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自由研究のやり方

自由研究のやり方
How to Conduct an Independent Research.


近所の小学生が困っていたので、その子のために簡易的なメモを書きました。それを公開します。仮説の検証のパートは少し曖昧な書き方をしてしまっているので、あくまでも参考程度にご活用ください。もしも本文中に重大なミス等ありましたらコメントを下さい。


1. 序論−このレポートの概要

このレポートでは、自由研究とは何か、どのように進めていけばいいのか、どうすれば完成させることができるのかを書きます。そのために、まず、研究とはどのようなことなのかを説明します。次に、その研究成果の報告書(レポート・論文)の書き方を示します。

このレポートの目的は、小学校の自由研究で何をやればいいのか分からない親、子の両方に考える糸口を提供することです。

このレポートの要点は以下の通りです。研究とは「自分なりに問いを立てて、他の人にも分かるやり方で、何らかの資料や材料を用いて、その問いに答える作業」であること、論文とは他の人に自分の研究について知ってもらうために書くもので、決まった形式を持っていることです。このレポートでは例として「どうやったらよく飛ぶ紙ヒコーキを作れるのか?」というテーマで自由研究を進めるという形式で説明をしていきます。

i. 研究とは何か

研究とは、「自分なりに問いを立てて、他の人にも分かるやり方で、何らかの資料や材料を用いて、その問いに答える作業」のことです。「問い」というのは、分からないことや知らないことを言い表すものです。例えば、「地球はなぜ丸いのか?」とか「どうしておなかがすくのか?」のように、文の後ろにはてなマークが付きます。

研究は、問い、その答えにたどりつくための方法、そしてその答えについて、自分だけが分かるだけではなくて、他の人も納得できるようなものである必要があります。例えば、「チョコレートはなぜ美味しいのか?」という問いはどうでしょう。他の人でも納得のいくようなやり方で答えを出すことはできるでしょうか。たぶん、難しいと思います。何を美味しいと感じるのかは人それぞれですし、甘いものが好きではない人もいるでしょう。美味しさは主観的だと言うことです。だから、自分が何を美味しいと感じるのかを明らかにすることはできても、他の人がどうなのかは分かりません。この問いだと研究をおこなうのは難しそうです。不可能ではありませんが、難しいということです。

ここでは別の例を挙げて考えていきます。「どのようにすれば、紙ヒコーキを高く飛ばせるか?」という問いについて考えてみます。この問いであれば、他の人にも納得のいくやり方で研究を進めることができそうです。なぜなら、材料さえ揃えば紙ヒコーキは誰にでも作れるものだし、「飛ぶ高さ」は「チョコレートの美味しさ」とは違って、誰にとっても同じもので目に見えるからです。簡単に言うと、客観的だということです。他の人でも答えを確かめられそうな問いと方法を選ぶことが研究を進める上で大切です。また、夏休みの間に研究できる程度の問いにすることも重要です。つまり、あまりにも時間やお金がかかりすぎる問いは自由研究には向かないということです。

ii. 論文とは何か

自分がどのような研究をしたのかを、他の人に伝えるための文章をレポートとか論文と言います。論文は、「序論」「方法」「データ」「結果」「考察」「結論」という部分に分かれています。論文の書き方は以下の別の章に詳しく書くことにします。
学校に宿題として提出するためには、この論文を書くことになります。


2. 研究の進め方

この章では研究の進め方について解説していきます。研究は、テーマを決めて、問いを立て、その問いの答えを予想して、それを実際に確かめるという順番で進んでいきます。

i. テーマを決める

研究のテーマを決めましょう。あなたの好きなもの、嫌いなもの、知らないもの、分からないものをヒントに考えましょう。テレビ、ゲーム、YouTube、学校、仕事、電車、天気、生物、社会…。色々な物事を挙げてみてください。これがあなたの研究テーマになります。

