棹鉦聡

05 散文詩ポエマー 女

棹鉦聡

05 散文詩ポエマー 女

最近の記事

ゆきさん

星になったゆきさんみたいになっちゃったけど。彼女は東京のどこかで今日も生きていて、六日前からコロナで苦しめられている。ガチャガチャの祭典に行きたかったとかなんだと嘆いて、ゲームの最新情報を教えてくれる。彼女の苦しみに、昔ほど寄り添えなくなった気がした。私の熱は下がってしまったというのか、落ち着いたと肯定するべきか。 絶え間なく降り注ぐ冷たい雨の中、私たちは偶然居合わせた。いや、ゲージギリギリで歩き続ける初心者の姿に、中級者なりかけの私はストーキングせざるを得なかったのだ。灯

    • 卒業

      六年間居た学校を卒業した。なじみの校舎、教職員とはお別れである。この中高に進学したことは後悔しているが、学校生活の中で巡り会った人々には語りきれない感激がある。何の縁か知らないが、負の要素を相殺してくれるような、悪くいえば負のために用意されていたかのような出会いばかりであった。 中学入学式が終わり自教室で担任の自己紹介などを聞いて、一区切りついたところで休み時間となった。静まりかえるかと思いきやざわざわとおしゃべりが始まった。一般の試験に合格した上英語のテストで振り分けられ

      • はつかきこ

        良い寿司を食べてきた。大変美味しかった。家族の内3人で行った。父は兄を訪れる時にまた同じ店に連れて行くと言った。全国的なチェーン店である。腹も会計も膨れ上がったが、両親は祝いだと言って笑い飛ばした。 もうすぐ大学生になる。空恐ろしいような希望に弾むような心地で、明日はノートパソコンを買いに行く。最大3つの塾を掛け持ちしては晩秋に全て辞めた。体と心をそれぞれ壊した。精神については前々から機能不全であったし、勉学以外の要因が大きいのだが、とにかく何も手につかないまま気付けば夢打