誰かに好きなものをオススメしたくなる『秘密結社Ladybirdと僕の7日間』

私が好きなものを大事に拾ってくれる人と話したいと思える本だった。


きっかけは港区のバー

会って間もない2人に本を紹介された。その本に出てくるみたいなお店を作り、その本から取ったカクテルがあって、この本に出てきたバーみたいな場所にしたくて作ったというオーナーと、そこに私を連れていってくれた人。

この本の名前のカクテル美味しいよ。ノンアルコールだし飲みなよ。

この本も好きだねえ、いいねえ。

そんな風に語る2人に好感を覚えたし、あのお店にまたふらっといきたいな、なーんて思ったから、本を買ってみた。


好きなもので自分を語る

好きな人やものの話をしてくれる人はおしなべてみな好きだ。

ヒト主義よりコト/モノ主義に近いときが多いので、他人が何をもって自分や自分の好きを語るか?という瞬間が大好きだ。

ボスがマーベルの話をしているとき、最近観た展示会で感動した話をしているとき、私に合わせてその映画のプレゼンをしてくれるとき。人それぞれのフィルターを通して聞くのが好きだ。


本を紹介したりされたりするのも好きだ。マンガや本の貸し借りとか、アニメを一緒に観て人と友好関係を築いてきたからそうなったんだろう。


先日観た『モダンかアナーキー』。一緒に観に行った友人が、fillmarkに感想を投稿してくれてた。(アイコンと名前で疑いようがなかった。きちんと記録するところ、本当にらしい。)


たった数行が嬉しくて仕方なかったし、観終わったあと、感情に耐えきれずに一緒に中華屋さんでハイボール飲んで、たくさん話してくれたのがすごく嬉しかった。

わたしのいろんな好きを否定せず、そこにぽんって置いてくれる。それもいいね、これもいいよ。

そういうことしてくれる人だと思って呼んだけど、やっぱり正解だった。だから、今度はみんなと一緒に映画観ようね!と言って別れた。


熱をこめて語っても見てくれる人はひと握りだから、何かを一緒にしてくれるのが好きで仕方ない。

--すごい本に出会うたびに『あの本面白いんだよ』って本当に大切な親友には教えてあげたくなる。でも実際そんな話をすると、みんなきまって面倒くさそうな顔をするんだ。本なんかつまんないって」

本屋の御堂がそう語る。分かる。好きなものを訴えて受け入れられないときの悲しさ。

それをストーリーにしようとする二階堂のセンスの良さで、わたしはこの本を読むスピードがあがった。


狂気に充てられたものから人生を(いい意味で)踏み外していく

謙治は二階堂肇の狂気にあてられ、学校創立以来の快挙となる、T大学の工学部建築学科に合格する。

自分より賢い二階堂が自分の勉強を教えたせいで専門学校に行ったことへの自責と、その真剣さに打たれて変化していく3年を描いた。

二階堂はこの3年でメンバー6人を動かす力がないと認めて、謙治の背中を狂気的に押し続けるのだ。

お前が重荷に感じる必要はない。俺は、お前の存在を、そして秘密結社の奴らの存在を勝手に利用して、それを力に変えてるだけだ。

舗装された道路から道を踏み出させるには、十分な狂気をはらみ、二階堂もまた謙治の本気を見て、専門学校へ行くのを決意する。

『僕は努力をする。だから、それにふさわしいものを与えてください』
という言葉だ。
それ以上でもそれ以下でも嫌だ。
自分の努力にふさわしいものが、自分の将来に手に入るそんな生き方をしたい。
そして、それが与えられることを信じている。
だから、僕はどこまでも、どこまでも頑張る人でいたい。
僕は、自分のやってきたことにふさわしい人になりたい。


人を動かすのは最後は熱量だと、行動で訴えてくるのだ。


==========

自分で企画作ってると、「コレ、わたし以外は楽しいのかな?」って不安に襲われることがある。

たとえば、自分の思いをモリモリに乗せて回ったマダミス『エンドロールは流れない』はとても良い卓だった。愛が重いから本人たちには言わないけど、また回りたいって思っちゃうくらいには、好きな回だった。

いま、思いを込めて作ってる企画がある。

楽しみだったよ、とか一緒に遊んでよ、をわたしは上手く言えないことが多くて、あなたがいいんだよ、って気持ちばかりが空回っちゃうことがある。自分の言葉が相手に届かないなと思って、一緒に楽しんでくれたら嬉しいなを別の形で表現したりする。

言葉で好きだよだけじゃ伝わらないことを痛感しているから、いつももどかしい気持ちになる。


最近声かけて一番嬉しかったの、「よう分からんけどあなたに託すわ!全力で楽しむ!」って言葉だった。逆に、わたしが誘っただけでOKしてくれる、言葉のない肯定も嬉しかった。

そんなん言われたら頑張りたくなるし、また声かけたくなる。逆に行動で示してくれるから、また声をかけたいねってなる。


誘ったときに嬉しい!って言ってくれる人に声を掛けていきたいし、私が好きなものをちょっとかじってくれる人を大事にしたいな。

という気持ちと共に、自分がいかにオタクとして生きてきているのかということがわかった瞬間を覚えて、ここで筆を下ろそうと思う。


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?