今年最後の「白酒ひとり」と、師匠の分別に信頼を寄せているという話

わたしにとって、最優先落語会のひとつである「白酒ひとり」の2022年まとめ。
すでに大変な売れっ子の白酒師匠が、御自ら開催してくださっている会。けど、そもそも白酒師匠は宣伝という意識をあまりお持ちでないようで、会の告知も発売もかなり突然で、ファンは常にパブサ力を試されている……!(そんなこたぁない)

コロナ前まで販売していたぴあだとお気に入り登録すればリマインド機能があるけど、カンフェティのほうがつながりやすいし、座席も選べるので好きなんだよね。願わくばこの形式のままでお願いしたい。パブサ頑張るから。

年忘れ!白酒ひとり

桃月庵ぼんぼり 道灌
桃月庵白酒 しびん / うどんや
〜仲入り
白酒 幾代餅

20221219
国立演芸場

あられさんが二ツ目に昇進したので、前座はぼんぼりさんにバトンタッチ。
二席目の出囃子をぼんぼりさんにお任せしたらしいのだけど、かかったのが「岸の柳」(馬石師匠の出囃子)で、「どこへの配慮だよっ」と言われてました。うける。

一席目は、いろんな師匠方に「お前好きだよな〜」と言われてしまいがちだという「しびん」。白酒師匠は特に意識してないらしいけど、おしもの噺を気に入ってやられるのは、なんですか、雲助師匠譲りですか? 正直、きらいじゃないです。
先代の文楽師匠(たしか)もよくかけていらして、たまにこういう噺をすることで、あえてハズす意図があったのではないかともお話しされていました。客席の期待で、外側から枠がガッチリ固まってしまってはつまらないもんね。
ちなみにわたし個人の意見としましては、雲助師匠はそういう意図も半分、単純に好きが半分(もっと?)というイメージです。

白酒師匠の「しびん」、花を生けるところとか所作がきれいなので、いっそうしびんの汚さとのギャップが可笑しい。脳内にパチッて切る音がちゃんと聞こえてくるの。

あと、田舎侍がしびん片手に、道の真ん中を闊歩している場面の絵ヅラがもう、だいすき。
相手が侍だから誰も口には出せないけど、完全にヤバい奴を見る周りの視線。そしてそれに気づかない田舎侍。これだけでもう絵としてカンペキだと思うw

わたし的白酒師匠の冬の定番「うどんや」と、これまたテッパンの「幾代餅」。同じ日に聴けてしまうとはありがてえ。

「幾代餅」にはサゲがついて、初めて聴く終わり方でした。
もともと白酒師匠の情緒のない「幾代餅」(ほめてます)が大好きで、清蔵の恋煩いじゃないけど、何度聴いても色褪せない。本当に面白い。
ただ、そんな爆笑「幾代餅」にも、どこかファンタジーに浸かっているという感覚があったんだなと、今回のサゲを聞いてみて思いました。

完全に落とし噺のようになってしまうと、清はんと幾代太夫のハッピーエンドから、スッと現実に戻ってしまう感覚があって、正直わたしはこれまでの方が好きだったかもしれない。どちらかといえば、「はぁ〜よかったわね……プププ」って浸っていたい。
でも、たまたま今回やってみただけかもしれないし、さらなる改編のための実験中なのかもしれないし、白酒師匠への信頼は揺らいでおりません(ご本人にメッチャめんどくせぇ〜って思われそうな発言)。

そう。信頼といえば、この日のまくら。
近頃めっきり政治のことをまくらでいじらなくなったなと思っていて、そしたら11月に「白酒のスキップ」という会で新作を演られて。

この日の新作「いつもの」は、行きつけの呑み屋でおじさんたちがいつも通り、ど〜〜でもいいことを話しているうちに、世界は激変して、さらにその激変までもが収束して、結局元通りの世界になっていたという噺。

今年起きた様々な事件を通じて(もしかしたら今年だけでなくコロナ禍も含まれているかもしれない)、「思うことはそりゃ色々あるけど、でも自分のできることをするしかないよね」という、諦めともちがった師匠の悟りのようなものを勝手に感じていました。

師匠が政治のことをいじらなくなったのは、いよいよ現状がシャレにならない状況になっているからだとは思っていて。そうして、時期であったり話題そのものであったり、笑いに昇華できない間は控える選択肢をとる師匠も、触れるならとことん揶揄して客席を笑わせてくれたこの日の師匠も、師匠ご自身が長年高座で培い、磨き上げてこられた分別を、わたしはとても信頼しているんだなあと改めて思いました。想像上の師匠にはそんなつもりねえよ!って一蹴されそうだけど。でも勝手に信頼させてください!!わたしの愛が重い!

最後に言っておきたいのは、白酒版「幾代餅」の搗米屋の親方のハグは、すべての事象を受けとめる、ということです(キリッ)。THE 包容力。
続く「連れて行けっ」の所業も、わりとひどくて大好きですw 

↑これまでの白酒版「幾代餅」に関する感想の一部。ほんまに好きなんや……おわかりか。


せっかくなので、今年の白酒ひとりをまとめてふりかえり。今年は「お座敷白酒」から通常座席にもどり、タイトルにも「!」がついちゃう楽しいシリーズでした。

復活!白酒ひとり

桃月庵あられ 粗忽長屋
桃月庵白酒 風呂敷 / 干物箱
〜仲入り
白酒 花見の仇討ち

20220316
国立演芸場

とび出せ!白酒ひとり

もともと文楽遠征の日程をミスり、参加が叶わなかった会。師匠の二度目のコロナ罹患で中止に。
そういえば白酒師匠、今年もコロナにかかってしまっていたんだった。無事復活されて本当によかったな。来年も、健康第一でお過ごしください。

輝け!白酒ひとり

桃月庵ぼんぼり 道灌
桃月庵白酒 あくび指南 / 厩火事
〜仲入り
白酒 お化け長屋

20220602
国立演芸場

白酒師匠の「あくび指南」は本当に最ッ高だったので、絶対にまた観たい!

国立演芸場が使えなくなってしまうので、今後はどこか別の会場で続けてくださるのかな。続けてくださるといいな。というわけで師匠、来年の日程早くください(虚空へむかって拝んでみる)。

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