普段の会話の様子を想像するのが好きだ。無愛想に見えるお客様が心を許した人にだけ見せる笑顔を想像するのが好きだ。

 モンスターだけを買っていくお客さんのおかげでモンスター1本の価格は206円だと知ることができた。なんでかはしらないけど19番の煙草はよく売れる。幼い顔立ちながらタバコとモンスターを買っていく細身の男性、いつも細かいお釣りを募金箱に入れていく女性、特定の2社の新聞を買っていく男性……。

 そういえば少し前、ずっとかざしているのにバーコードが読めない私に対して「切ないねぇ」と笑ってくれた女性がいた。すげーいいなと思った。そこで「切ない」という単語がとび出てくることに驚いた。

 すごく尊敬してて、冬休みのほとんどのシフトが同じだった大好きな先輩との初勤務はもう少し後になりそう。だれにでも優しくてお茶目で絶対に怒らないみんなのお母さん感じ、って他の先輩は言ってたけど本当にそのとおりの方。働いている時の先輩しかしらないけれど、とてもいい人だってことは伝わってくる。早く会いたいな。次の木曜日までおあずけ。


 そいえば例のQUICPayユーザーの彼もときたまバイト先に来店する。1回も接客したことないけれど、彼はいつもお弁当を温めていくのを私はしっている。QUICPayを使っているということも(既出)。
 今度もし、来店した彼の接客が私で、またお弁当を温めていくとしたら、彼のお弁当が電子レンジの中にいる間だけでも会話をしてみたい。しらない彼のことをもう少し知ってみたい。

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