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おしゃべりな猫

二匹目の猫を迎え入れようと、保護猫の譲渡会へ娘と出掛けた。
こじんまりとした会場だったが、愛らしい子猫が想像以上に参加していた。

どの子も可愛い。選べない。

あちこちのケージを見て回るうちに暑さで気分が悪くなってしまった。
「今日はもう帰ろう。」
そう伝えるつもりで娘を探すと、あるケージの前でじっと立っている。
背後から覗くと、小さなキジ猫の背中が見えた。
娘が猫じゃらしのおもちゃを隙間から入れてみても無反応だった。
寝ている?
「この子が気になるの?」

抱かせてもらおうと、係の人に声を掛けた。
するとちょっと困ったような表情で
「この子ね、猫風邪をひいているのに気付くのが遅れてしまって目がね…。」
ケージから出して抱かせてもらった小さなキジ猫の左目はすでに白く濁っていた。


娘は諦めて帰るだろうと思っていた。
でも彼女はその場を動こうとはしない。
私は外へ出るよう促そうと近づいた。
すると娘は

「この子じゃダメなの?」


私はすぐに返事が出来なかった。
マンガのように心の中で
ウッ
って言ったと思う。
この子じゃダメなの?どうして?
目が悪いから?それだけ?そんな理由で?
頭の中は様々な考えで高速回転していたと思う。
暑さと心の動揺で汗が流れて来る。
すると感じの良い譲渡会のスタッフの方が
「優しい娘さんですね。」
と温かい眼差しで声を掛けてくれた。

長い間、保護猫活動をされているこの女性が話を聞かせてくれた。
やはり病気を持つ猫は譲渡会に参加しても、なかなか引き取ってもらえる機会に恵まれないことも多いのだけど、ウチの娘のように、ケガや病気をしている猫ばかりを選ぶ子供さんもいるのだとか。もちろん、おうちでは親御さんも一緒になってお世話をするのだから、家族全員の愛情を受けてのびのびと暮らしているようだと。

そうかぁ、私の娘はそっちかぁ(笑)

母として、腑に落ちた瞬間だった。


私は知らなかったけど、メス同士は微妙な関係なのね。
母性が良い関係性を作ってくれると期待していたのに、一定の距離感を保っている二匹。
涙と鼻水が少し気になるけど、よくしゃべり、元気に先住猫を追いかけている。
つまり、何も心配は要らなかったのだ。


緊張して顔が上げれない


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