渋谷の(PLACE)by methodにて開催された⼯芸⼯業デザイン学科クラフトデザインコース木工専攻と資生堂みらい研究グループと産学共同プロジェクトの成果展。完全天然成分でできた透明の木材の可能性を探る。
どれも可能性を感じさせる展示ばかりだったが、ここではその中から気になった展示を取り上げたいと思う。
なお、今回の展示はプロトタイプであるため、一部の展示品のみ透明木材の実物が使用されている。また、現時点で製造できる木材の厚みは数ミリ程度とのこと。
透明木材とは
年輪のコマ/コウエイ
檜の風呂椅子/難波実菜
この展示から連想したのは、神社仏閣。透明木材で作った神社仏閣が実現できるのであれば、見てみたい。
Flowing light/加納彰典
木目があるだけで、ガラスのような透明な材質にはない、魅力的な表情をみせるライト。
TUGU/木村紗輔
座面が透明だけれど、木製のスツール。従来の木材と新技術の木材が組み合わさって、従来の木製スツールにはない、新しい魅力がある。
年輪定規/大谷円心
年輪を定規の目盛に見立て、木材の年齢を測ることができる物差し。年輪を目盛にする発想が面白い。
制作過程のふしぎ/村田 愛咲香
一見すると木材をヤスリで削ったようにも見えるが、それとは異なる魅力を感じさせる加工。加工の度合いによっては、木材に見えない何かに変化させることができるような気がする。
Transnature/中島莉南
実際にプロダクトとして提供されたら、使ってみたい魅力的なコンセプト。コストによっては、名刺にも使えそう。
'WIP'/イム ジョン
木材でありながら、内容物をみることができるのは、再生可能材質のパッケージとしてとても魅力的。
Transport of joy /高橋美香
アロマオイルの浸透度合が花びらに可視化されるデュフューザー。
(soak) basket/松井映里砂
紙などの他の材料とは異なり、木材ならではのスピードで液体が浸透し透過してゆく姿は、従来の材料にはない魅力がある。
重ねる行燈/佐藤 洸希
提灯をはじめ、和紙の行燈とは異なり、木の暖かみを感じさせる行燈。
Sorairo/馬場大和
木製のグラス、といったところか。これも「木材」なら、この加工も「木工作業」になるのだろうか。
これまでの木材の定義を大きく覆す「透明色」という特性は、とても魅力があり、様々な可能性を感じる。と同時に、こういった研究、開発によって、「木材」自体の良さも再認識できるよい機会になっていると思う。
透明木材の構造について専門的な知識はないが、木製の特性を持ちつつ、それ以上の性能をもつ「スーパー木材」として提供できるとより活用できる領域が広がるように感じる。
ただ、そうして誕生した「木材」は果たして「木材」と呼べるのだろうか。元の素材をどこまで保持していたら「木材」なのだろうか。そんなことも考えさせられた。