【詩日記】 送信

送信
 
 
 LINEの送信ボタンを押すときは
 いつも命懸けだ
 誰かはあたしのことを好きになってね
 誰からも返事がなかったら
 やっぱり取り消そう
 このメッセージが消える前に
 あたしが消える可能性があるから
 
 タバコに火をつける瞬間はいつも寂しい
 好きなはずなのに
 喫煙所に縛られている
 煙が狭い空間に辟易して
 空に逃げていく
 君が教えてくれたバニラのフレーバー
 今でもちゃんと好きだよ
 あたしが教えた秘密の高円寺の抜け道
 今でもちゃんと使っていてね
 
 じっとしているだけで
 誰かに見つかろうとしている
 おこがましいんだ
 他人に向かって常に
 レンズのシャッターを
 半開きにしているくせに
 
 今日も人の群れが目の前を通り過ぎた
 これなら水族館に行った方がマシだった
 魚はあたしのことを知らない
 あたしもあなたたちのことを知らない
 でも 明日食べるよ
 それでプラマイゼロにしてね
 ごめんね

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