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「エッセイ」私の家の闇

その闇が、何もかも飲み込んでしまう事を私は知っていたはずだった。
此の家へ引っ越して来て六年の歳月が過ぎた。
一番初めにその事に気付いたのは、いつだっただろう?キッチンの隅にひっそりと佇むその暗闇の穴は、いつもただ静かに獲物が来るのを待っている。

怖いかって?

別に怖くはない。
ただ、その事が起こると私の心が、どんよりとした喪失感に包まれるだけだ。
ものによっては酷く落ち込んでしまったり、まぁ、仕方ないさと直ぐに開きなおったりすることもある。

では何故、その闇に目を瞑り、そのまま放置していたのかと言うと生来の私の面倒くさがりと怠け者という性質が大きく作用していると思う。
それに暮らしにそんな緊張感があるのって、ちょっとスリリングだと思わない?

今度こそ塞いでしまおう。
今度こそ…
何度も決心しながら、そのままに放置していたのは、そんな理由からだった。

でも、注意さえしていればいいんだ。
注意さえしていれば…

闇に敢えて餌をくれてやる事はない。そう思いながら、ずるずるとその闇の存在と共存して暮らしてきた。
それは、昨日の遅い朝食?早い昼食を食べた後だった。(因みに昨日のメニューは、山菜蕎麦と胡瓜の浅漬けと餃子。我ながら、センスの欠片もない 泣)
片付けようと洗い物をしている時に悲劇は起こった(泣)
油断していた。
だって、何ヶ月も「闇」と共存出来ていて、犠牲者は出ていなかったから…

「あっ!」

と思った時には、既に遅かった(泣)
菜箸と「お気に入りの箸」を掴んで、洗い物を入れるカゴ(正式名称はなんて言うの?)へ投入した時だった。
パタッ
と言う軽ーい音を立てて「何かが」闇に吸い込まれて行った。
「あら〜、神様!」
人は、こういう時にいきなり神頼みするものだと知った(遅い)思わず、目を瞑った。心の中で、

「お願い!百均の菜箸にして〜!」

しかし、菜箸はしっかりと残り「お気に入りの箸」の片方だけが消えていた(泣)
そう、闇に喰われてしまったのは「お気に入りの箸」の方だった。
なんという不条理、人生の切なさよ、神も仏もないものか(泣)
ひとしきりキッチンの片隅に立ち尽くし、呆然とした作業を行なってみた。それで失ったものが帰って来る筈もないのに…


今から現場検証の写真をお見せしたいと思うが、あまりの「生活感」に引かないで欲しい。ちょっと掃除しておけば良かったと後悔先に立たずである。


キチャない(泣)


お分かり頂けるだろうか?
黒い壁のような物は冷蔵庫である。そして、その後ろに空いた隙間を。

これが我が家のブラックホール「闇」である

この隙間にハシや菜箸、フォーク、スプーン等が、どのくらい飲み込まれていったことか分からない。きっと凄い事になっている。
しかし非力な私は、この冷蔵庫を動かす事が出来ない(きっぱり)
男が欲しい(おい!ドサクサに紛れるな!)冷蔵庫を動かしてくれる男が(ノД`)シクシク


一人ぼっちになったお箸

この日、私は新たな教訓を得た。
「箸は一つでは役に立たない」

新しい箸を買い求めに行かなければ!
(いや、その前に塞いだらどうだろう?)

そんな朝のスタートです!
雨が凄いけど、皆さんお気をつけてね。



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