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二宮金次郎は何の本読んでるん?

先日、居間にあるテーブルを壁側に少しずらして、空いたスペースにこたつを作ってみた。古来より「こたつは人間をだめにする」と謂われて久しいが、正に言い得て妙、捲った布団から垣間見える、あの暖かい燈色に吸い寄せられ、首までこたつに潜り込んでは、妻に「ビール」「アイス」「(テレビの)リモコン」など言いつけるのみの体たらく。ただ言いつけられた当の妻も、対面でこれまた首まですっぽり入り、なんだか先ほどから既に軽い寝息たててる様子。うーーん。人生、これでいいのだろうか(笑)

そう、そんな無為徒食な日々に少し喝を入れてくれるような、面白いテレビを見たので報告したい。

猪瀬直樹。都知事としては、番組の中で本人も語っているように、金銭面の管理において少し脇が甘く、「伏魔殿」東京都都議会に撃砕され、辞任に追い込まれてしまったという経緯は、私もよく知っている。一方で作家として、学者としての彼を知っているかと問われると、日本型官僚組織にメスをいれ、行政改革の流れを作った作品を書いた「らしい」程度の認識しか持っていなかったのが事実。(まあ、僕の専門分野じゃあなかったのね)今回この番組では猪瀬の足跡をたどりながら、スタジオで直接インタビューして彼の見解や今の思いを聞いていた。

まず、男は、本来持った本能からか、話し始めるとどうしても、話の口調が攻撃的になってしまうのが常だ。自分の思いを伝え説得し、相手を言いくるめ、挙げ句の果てにはギャフンと言わせてやれ位に、話に感情を乗せていってしまう。ところが猪瀬直樹は政治家には似合わない優しい口調を持っていて、女性インタビューアだからかもしれないけれど、番組では静かに淡々として話を進める.。自身の作家生活から政界へ進出していく半生と、またその時その時のエピソードを上手にまとめて話し、聞いているこちらを引き込んでくれ、とても好感を持てたのだ。

次に、親指を上に向け立ててナイス!と言いたくなるのは、インタビュー中は画面に写っていなかったが、奥様(婚約者?)の蜷川有紀が同席していたこと。
まあ、本当に「いい女」とは彼女を指すためだけにある代名詞だよね。番組の最後に登場して、二人の劇的なれそめ(猪瀬のナンパ)あたりを、嬉しそうに楽しそうに話してくれていた。当の猪瀬直樹も前の奥様との死別を「バツイチじゃあなくてボツ(没)イチなんだよ。だって前の結婚生活がイヤだった訳じゃあないんだから」と目前の蜷川有紀に、特に臆することなく淡々と話す。
うーーん、私は図式を考えた。「最愛の奥様を失っても、うなだれ続ける事なく、のち最高いい女を奥様にする」
死別を良しとする訳じゃあないけれど、自分の生活を終わらせない、目前の出来事を見据え、これからどうなる?どうする?かを常に考えている、そんな71歳の学者作家を、私は「イケてる可愛いおっさん」だと思うのだ。
「死別と再婚」という私自身の辿った半生と重ねてしまうからなのだけれど。

そうして、言葉の端までは覚えていないけれど、猪瀬直樹の著作を評してインタビューアが「やはり一番大事なのは、調査、詳細な調査、なのですね」と聞く。
すると猪瀬直樹は「いや、ちがいますよ。まず疑問を持つことからなんですよ。(薪を背負って働きながら勉強をしている)二宮金次郎はすごいな、で終わらせない、彼は何の本読んでいるんだ?て疑問に思う事が大事なんですよ。」
プワーッ!上手いこと言うよね。私はテレビの前で思わず、拍手してしまった。ナイス。

猪瀬直樹すっかり好きになっちゃった。「昭和16年夏の敗戦」kindle版を早速読み始めた。確かに周到なというか巧緻な調査と踏査がこれでもかと続く。しかもインターネットの普及していない時代に、だ。
蜷川有紀も好きになっちゃった。あ、前からスキだよ。いい女、キラッキラの女っぷりが大好き!たまんねえ(涎じゅるじゅる)