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レゲエ史上屈指の名盤Alpha Blondy「Jerusalem」について

みなさんこんにちは、大麻と音楽が大好きな34歳自由業です。

今日はみなさんにレゲエの名盤を紹介したいと思います。
自他共に認めるボブ・マーリー大好きおじさんである作者が今回紹介するのは、歴史的な名盤Alpha Blondy & The Wailers「Jerusalem」(1988)です。

このアルバムはですね、全体的にとてもバランスがよく、トピックにも富んでおり、マルチリンガルであるAlpha Blondyならではの英語、フランス語、ヘブライ語、そしてジュラ語(ニジェール・コンゴ語族だそうですよ)などをふんだんに使って歌われています。

そもそもAlpha Blondyってどなた?というかたにざっくり書きますと、彼はアフリカのコートジボワール出身の歌手なんですね。
レゲエという音楽そのものはカリブ海のジャマイカで生まれたものですので、世界的に聴かれているレゲエミュージシャンのほとんどはジャマイカ出身といっても過言ではないでしょう。その中でコートジボワールというと意外に聞こえるでしょう。

さらに、レゲエを聴かれる詳しいかたならこう思われるでしょう。「レゲエはアフリカ回帰、パンアフリカ思想を哲学的な源流にしているから、アフリカのレゲエ歌手、ラスタというと不思議だ。すでにアフリカにいるのに、アフリカ回帰の音楽を歌うとはコレいかに」と。
レゲエで歌われるアフリカ回帰は、ラスタファリズムという宗教的な思想の影響を強く受けています。このラスタファリズムというのが、エチオピアの黒人の皇帝ハイレ・セラシエがキリストの化身であるとして、音楽や即興詩、大麻を吸って得る神秘的な着想などよってアフリカ回帰(Exodus)へと精神的に団結(Unite)する、という思想なんですね。
著者が昔聞いたところによるとですね、ボブ・マーリーなどが生きて生まれ育った時代のジャマイカでは、政治家などのお偉いさんはみんな白人で、黒人たちはひどい差別の下で、貧困と犯罪の温床でなんの安全の保障もない生活を強いられていたそうなんです。
そんな中このラスタファリズムはレゲエ音楽と結びついて、黒人ミュージシャンとリスナーたちを中心に熱狂的にCelebrateされたわけです。当時から、あの小さな島国の上で無数の(7インチ含む)レゲエのヒット・レコードが生産され、世界にばら撒かれたことを考えると、その音楽が黒人社会に与えたポジティブな影響力には凄まじいものがあったのでしょう。
(ちなみにボブ・マーリーのお父さんは白人でした。彼はイギリス出身の軍人で、ボブのお母さんを妊娠させて捨てて、イギリスに帰ってしまったといわれています。白人たちがたくさんの黒人たちをアフリカから組織的に誘拐して、遥か遠くカリブ海の島の開拓に奴隷として連れてきたことがジャマイカという多民族国家の由来の大きなファクターなのですから、ボブが生まれた当時の人種差別は計り知れなかったことでしょう。
ボブを残されたお母さんは、トレンチタウンのゲットー=貧民街で母子家庭で彼を、世界的な伝説のミュージシャンに育て上げたのです。
白人の血も流れているボブが黒人として劣悪な環境でたくましく育ち、普遍的な平和のメッセージを人種の壁を超えて伝えたことには、なにか運命的なものを感じませんか?)

…話が脱線して長くなる癖があるのですみません。ラスタファリズムというアフリカ回帰思想はですね、レゲエというアフリカから遠く離れたジャマイカの音楽によって、単に「アフリカに物理的に帰ろう!」という思想ではなく、より普遍的な、「アフリカ=自分たちのルーツに誇りを持って平和に生きよう!」というムーブメントとなって、全世界に広まっていったのですね。

