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ロシアのお正月料理1/3

ロシアでは、12月25日のクリスマスよりも新年を盛大に祝う習慣がある。
日本ではクリスマスが終わると一転して新年を迎える準備に切り替わるが、ロシアではこれが逆になる。
ロシアのクリスマスは1月7日(ロシア正教の場合)で、キリスト教の多い欧米よりも約2週間遅い。したがって、クリスマスは新年の行事である。
また、1月14日はロシアの旧正月(Старый Новый Год)にあたる(1917年まで使用されていた旧暦(=ユリウス暦)の1月1日に相当し、前日の13日は大晦日である)。
このような経緯から、ロシアでは現代の暦である西暦(=グレゴリオ暦)の新年をお祝いした後、ロシアのクリスマス、旧正月と続き、1月半ばくらいまでお祝いムードとなる(結果として、新年を2回祝うことになる)。
ロシアにも家族そろって食卓を囲み、年末年始を過ごすためのお正月料理が存在する。

1回目はロシアのお正月料理に欠かせない「オリヴィエ・サラダ(Салат Оливье)」。
ロシアでは最も有名で人気が高く、代表的な料理の一つである。欧州でも「ロシア風サラダ」として親しまれている。
角切りにした野菜と肉をマヨネーズで和えた伝統的なサラダで、日本で大人気のポテサラ(=ポテトサラダ)の起源であるとも言われている。

このサラダは他の祝祭日や祝いの席にも登場するほか、普段美味しいものが食べたいときにも食卓に上がる。

厳密に決められたレシピはなく、各家庭や地域によって材料は様々で、具材の割合も好みに合わせて自由に調理される。そのため、「冬サラダ(Салат Зимний)」や「首都サラダ(Салат Столичный)」などの別名も存在する。

材料:基本の材料は5つ。
・茹でたじゃがいも
・茹でたソーセージ(または、茹でた鶏肉)
・キュウリのピクルス(または、生のキュウリ)
・ゆで卵
・マヨネーズ

各具材の役割
🥔じゃがいも
―主役のじゃがいもはやや多めで、他の具材の割合はほぼ均等。
→他の具材の強い風味を抑え、味を中和させる。全体の味バランスの調整役で、使う材料によっては割合をさらに増やしたり、逆に減らしたりする。
🍗ソーセージ
―ソーセージはサラダに塩味を加える(鶏肉や海老を使うこともある。ただし海老を使った場合は通常、別名の「冬サラダ(Салат Зимний)」と呼ばれる。)
🥒キュウリ
―キュウリはサラダに水分を加える。新鮮な生のキュウリならフレッシュ感が、ピクルスなら塩気が感じられる。またピクルス液を少しサラダに加えると、しっとりとした塩味になる。
🥚卵
―卵はサラダに卵黄の柔らかさと風味を与える。他にも、卵は調味料のマヨネーズにも入っており、互いの風味を引き立て相性が良い。
🥄マヨネーズ
―マヨネーズは通常、サラダ全体が良く混ざるよう多めに加える。

追加の材料(あればなお良い)
・グリンピースの缶詰
・人参

各具材の役割
🫘グリンピース
―グリンピースはサラダにしっとり感と甘味を加える。キュウリの量が足りない時にグリンピースで補っても、逆にグリンピースがない時はキュウリを多めに入れても良い。
🥕人参
―人参もサラダに水分と甘味を加える。

その他の材料バリエーション
・玉ねぎまたは青ネギ
・ディル
・パセリ
・(好みで)塩こしょう
 
★実演レシピ★
https://www.youtube.com/watch?v=VSPX3WJ42Hc

※この動画内のレシピ複製版は以下をご参照ください。

🍳材料
・ボローニャソーセージ、300g(茹でた鶏肉でも可)
・中くらいのじゃがいも、3~4個
・小さいピクルス、6~8本(中くらいのキュウリ2~3本でも可)
・豆の缶詰、1缶
・調味用のマヨネーズ
・小さい玉ねぎ、1個
・挽きたてのコショウ(お好みで)

🍳作り方:()内は補足説明。
①    じゃがいもと人参を皮付きのまま中くらいの鍋で40分程、柔らかくなるまで煮る。
(ただし、加熱のし過ぎでじゃがいもが柔らかくなり過ぎると、サイコロ状に切るのが難しくなるため注意が必要。また、じゃがいもは皮をむいてから茹でても良いが、味が若干異なる。)
②    卵を固ゆでにする。
③    じゃがいもと人参の皮をむいて、よく冷ます。
(十分に冷めていない材料を混ぜるとサラダの保存期間が短くなる。)
④    豆の水気を切る。
⑤    じゃがいも・人参・卵・ピクルス・ボローニャソーセージを小さなサイコロ状に切る。玉ねぎもさいの目切りにする(使う場合)。
⑥    コショウとマヨネーズで味付けする。
⑦    すべての具材をよく混ぜ合わせ、ロシア風ポテトサラダ「オリヴィエ・サラダ」の出来上がり。(すぐに食べない場合は、冷蔵庫で1日保存可能。マヨネーズを加えない場合はもう少し長く保存できる。)

オリヴィエ・サラダ誕生の背景
1864年に開店したモスクワのホテルレストラン「エルミタージュ」のメニューにあったサラダで、この料理の考案者であるフランス人シェフ、リュシアン・オリヴィエにちなむ。
数ある料理の中でもオリヴィエ・サラダは特に評価が高かったものの、その製法(特にマヨネーズの配合)は秘匿とされ、誰にも真似できなかった。さらにシェフの死後、オリヴィエ・サラダは全く再現できなくなった。「エルミタージュ」は1917年のロシア革命のあおりを受けて一度は閉店したものの、その後営業を再開しオリヴィエ・サラダも復活した。しかし、この時に出されたオリヴィエ・サラダはオリジナルのものとは全く異なるものだった。その後、このサラダを模したレシピがいくつも現れ、呼び名も複数存在することとなった。
https://en.wikipedia.org/wiki/Olivier_salad

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