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思いは時を超える、きっと|『フィッシュストーリー』伊坂幸太郎著

フィッシュストーリーは、2007年に観光された伊坂幸太郎の短編集です。『動物園のエンジン』『サクリファイス』『フィッシュストーリー』『ポテチ』の4作品から成り、人気キャラクターの黒澤が複数回登場します。ですので、黒澤ファンにとっては特に満足度の高い作品になっていると思います。

印象に残ったフレーズ

4作品それぞれに固有の面白さがありすべてよかったのですが、僕自身野球をやっていたこともあり、ポテチが最も印象に残り、そこからのフレーズが多めになっています。

「生きてるのつらいっす」
〜中略〜
「そうか、つらいか」
〜中略〜
「俺つらいっす」
「お前は偉いよ」
「えらくないっすよ」
〜中略〜
「俺、どうすりゃいいんですかね?」
「何もしないでいいんじゃないのか」

黒澤のさっぱりした優しさが沁みます。
肯定も否定もアドバイスもしない。でも響く。そんな言葉を言える人間になりたいなぁと思いました。

「だいたいが、本塁打が出たとして、それで、何か変わるのか?」と皮肉めいた言い方をする。「たかだかホームランで、人は救われるのか?」

この時の黒澤の会話相手の返答がとても印象的なのですが、それは読んでからのお楽しみにしておきましょう。

感想

自分の起こした行動がその瞬間に目の前にいる人を救うかもしれないし、何十年後かの名前も知らない人を救うかもしれない。どのタイミングで誰を救うかはわからないものです。

往々にして、期待通りにならないと、人はネガティブになります。だから、「救われるといいな」くらいのゆるい期待を持って人と関わったり行動したりしたいなと思いました。

パンチライン

黒澤は自嘲気味に笑った。「俺は、他人を蔑ろにするよ」とあっさり言った。「いろいろと気にはかけるが、最終的には、『だから?』としか 感じない。だから、どうしたのか?俺はあいつじゃない。まわりの人間に問題があると、俺の生活にまで影響が出るかもしれない。だから、できれば他人も幸せになってほしいが、その程度の関心しかない」黒澤はその後、無言になり、車内はしんとした。


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