さて、

そういうことでですね、アフリカで生まれ育ったアフリカンであるAlpha Blondyが、レゲエを歌っていてもなーんの不思議もないわけです。というのも、彼の出身国コートジボワールも、フランスによって植民地支配されていた歴史があるのです。アフリカで育ったアフリカン・アフリカンである彼にとってもまた、アフリカ人としての精神の尊厳を誇って歌うことには、深い意味合いがあるわけです(注:彼はまだご存命だそうです)。アフリカの心を失わず、抑圧から精神を解放するのが彼らの音楽。その精神はラスタファリズムにあり、ラスタファリズムの象徴、聖地であるエチオピアは、アフリカ大陸で唯一西欧の植民地になったことがない国なのです。
(ちなみにAlpha Blondyはこのアルバムで「I love Paris」という曲も歌っています。侵略と強奪の歴史にも関わらず、フランスの首都を愛する、彼の、ひいてはレゲエ音楽の懐の深さが伺えます。)

えー、この調子でアルバム全曲解説なんかしていくと本が一冊できちゃいそうなので、もうはじめの一曲だけ解説して終わりにします。


一曲目から表題曲の「Jerusalem」が流れます。レゲエにありがちな潔いアルバム構成が素晴らしいですね。

まずはですね、音の雰囲気から話したいと思います。もう80年代の末に発表されたアルバムですから、こう、当時すでにハイファイにしようとすればできちゃった時代だと思うんですね。実際同じ時代のジャマイカのダンスホール(注:ダンスフロアでの盛り上がりに特化したレゲエのサブジャンル。ハイテンポなものが多い。)とか、電子音とか効果音使ってミックスもベースミュージックむき出しだったりしますんで。でもこのアルバムは、オーセンティックであたたかなバンドサウンドをそのままに、ちょうどいい線でベース感の太さや輪郭のある音に仕上がっているんです。ダンスホールがイケイケだったであろう時代にこのルーツ・ロック・レゲエは深い(注:ルーツ・ロック・レゲエは、多くのサブジャンルがあるレゲエの中でも幹の部分。要はいわゆるレゲエ、レゲエの王道がルーツ・ロック・レゲエ。内容面で上記のラスタファリズムの影響が色濃い。スローテンポに力強いボーカル、メッセージ性の強い歌詞が特徴。ボブ・マーリーはこれの権現)。

それに浮遊感とグルーブ感を絶妙に兼ね備えたアレンジ、リズム、心地いいメロディ、そして何よりAlpha Blondyの優しい声が乗って、聴いている人は遥かイェルサレムの地へと心の旅へ誘われてしまうわけです。演奏がボブ・マーリーのバンドであったThe Wailersというのもエモくて最高です。

ここでAlpha Blondyは、アブラハムの宗教(キリスト教、イスラーム、ユダヤ教)すべての源流である、イェルサレムという遠大な聖地へと、音楽の力で聴くものをUniteさせるわけです。ラスタファリズム自体が、そもそもキリスト教を解釈させた新派のようものなんですね。ですから非常に意味深いわけです。
それにこのUnityというものが、レゲエの本質だと著者は(無数に大麻を吸ってレゲエを聴いた経験から)思うわけです。しかも一曲で英語、フランス語、ヘブライ語、アラビア語を巧みにブリッジしていき、統一感のある曲を紡ぎあげるのですから、音と言葉と心という本来ひとつのであるものをもUniteしているわけです…。こう書くと自分でもほとんどワケがわかりません天才ですね助けてください。

個人的には「You can see Christians, Jews and Muslims living together, and pray Amen / Let's give thanks and praises」(ここではキリスト教と、ユダヤ教徒、イスラム教徒が共に生き、共に祈っている。感謝と賛美を捧げよう。)という歌詞が特に好きです。今ガザ地区で起こっている本当に痛ましい戦争にも、悲しいことに宗教が争いと憎しみを助長させる口実としていまだに利用されています。
宗教心の深い気分は、人を争ったり締め出したりする必要性を持たないはずです。むしろレゲエがあれば、心地よく音楽を聴く。踊る。そうして人々の心はひとつになれるはずなんです。そこに国や肌の色、形の上での宗教や言語は、本当は関係ないとぼくは思います。

一曲目からあまりにも名曲なんで、なんか見たらもう3000文字以上も書いていて自分でもなげーなおれこええって思ってきたのでここら辺でやめます。そもそも名盤に解説なんていらないです。すみませんでした。


要は黙って大麻吸って聴け!!


というわけで今回はレゲエの名盤Alpha Blondy「Jerusalem」を紹介しました。

加藤剛アテンペエチチャエッテエ!!!!!!!!!!

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