一部授業のみ対面形式へ移行することにかんする問題点

 4,5月から大学では全面的にオンライン授業が続いている。後期はどうなるのかという点は教員も学生も憂慮していることだろう。
 一昨日、一橋大学は以下のような発表を出した。

2020年度・秋冬学期については、次の授業のみ対面授業を再開できることとし、それ以外の科目は原則としてオンライン授業で行います。

http://www.hit-u.ac.jp/students_info/7868

ここには大きな問題が孕んでいると思われる。第一に、週に1,2コマのゼミのために、結局のところ多くの学生は電車通学しなければならないこと。第二に、履修しているゼミ授業の前後の時限の授業は原則としてオンラインなので、授業が受けられなくなるということ。

 第1の点にかんして、感染拡大防止という意味では、週5から週1,2まで通学頻度を下げることに一定の効果はあるのだろうと思われる(これは私の憶測でしかないが)。しかし、感覚としては「わざわざ」通学定期を購入して、週1回だけ通学する徒労感は否めないだろうと個人的には感じる。
 より重大なのは第二の点だ。
 例えば、3限のゼミに出席するために1時間かけて通学するとしたら、2限の後半には家を出なければならないだろうし、その後の4限の授業はオンライン受講が不可能になるといった事態になりうる。遠方に住んでいる学生ならば負担はより重くなる。
 もちろん、大学の空き教室を開放して、そのような学生が受講できる場を確保するという手もある。しかし、その教室を管理する人員が必要になる。誰がその役目を担うのだろうか。職員か。TAか。管理業務にどれくらい賃金が発生するのか。その金銭的コストを大学は払う余裕があるのか。
 あるいは、学生はあらかじめゼミの前後の授業を履修しない選択をするかもしれない。つまり、学びたいことを諦めるということだ。これでは本末転倒だろう。学生の学びを確保しようとして、逆にそれを狭めてしまっている。
 ここで最初の引用部をもう一度読んでみてほしい。対面授業をする、ではなく、「対面授業を再開できる」とある。つまり、再開するかどうかの判断は大学当局ではなく、教員に一任されているというふうに読める。これは端的に言って責任逃れなのではないか。
 一橋大学は昨年度末に、"4月から予定通り授業を行なう"とアナウンスしてから、数日後にその判断を撤回してオンライン授業に移行させたという経緯がある。この度のアナウンスにかんしても、9月にまた変更される可能性がある。今後どのような形態で授業が行なわれるのか、一学生として注視したい。

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