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エッセイ:傘がない



だけども 問題は今日の雨
傘がない

『傘がない』井上陽水


巷に雨が降る。
と、
気が滅入るという人がある。音に聴き入る人もあれば、古傷が痛むという人もある。
匂いが好きな人も。
恵みに感謝する人もある。
降られる人を思う人も。
雨は雨でも、人それぞれ。



雨が降れば傘をさす。
とは誰か偉い人の言葉。
自明のことをなさいということらしい。
みんな傘をもっているわけではないのに。


自明とは、
論じるまでもない、あきらかなこと。
当たり前のこと。
傘のない人は、
当たり前のこともできない人。
とでも?
何も見えていない。
これだから偉い人エリートは。



論じるまでもない明らかなこととは、
誰もがみんな、
ここにこうして有るという今。
そしてこの雨。
傘がない。



つめたい雨、
目の中に降る。
何も見えなくなる。
何も考えられなくなる。
雨にぬれ。






巷に雨が降る。
と、
雨は雨でも、人それぞれ。
誰もがしのげる、みんなの傘はない。
されど人を思う人はある。
傘となれ。