見出し画像

【イベントレポ】ダイアログ・イン・ザ・ダーク(DID)



ダイアログ・イン・ザ・ダーク(DID)という名前は、何年も前に耳にしており、いつか体験したいと思っていた。最近そのことを思い出し、時間の都合もついたため、2024年1月時点で開催している「ゆるめながら 五感をとぎすます 『五感』」に参加してみた。

これから参加される方へ配慮して、体験の詳細な内容の説明はしないが、とても良い体験になったことは強調しておきたい。なお、感じたことについては、後述する。

Dialog in the dark

目以外のなにかで
ものを見たことがありますか?

この場は完全に光を閉ざした
“純度100%の漆黒の暗闇”。
普段から目を使わない視覚障害者がアテンドとなり、ゲストを漆黒の暗闇にご案内します。

視覚以外の感覚を広げ、新しい感性を使い、チームとなった方々と様々なシーンを訪れ対話をお楽しみいただきます。

1988年、ドイツの哲学博士アンドレアス・ハイネッケの発案によって生まれたダイアログ・イン・ザ・ダークは、これまで世界41カ国以上で開催され、900万人を超える人々が体験。

日本では、1999年11月の初開催以降、これまで24万人以上が体験しています。暗闇での体験を通して、人と人とのかかわりや対話の大切さ、
五感の豊かさを感じるソーシャルエンターテイメントです。

リーフレットより引用



「ゆるめながら 五感をとぎすます 『五感』」

会場は、三井ガーデンホテル 神宮外苑の杜プレミア。2019年に竣工した国立競技場に隣接しており、こちらも2019年に開業した。このホテルの2階にDIDの体験施設が常設されている。

会場には早めに到着し、ホテルとの共用スペースであるラウンジで待つことができる。ただし、この場所は飲食は禁止されている。申込時の案内される注意事項は以下の通り。

□ご体験時間の15分前を目安にご来場ください。
□服装について
・暗闇でのリラックス効果を高めるため、ゆったりとした服装でのご体験をおすすめしています。
 (お着替え用のスペースのご用意があります)
 よろしければズボンやTシャツ、スウェットなどのお着替えをご持参ください。
・スカートや裾のつぼまったズボン、光る可能性のあるお洋服はご遠慮ください。
・裸足でのご体験となります。
□お手荷物について
・ご体験の際は、何も持たずに暗闇にお入りいただきます。
・音が鳴ったり、光る可能性のあるもの(携帯電話、スマートフォン、腕時計など)や、録音機器等のお持ち込みは出来ません。
・お手荷物のお預けに関しましては、ご来場時にご案内いたします。
・体験中の録音、録画、撮影は一切禁止とさせていただいております。
・主催者のルールを守れない場合には、入場をお断りする場合があります。

注意事項から抜粋

注意事項にある通り、体験はゆったりした着衣、裸足で行う。個室の更衣室が用意されており、スマホや時計を含め持参した荷物は全てそこに保管することになる。

支度をすると、視覚障害者であるアテンドの方が、薄暗い小部屋に導いてくれ、壁沿いに配置されている椅子に腰掛ける。

今回の参加者は自分も含め4名。女性、カップル2名、自分。この最初の部屋で各メンバが自身でニックネームを決める。このニックネームはとても重要で、暗闇のなかでのコミュニケーションには必須である

この小部屋を起点として、3つのエリアを移動しながら90分で視覚のない世界を体験する。体験が開始されると薄暗かった小部屋の照明が落とされ、全く明かりのない暗闇になる。この暗闇のなか、参加者を導いてくれるのは、アテンドの方。

この暗闇に、以下のような視覚以外の聴覚、嗅覚、味覚、触覚を総動員する体験が用意されている(ここでは、具体的な体験の詳細な内容については、触れない)

・様々な材質の床を裸足で感じる
・水や木に手で触れ、感じる
・音を感じる
・匂いを嗅ぐ
・食べ物、飲み物を口にする
・暖かいお湯に手や足で触れ、感じる
・白杖、手、指で周囲の情報を得る

なお、体験中は、全員が指定された動作をするために、各自の位置や状態(姿勢)を知らせるためこまめに声を発する必要がある。人を導いたり、人についていったり、ものを受け取ったり、渡したりするのに、視覚情報の代替として、音声を使う。

体験中は、時間を知る術もないため、時間の経過の把握も曖昧となる。感覚的には、90分間はとても心地よく、短く感じた。


体験してみて感じたこと

  • 視覚障害者の方は、暗闇のスペシャリストである。

  • 視覚情報がないと、それを補うために、その他の知覚(聴覚、嗅覚、味覚、触覚)の感度、精度が向上した感覚がある。

  • 冷たい水に手で触れる場面で、手のひらなのか手の甲なのかで感触が異なる。また、暗闇の中で触れる水は、気のせいかややねっとりとした粘度を感じる。

  • 今回初めて白杖を使った。驚いたのは、想像以上に白杖で取得できる情報の多いこと。床や地面の材質、どんな形状なのか、足の触覚情報も含めるとそこから分かることは豊かである。

  • 体験によって、参加者に一体感、連帯感が生まれる。暗闇の中で、ニックネームを呼び時には、身体に触れながら行動する。それぞれの発声は、意識的に聴こうとするため、話している内容がダイレクトに伝わる印象がある。また、位置の特定にも使われる。互いに協力することが求められる。

  • 真っ暗闇での会話は、視覚情報がない分、発せられている言葉への注意力が増しているように感じる。ひょっとすると、ビデオ通話や電話でのやりとりでも、アイマスクなどをして対話をすると違った成果を得られるのかもしれない。

  • 視覚情報がない状態での会話している人の表情は声からわかる。

  • このワークショップは学校教育に取り入れてもいいのではないか。

視覚情報はとても重要ではあるが、それを失ったとしても、思いのほか、世界を把握するための情報の多いのかもしれない。

アテンドの方に伺ってみたかった。当然ながら不便や不自由があるとは思う。それでも、ご自身が「見ている」世界がどう「見えている」のか、それは美しいのかどうか。


DIALOGUE RADIO -IN THE DARK-

J-WAVEに「DIALOGUE RADIO -IN THE DARK-」という番組がある。DIDのオフィシャルラジオ番組で、毎週第2日曜日25:00〜26:00に放送している。

この番組の特徴は、DIDの会場のように、暗闇で収録していること。また、対話は文字起こしされていて、WEBで公開されている。



コロナ禍の7つの提案

DIDで「ダイアローグ ・ジャパン・ソサエティ」という団体の存在を知った。合わせて、コロナ禍2020年に以下のような声明、提案がされていたことを知った。

今回の体験を受けて、この提案に目を通すと、どれももっともな内容であると感じた。

  1. メディアの画像やグラフは「具体的に言葉に」なれば、みんなと一緒に知ることができる

  2. 助成金などの説明や申請手段を一緒に考えてほしい


  3. 「もしも」の場合の移動手段を一緒に考えてほしい

  4. 「触れること」は私たちが情報を把握するための一つの手段です


  5. フィジカルディスタンスや街の変化を、声で伝えてほしい


  6. こんなときだからこそ、声をかけていただけると一層あたたかい気持ちになります


  7. はっきり、笑顔・笑声を




この記事が参加している募集

イベントレポ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?