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危険な組体操の話

こんにちは。
実家が全焼したサノと申します。

僕の通っていた小学校では、
毎年6年生になると運動会で
組体操をすることが決まっていました。

毎年やることはほとんど同じですが、
一応毎年テーマがあり、僕らの代は
「世界旅行」というテーマに決まりました。

例えば、
フランス旅行という演目では
エッフェル塔を作ったり、
エジプト旅行という演目では
ピラミッドを作ったりします。

とはいえ、組体操だけで
各国を表現するのは難しかったので、
組体操で表現できない国は、
ダンスをしたり、
みんなで手を繋ぎ国の形を作ったり、
工夫しながら表現しました。

先生たちもなるべく
リアルに各国を表現できるよう、
一生懸命アイデアを出してくれました。

ただし、あまりにリアルを追求するせいで、
少し変なことになってしまいました。

ある日、僕たちは韓国を
表現するパートの練習に入りました。

韓国を組体操だけで
表現するのは難しいと考え、
僕たちは韓国の、
国の輪郭に沿って並んで、
アリランという朝鮮民謡の音楽に
合わせて踊ることになりました。

当時はまだ韓流ブームが無かったので、
K-POPではなく、アリランでした。

このパートの最大の魅力は、
6年生全員が一瞬で
韓国の形を作ることでした。

僕もみんなと国の形を作るのを
楽しみにしていると、
先生から僕を含む3人が呼び出されました。

「君らは、あそこや。」

先生の指定した場所は、
みんながいる場所から大きく離れていました。

僕たちだけ、なぜか離島を
担当することになりました。

そこまでリアルに国の形を
作る必要があるのか…?と
切ない気持ちになりましたが、
先生が一生懸命準備してくれていたことも
知っていたので、僕たち3人は、
遠く離れた島担当として精一杯、
アリランダンスの練習に励みました。

初めは遠く離れた場所で
踊ることに恥ずかしい思いもありましたが、
慣れてくると「選ばれし3人」
という気持ちになってきて、
僕たち3人は誇らしさすら覚えていました。

そして本番当日、アリランダンスの時、
僕たちだけ離島担当として踊っているので、
少しだけ笑いが起きましたが、
韓国含む十数ヵ国の
組体操を無事に終えることができました。

特に、練習では何度も失敗した
ピラミッドが無事成功した時は、
僕たちも感動しました。

僕たち「選ばれし3人」も
喜びを分かち合いました。

あれから、20年。

僕は「選ばれし3人」の1人、
テッペイ君と久々に会いました。

当然、組体操の話題になり、
テッペイ君は切なそうに語りました。

「いや、最初は3人だけ竹島に
飛ばされてビックリしたけど楽しかったよ。」

え、竹島?


確証はありませんが、確かに僕たちが
担当していた島と、場所は一致していました。

竹島は現在も、日本と韓国が
領有権を巡って争っている島で、
デリケートな島です。

当時、竹島問題は今ほど
話題になっていませんでしたが、
僕たちが竹島担当として、
全力でアリランを踊り狂ったのだとしたら、
誰かの怒りを買っても不思議ではありません。

誰も悪くないけれど、
なんとなく僕たちは、
「選ばれし3人」の話には
触れないようになりました。

昨今、組体操はケガのリスクが高く、
危険だと言われていますが、
思想が危険な場合もあるのだと学びました。

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