ii. 問いを立てる

身近なものごとで、何か疑問を持っていたり、違和感を持っていたりすること、「あれっ?」と感じることはありますか。思いついたことをどんどんメモしましょう。
「よく飛ぶ紙ヒコーキはどうやったら作れるか?」「どうして電車は混んだり空いたりするのか?」「どうしてテレビで映像が観られるのか?」「夜寝たのに昼間眠くなるのはどうしてなのか?」「どうして子どもは選挙に行くことができないのか?」とか色々考えてみてください。
テーマを決めて考えたことをメモしたら、研究のための問い(=リサーチ・クエスチョン)を選びましょう。ここでは例として上で書いた「よく飛ぶ紙ヒコーキはどうやったら作れるか?」を研究のための問いとして考えてみます。

iii. 仮説を立てる

問いを立てたら、その次にするのはその答えを予想することです。この、答えの予想のことを「仮説」と言います。何個か仮説を考えてみましょう。

仮説1:翼が大きいほど、紙ヒコーキは遠くに飛んでいく。
仮説2:機体が軽いほど、紙ヒコーキは遠くに飛んでいく。
仮説3:勢いよく投げると、紙ヒコーキは遠くに飛んでいく。

仮説を立てたら、次にするのは、仮説に関連する情報を集めることです。図書館やインターネットを使って、紙ヒコーキの作り方や、紙ヒコーキが飛ぶ仕組みを調べてみましょう。参考にした本やサイトの情報(著者の名前、本のタイトル、発行年、出版社、URLなど)はすべてメモしておきましょう。あとで必要になります。
紙ヒコーキについて調べていくと、自分の関心と似たような情報に出会うかもしれません。その時は、まねできそうな部分はあるか考えてみましょう。

iv. 仮説を検証する

検証とは、それぞれの仮説が正しいか確かめることです。検証をするためには、その方法を決めて、自分が実際にどのように作業を進めたのかを記録しておく必要があります。
例えば、まずは基準となる紙ヒコーキを一つ作ってみて、その紙ヒコーキと比較する形で仮説を検証していきます。どんな紙なのか、どんな折り方をするのかを記録しましょう。
仮説1を検証するためには、例えば基準となる紙ヒコーキの翼の幅が7cmだとしたら、7cmよりも幅の広い紙ヒコーキをいくつか作ってみることが必要です。そして実際に飛ばしてみて、何m飛んだのかを計測して記録を残します。
仮説2を検証するためにはどうすればいいでしょうか。紙ヒコーキの形は同じにして、材料だけ変えて重量を減らすことです。重量以外は同じ条件にすることが必要です。
仮説3を検証するためには、自分が紙ヒコーキを投げる様子をビデオに撮ってみましょう。そうすれば普通に投げる時と、勢いよく投げる時とで比べることができます。

v. 結果

検証作業はどうだったでしょうか。仮説が正しかったのか、間違っていたのかどちらでしょう。検証結果はすべて記録しましょう。うまくいかなかった場合は、別の仮説を立てて更に検証してみましょう。最初の仮説とは逆の仮説を立ててみるのもよいでしょう。そのとき、以前の仮説をなかったことにする必要はありません。研究とはうまくいかなかったことにも価値があります。「この仮説ではダメだった」と発見できたことに価値があるのです。すべて記録を残しましょう。

vi. 考察

検証作業、結果の整理が終わったら、自分の研究がどのように進んだのか整理してみましょう。どんな紙を使ったのか、どんな折り方をしたのか、どのような紙ヒコーキだとより遠くに飛んだのか、そしてそれはどうしてなのか。そして、振り返りの最後に自分の問いに答えを出しましょう。答えを出すことができたら研究はひとます完了です。
考察を進めていくと、新しい仮説が思い浮かぶかもしれません。これはアニメで言うと、次回予告です。ここまで研究をしてきたあなたは、次に更に研究をするなら、どんな仮説を立てればいいのか、自分なりの研究の続きがなんとなく思い浮かんでくるのではないでしょうか。

