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アムステルダム・パリ旅行記      第一話 この世の終わりとまた始まり

2017年も暮れようという12月のある晴れた日、私が「この世の終わりか」という悲しみに暮れながら羽田空港シャトルバス乗り場のシートに身を埋め、ぼんやり遠くに眺めておりましたものは、これでした。


なんでしょ?これ。
これは私の視線の先にある高速道路にある標識看板でして、本来はこうだったものが、

曲がってしまっているのですね。なぜ曲がったのか?というと、おそらくは
このような事情だったのではないでしょうか。

トラックが悪いのか、看板を設計した人が悪いのか。いずれにしても
確認不足が招いた間抜けな悲劇です。
確認不足。確認不足…….そう、ここで私の悲しみに戻りますが、まさに
私のこの悲しみは「確認不足が招いた間抜けな悲劇」だったのでした。


私は普段〆切のスケジュール都合に合わせて動く事が多い職業柄、
なかなか旅行にいけません。いや、同じ境遇でも時間をうまくやりくり
してスイスイ旅行に行かれている方も多々だと思うのですが、いかんせん
私は時間のやりくりがあまりうまくなく、仕事の期日に遅れない、ただ
それだけを必死に守って生きてきたのです。(今ここで「守れてないじゃないか」とツッコミを入れたくなった方がいらしたら、すみませんすみませんごめんなさい)
ただ、最近、ある事情からとても旅行に行きたくなりまして、連載の仕事や
その他のお仕事の関係者皆様の多大なご協力をいただきまして、パリ・アムステルダム旅行に行こうと思い立ったのです。計画する事半年間、万全の準備をして、前日の仕事をぎりぎりに終わらせ、飛行機で寝るからいいや、と寝不足の頭で早朝出発、羽田へ。エールフランスのカウンターで意気揚々とチェックインの列に並んだわけですが。パスポートを見せた途端係員の方の表情が曇りまして、言いづらそうにこう告げられました。

「こちらの旅券では『有効残存期限』が足りていないようですが…」

えっ。だって、有効期限は3月頭までありますよね?やだなあ、脅かさないで
くださいよ。人が悪いなあ、ははは。と思い、訊き返しますと、
このようなルールを教えてくれたのです。

※有効残存期限とは、有効期限ではなく、有効期間からさらにマージンを
見て、渡航日程の最終日からパスポートの有効期限を迎えるまでの期間にも
入国条件に「各国が」期限を設けている制度。

この「各国が」というのが曲者で、国により違いまして、例えばフランスは3ヶ月。
つまり、12月の17日に帰ってくる場合、パスポートの有効期限がその日から
さらに3ヶ月残存していないといけないわけですね。つまり、3月17日。

足りてない。

そんなルール、親も学校も社会も誰も教えてくれなかったじゃないか!
と、人のせいに出来るような歳じゃなし。一体どーすれば。
「あの、じゃ、空港のどこかで手続きとかしたら何とか出来るんですか」
と狼狽え藁をもすがる思いで聞くと、もう全然ダメ。ナッシング。救済手段ゼロ。
にべもなし。この世は非情。                  

というわけで、羽田から重い荷物を引きずり、家にとんぼ返りすべく
シャトルバス乗り場で抜け殻のようになっていたのでした。       旅行代理店など通さずに、昨今自分でネットでチケットなど買えてしまうこのご時世ですが、こういう落とし穴があるのですね。結構多いみたいです、これをやるうっかりさんな人。ええ、ええ、かわいそうな我らうっかりさん同盟よ。

泣きましたとも、うちに帰って。

さらには、今さらながら告白しますが、旅行中に原稿やラフの返事など送ってくれる予定になっていた仕事の方からのメールの文面の
「ご旅行中すみません、旅は楽しまれていらっしゃいますか」
というお気遣いに、あまりにバツが悪く、               「実は旅行に行けませんでした」
とはついぞ言えず(ごめんなさいごめんなさい)、家でぐったり泣きながら猫を撫でておりましたよ。
うわーん。ちなみに、寝不足は解消されました。だって、暇だったもん!


という事が、2017年にありまして、やはりどうしてもそのままでは未練がありすぎてこのままでは心残りで人生が止まったような気がしていけない。どうにかこのぽっかり空いた心の穴を埋めねば。と、2018年の秋、サイフは寒いまま(ちなみに自分のミスですから旅行代なんて帰ってきませんでしたよ、ええ。一緒に行く予定だった友人には、完全に私のせいであまりに申し訳なかったので旅費は私がカバーしました。まあ、格安で予定を立ててたんで被害は最小限だったんですがね。心の打撃はマックスでしたが)博打に負けてさらにつぎ込むアレみたいだなと思いつつも、また同じ旅行先に向かう事にしたのです。(ちなみに、前回も今回も同じ友人と行きました。高校以来の友人で、本当、こんな事があっても友人でいてくれて、ありがとうありがとう大好きだよ!)

今回こそはパスポートも万全、さらに早起きしてまた気持ちのよい晴れた日に成田に向かい、KLMのチェックインカウンターに向かい(今回は日程を逆にして、アムステルダム-パリにしておりました)、恐怖と緊張で胸が爆発しそうな気持ちで恐る恐るパスポートを見せると…。


何事もなく通過し、荷物を預けられたのでした。もう、これが旅行中
一番嬉しかったことかもしれない。わーーーーん。
というわけで、わたしのこの世はまた始まり、行ってきます!夢のアムステルダムよ!

(って一話でこのペースだと、一体何話の旅行記になることやら)

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