短歌 2024年3月

3月1日
青空がステンドグラスにぶつかって楽譜となって花嫁を待つ

3月2日
懸命に息をしながら話すのは無理だと知った 夜光虫の波
あのひとのピアノがいいなとおもったらケーキを買ってなめらかな供犠

3月3日
一筋の光も届かぬ海底も独りで泳ぐ鯛焼きであれ
一言:毎日毎日ぼくらは鉄板の云々。

3月4日
星辰はめぐりつづける 結ばれた手の感触が祈りとなって (風野灯織さんに寄せて)
一言:灯織ちゃんおめでとうございました。スローモーションのMVのイメージであり、FR@GMENT WINGのジャケットのイメージでもあり。

3月5日
なわとびを放る 切断 描かれたきみの王国きみの法律
一言:みずからの王たれ。

3月6日
薄明のグラデーションにとけこむと箸で卵をとく音がする

3月7日
へのへの で力を抜いていたけれど もへじ で急に人になる こわ

3月8日
そうすると「愛想ないな」と欠かさずに祖母は言ってた 愛想あったよ
どのような一人称を生きたのか 思い出せないままきみと会う

3月9日
ファミマからふたりぶんだけ持ち帰る スーパードライと宇宙の欠片

3月10日
逆立った不眠の皮膚の神経に広がりすぎたデンドロビウム

3月11日
フェイントで財布出す夜 生存のためのレッスン第十二講

3月12日
かなしみを展翅したらば陽に透きてあざやかなりき 注射器は折れり

3月13日
わたしにはぼくとかおれが住んでいてそれぞれ違う色のガーベラ

3月14日
偶然の砂粒が積み重なってヒトガタとなるゆえに我あり
一言:ジジェクだと、逆向きになりそう。

3月15日
こんなにもきみがすきだよ まだマシな耳鳴りほどの距離感の声
一言:なんかクズそう。

3月16日
棘のある美しさならくたくたに煮込みてシチウにしてくれたまへ

3月17日
きみを裏切ったりなんかしないって免許証にも書いてあるから

3月18日
口もとに緋色 あなたもとまれない ダンスフロアへInvitation (炎メシ短歌)
一言:シャニマス6th LIVE大阪のホムラインビテーション最高だった。

3月19日
ぼくたちがたがいの名前よんだ数あわなかったねレジ締めむりだね

3月20日
寄る辺なきわたし果てなき複製をくりかえしくりかえし非わたし
一言:シミュラクル短歌。

3月21日
たまねぎに目がしみたから追いかけてかなしみ成分はいったなみだ

3月22日
とりどりのヒカリがたがいをおもうからシンガロングはひびきをのこす (イルミネーションスターズ『スマイルシンフォニア』に寄せて)

3月23日
しんとした零時ぴったし浮遊してbeyond the わたし わたしは見たい

3月24日
思い出をオーバードーズする夜は指ひとつさえ動かないまま

3月25日
拳銃に弾丸込めるかのように署名、捺印、あらたな暮らし

3月26日
このやうでしかありえぬと思ひなし早咲き桜ぬかるみに落つ

3月27日
涼やかな風をさえぎるものはなく草原味のウォッカのまぶしさ

3月28日
苦しみが飽和するのか調べてるわけじゃないけど限界はくる
一言:くるな。

3月29日
全身ではるかぜにのりふんわりとうすみずいろのコートはおって

3月30日
オレンジを口移しする感触のみづみづしさがアメリカだつた

3月31日
チェックしてうしろに送ったリストには青春気分たしかにあった

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