3. 論文の書き方

研究の成果を提出するためには論文を書く必要があります。論文の形式は決まっていて、その通りに書きます。論文は「序論」「方法」「データ」「結果」「考察」「結論」という順番に書いていきます。どうしてこの順番なのかというと、他の人に自分の研究を理解してもらうために、自分がどのようにして研究を進めていったのか知ってもらうためです。論文の形式をよく見てみると、先に書いた研究の進め方と一致していることがわかると思います。

i. 序論
序論では自分の研究がどのようなものなのかを紹介します。自分の問い、仮説、検証結果のすべてを短くまとめて書きます。問いだけではなく、仮説と結果もです。
ii. 方法
方法という章では、自分の仮説について序論よりも紹介し、どのような方法で自分が仮説を検証したのかを書きます。
iii. データ
データという章では、自分の研究でどんな材料・資料を使ったのかを紹介します。例えば、参考にした本やウェブサイトで書かれていたことを紹介したり、研究ではどんな紙を使ったのか、どんな折り方をしたのかを書きます。
iv. 結果
この章では、検証の結果をすべて書きます。これまでの例で言うと、紙ヒコーキの飛距離のグラフを書いたり、紙ヒコーキの形をスケッチしたりします。
v. 考察
検証結果をもとに、どうしてその結果になったのか考えます。そして問いに答えを出します。仮説1と仮説2は正しかったけれども、仮説3は間違っていた場合、「よく飛ぶ紙ヒコーキはどうやったら作れるか?」という問いには、「○○という紙を使って、△△のような折り方で折るとよく飛ぶ紙ヒコーキが完成する。投げ方は××にする。」という答えが出てくるでしょう。
vi. 結論
結論では、序論と同じようにもう一度、研究の問いと結果を書きます。そして次の仮説を書き加えたら結論は完成です。
vii. 文献表
論文の最後には、自分が読んで参考にした本やウェブサイトの情報を記します。文献表の書き方は以下の通りです。著者名のあいうえお順に書きましょう。

(本の場合)著者名,出版年,『タイトル――サブタイトル』出版社名.
(ウェブサイトの場合)著者名,最終更新年,「タイトル」,ウェブサイト名*,(閲覧した日,URL).

viii. 引用について
他の人の本などに書いてあることを参考にした場合、論文の中でそれを示す必要があります。例えば、井上さんという人が書いた紙ヒコーキの本の25ページに書いてある言葉をそのまま書き写す(=引用する)場合、その文章を「」の中に入れて引用部分の最後に(著者名, 出版年: ページ数)を書く必要があります。引用例は下に示す通りです(ちなみに、この文献は架空のものです)。他の人の言葉を使う時は必ずこの形式で引用しなければいけません。

紙ヒコーキの折り方について井上は、「折り目を定規などでなぞり、しっかりと折ることが必要です」(井上,1997:25)と述べている。

4. 結論−このレポートのまとめ

ここまで、研究をするとはどのようなことなのか、論文をどう書くかを説明してきました。繰り返しになりますが、研究とは「自分なりに問いを立てて、他の人にも分かるやり方で、何らかの資料や材料を用いて、その問いに答える作業」です。具体的には、いくつかの仮説を立てて、それを検証していくことでした。そして、論文とは自分がその研究をどのようにしておこなったのかを他の人に知ってもらうための文章でした。ちなみに、このレポートも、基本的には論文の形式と同じように書いています。
研究をする上で大切なのは、自分が研究テーマに興味があるかです。好きなことだったら研究は楽しいし、面白いです。逆に、興味がないテーマだったら、研究はつまらないしめんどくさいものになってしまいます。研究テーマを選ぶときは慎重に、自分が面白いと思えるものを選びましょう。どんなテーマを選んだとしても、自分が面白いと思えるものなら、きっと研究はうまくいきます。

自由研究用メモ
テーマは何か、問いは何か
仮説はどのようなものか
どうやって検証するのか
結果はどうだったのか
どうしてその結果になったのだろうか
検証結果から、どんな答えが考えられるか

研究活動、翻訳活動に対してご支援いただければ嬉しいです。