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五百字

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五百字で描く小さな世界。
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記事一覧

五百字 101.、102.

101.  先日は手紙を有難う。受け取って以来、PTSDやACであっ ても子供を産んで育てられるだろ…

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五百字 99.、100.

99.  昔通っていたピアノの先生の家の縁側の下には、三つ 並んで蟻地獄があった。先生の家の…

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五百字 97.、98.

97.  削除 98.  「ぶーんぶーん」。飛行機の真似事である。私が仰向 けになり両手両足でも…

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五百字 95.、96.

95.  「やだわ、見ちゃった」と、実家から母が電話を掛け てよこす。何を見たのかといえば、…

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五百字 93.、94.

93.  その昔、酷い喧嘩をし、私たち兄弟は父に怒られ閉じ 込められた。弟は押入れの中、私は…

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五百字 91.、92.

91.  展覧会中に友人たちから貰った花束の中に、幾つかの 薔薇の花が入っていた。家に持ち帰…

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五百字 89.、90.

89.  少し前、親しい友人から誕生日プレゼントなるものを 頂いた。包装紙をあけてびっくり、それはきれいなスカ ートで。さすがにミニは似合わないだろうと、彼女は私 の為にロングスカートを選んでくれた。白地に大きな花 柄の、明るい色のスカートだった。  ありがとう、と云いながら、正直私は戸惑いの色を隠 せなかった。スカートなんて。家の中では別にして、家 の外にスカートをはいて出た記憶なんて遠い昔である。 一体この服を私はいつ着ればいいんだろう、なんてこと も思った。何処へ着てゆ

五百字 87.、88.

87.  私は根っからの面倒臭がりで、それが生活のあちこち に表れている。たとえば夜の洗い物…

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五百字 85.、86.

85.  最近保育園に娘を迎えに行くと、出てくるなり彼女が 必ず言う言葉が在る。「アンパンマ…

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五百字 83.、84.

83.  私は蟻も嫌いだけれど、蝶々も嫌いだ。嫌いだし、大 の苦手だ。あの、鱗粉いっぱいの羽…

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五百字 81.、82.

81.  幼い頃どうしても欲しかったものがある。当時流行っ ていたイラスト入りティッシュだ。…

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五百字 79.、80.

79.  本棚の隅っこに置きっぱなしにしていた一冊を抜き出 す。他に読む本が思いつかなくて、…

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五百字 77.、78.

77.  地方名産品フェアだとかで、通い慣れたスーパーの店 先に並べられていたヒバのお線香と…

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五百字 75.、76.

75.  友人がまた一人、遠くへ旅立った。ちょっと出掛けて くるよと言い残して、彼女は二度と部屋に戻らなかった。  部屋を整理していると出てくる懐かしい品々、十代か ら二十代にかけての一時期、私たちは手紙のやりとりを していた。鉛筆書きで、何度も消しゴムで消しながら書 く彼女と、万年筆でぐいぐいと文字を書き連ねる私と。 生きていることへの不安や、あまりに不確かで不安にし かなれない未来という時間のこと、まるで綱渡りしてい るかのように毎日を生きることへの窒息感を、私たちは 毎