論文試験における不法領得の意思の論じ方について

閲覧ありがとうございます。法学系院生です。

今回は、答案での不法領得の意思の論じ方(主に当てはめ方)についてお話ししたいと思います

不法領得の意思とは、権利者排除意思と利用処分意思のことをいいます。

 この要件を事例に当てはめるときに、「権利者の占有を排除して占有を終局的に不法に移転する意思があるから〜」、とか、「財物の〜という効用を享受する意思があるから〜」と権利者排除意思・利用処分意思を肯定する事情を挙げて積極的に論証していく方法があります。そのように論じている人も少ないくないと思います。

しかし、権利者排除意思・利用処分意思がなぜ要求されるか*という点から論じていく方が、多くの場合は的を射た論述になるのではないと思います。
(*なぜ2つの意思が要求されるかというと、権利者排除意思は不可罰である使用窃盗との区別、利用処分意思は利欲犯である領得罪を粗暴犯である毀棄罪と区別するために要求されている(山口各論2版等、ページ数省略)。)

つまり、例えばですが、

画像1

という風に(自作答案から引用)、権利者排除意思については、使用窃盗ではないことから導き出し(あるいは使用窃盗に過ぎないからと否定し)、利用処分意思については、毀棄隠匿目的ではないことから導き出す(あるいは、毀棄・隠匿目的であることから利用処分意思を否定する)という消極的に論証する方が、当該行為者が権利者排除意思や利用処分意思を有していたことを積極的に当てはめるよりもむしろ説得的な論述になるように思います。

ちなみに、不法領得の意思不要説や利用処分意思のみ必要説・権利者排除意思のみ必要説も学説としては存在しますけれど、使用窃盗・毀棄隠匿罪と区別できなくなるのでこのような考え方は試験的には取らない方が良いです。

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個人的に好きなのが山口厚・刑法各論です。論旨明快で切れ味が良いです。






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