鮫美

はてブから記事移行しました/sfと純文学が好き

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最近の記事

晩夏

 新宿にて、飲み会の後、悪友2人とその後輩君とでポオカアなどという軟派な博打を打ち、そのあと誰が言い出したのかもう一杯引っかけることになって、わらわらと小料理屋へ押し掛けて好き勝手に暴飲暴食すれば、気がつけば電車はとうに終わっている時間になっていた。  悪友らに連行されるように私と後輩君はタクシイに押し込まれ、嗚呼さらば新宿、と車窓を流れてゆく歌舞伎町のネオンに別れを告げ、彼らの住む西東京へと向かった。タクシイ・ドライバアは初老の男だった。 「運転手さん、新宿ではもう長いん

    • 【異常論文】有感情性脳機能疾患と科学技術の発展との関係

      ※当記事は論文の体裁を取っていますが「異常論文」というジャンルのフィクションであり、実在する地域・国家・団体・人物・固有名詞・装置名・他作品に登場する名詞等とは何の関係もありません。全て筆者による創作であり、科学的に不正確な内容を多大に含みます。くれぐれも真に受けないでください。 main{ item thesis{ <title>有感情性脳機能疾患と科学技術の発展速度の相関</title>; <auther>鮫美・F・ホージロゥ</auther>; <date>11/2

      • 金属を穿つ

         一度だけ、他人の耳に穴を空けたことがある。札幌で過ごす三度目の冬だった。  彼の話をしよう。  同じ学科であるにも関わらず、私たちは3年になるまでまともに会話したことがなかった。一学年40人弱の学生が在籍するその学科には女子が3人しかおらず、その内の1人だった私は、揃って同じような服を着て同じような眼鏡を掛けている周りの男子学生を見分けることが、長らくできずにいた。喫煙所で仲良くなったツイ廃やレポートを見せてくれる京大落ちの秀才君、やけに話しかけてくるアメフト部の陽キャ

        •  私にしか見えない蟲がいる。今までに三度だけ見たことがある。  奴の種類は毎回違う。  最初に見たのは中学2年生のときだった。その日、母親と服屋で綺麗な形をしたベージュのパンツを見ていたら、店員さんが色違いの紺色もあるんですよ、と話しかけてきた。奥から出してきましょうか、試着してみます?と。濃い色の方が好きだったから、お願いしますと答えた。  店員さんはすぐに紺色のパンツを腕にかけて持ってきてくれた。しかし、そのパンツには、あたかもブローチのように、艶々とした黒い大きな

          ヤニクラ

           休職することになった。経緯は以下の通りである。  夏頃から身体と精神の不調は感じていたが、いよいよ耐えきれなくなり職場のカウンセラーのところへ駆け込んだ。それでも仕事は変わらずやらなければならないし、慢性的不定愁訴のような体調不良は続くため、上司に泣きつき、仕事を休んで病院へ行かせてもらえることになった。体を壊した際に病院へ行くなど人間として当然の権利であるが、畜生である私めが仕事を休むなど上司の温情無しには考えられぬことであり、30半ばにして頭皮が露出している上司のゴキ

          ヤニクラ