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コラム/エッセイ

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記事一覧

映画「夜明けのすべて」に寄せて

雨がしとしと降っているし、何となく映画館へ足が向いた。お財布も中身寂しい状態なのだけれど…

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78回目の、

8月15日、78回目の終戦記念日が終わろうとしている。でも終わってゆくのをただ見送るのはした…

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この場所にだけ存在する掟

 朝5時を回る頃、私は家を出た。夏の朝は早い。あっという間に明けてゆく。昨夜遅くぱらつい…

葉々語り(改稿)

 さっきの口喧嘩はあまりにくだらなくて、僕はダイニングにいる筈の君を探した。いつもならし…

映画「流浪の月」に寄せて

雨そぼ降る朝。バスと電車で出かける。自転車が乗れないだけで不自由を感じる私は、普段どれだ…

一本の青い傘(改稿)

 斜交いの家の金木犀がすっかり散り終わると、季節は秋から冬へ衣替えを始める。時計の針が正…

かつて「子ども」だったオトナより

まだ幼かった頃。家と学校にしか子供の居場所はなかった。その学校で虐められ、家では家で常に緊張を強いられていた私は、自分に適した場所は自分にはないのだと思っていた。自分に適した場所が自分にはない。でもそのどちらかしか子供の居場所はない。私は不適合者なのだ、と、生きることにおいて不適合者なのだと私は自分を断じた。そうすることで、悲鳴を上げたくなる自分を何とか抑え込んでいた。 十代になって。学校が遠方になったこと以外何も変わっていなかった。この世界において不適合者である私は、何処に

斉藤章佳著「盗撮をやめられない男たち」扶桑社刊

学生時代私は、自分の下着を盗撮した盗撮犯を警察に突き出したことがある。お気に入りの本屋で…

或る女 Ⅱ.

 「何なんだよ、この電話、一体何?」。

化粧という字は

 その昔、まだ私がいたいけな小学生だった頃のことである。音楽の時間になると五線が予め描か…

暗室にこもって息を詰めて、

 写真を撮ることも好きだが、私はもしかしたらそれよりも、暗室にこもって現像する、その作業…

或る女 Ⅰ.

 シャワーの音が硝子の扉越しに狭い部屋まで響いてくる。その音をなじるように、女は吸い込ん…

私信/私の知る彼女へ

 最初にあなたに逢ったのは、まだおたがいが十六の晩秋だった。いきなり目の前で泣き出したあ…

「不思議な少年」マーク・トウェイン作 岩波文庫

「ハックルベリ・フィンの冒険」や「トム・ソーヤーの冒険」でよく知られるマーク・トウェイン。しかし晩年には、前述の著作からは想像のできないような、暗さと人間不信、そしてペシミズムに彩られた作品を生み出している。その中の一冊、「人間とは何か」という本は生前匿名で、なおかつ私家版として少数出版したマーク・トウェインであったが、その「人間とは何か」を小説として具現化したものが、この「不思議な少年」に当たるのではないかと思われる。 この本は、正直、心地よい本ではない。三人の少年とサタ