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エッセイ:感じることだけがすべて


例の通訳氏の話ではありませんが、「悪」に不寛容な社会は息苦しいなと。善悪よりも、実感を信じたい。


ヘッドライトの光は 手前しか照らさない
真暗な道を走る 胸を高ぶらせ走る
目的地はないんだ 帰り道も忘れたよ

『深夜高速』フラワーカンパニーズ


時間の喩え話です。
車を走らせている。
フロント硝子の向こうに見えるのが現在、過去はバックミラーから零れ落ちていく。未来はつねに先に「有る」。
知ることは叶わない。
今しかない。
ゆえに「私」は無知である。

過去も想起しているという今。今しかない、未来はない。
未来は、有ると仮定して初めて「有る」。
未来が有ると仮定して、アクセルを踏み込む。加速度を感じる、バックレストに躰が沈み、今を感じる、生を実感する。
生に意味はない。
知るには、感じるしかない。

感じることだけがすべて。
感じたことがすべて。

意味は有ると仮定すれば、有るような気にもなる。
有ると仮定すれば、何だって探せる。
つまり意味とは空しい幻影で。

無いものを有ると仮定するということ。それが生の営みを支えている。
未来が有る、明日が有り、他者が有り、ゆえに私が今ここに、このように有る。
有るものはみな、仮に有る。意味はない。空しい幻影。
善悪もない。
実感だけがある。
いい時もわるい時も、どん底の時も。

どん底とまではいかずとも、劣勢にあるとき、苦しいときも、感じることがすべて。因があって、苦しい今という果がある。因果に意味はなく、善悪もない。
私のせいではない、とはカミュの小説のヒーローの口癖ですが、感じたことがすべてであれば、開き直ることがあってもいい。私は本来的に無知であると。嫌われるかも知れないけど。
抱え込まないで。

生の意味など誰も知らない。
知らずに誰もが生きて有る。
ただ有り、あなたが感じること。それだけがすべて。
感じたままでいい。
それが正しい。
たとえ人と違えども、あなたは正しい。
かつても今も、これからも。

あなたの正しさがある、正しい生という様なものはない。
だから、感じるままに、寄り添うこともできるのでしょう。
実感とはあなたの異名である。





感じることだけがすべて。


生きていてくれて有り難う、
と言われ、
生きててよかった、
有り難う