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「帰り道」

乾いた砂利道は 橙に染まる頃
蜘蛛の子を散らすように みなが駆けてゆく
家路に変わる

ひらくすすきの穂の匂いに膝を抱いて
手も振らず見送った じきに消えてゆく
豆粒の背中

 覚えたての子守唄は
 いくら唄ってみても 途切れ途切れ
 冷えてく指先をあたためるほど
 やさしくはない

帰れない家路は 輪郭もにじんでゆく
誰も探しには来ない すすきの根元
ひとりぼっち

刃のような葉を 握り締めては
傷つける手のひらは やがて赤く染まり
もう誰もいない

 覚えたての子守唄は
 いくら唄ってみても 途切れ途切れ
 家をなくした子供は何処に
 帰ればいいの

 覚えたての子守唄は
 いくら唄ってみても 途切れ途切れ
 パパとママは何処へ行ったの
 どうして迎えにきてくれないの

 擦り切れた子守唄は
 いくら唄ってみても 途切れ途切れ
 パパとママは何処へ行ったの
 私は何処へ行けばいいの

―――詩集「家路」より


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