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【UWC体験記⑯】アフリカダンスチーム(KNF)での活動ー植民地支配についてのショーに参加

入学してから2週間ほどで行われたWelcome Ceremony。2年生がいろんなパフォーマンスをしてくれるのですが、そのうちの1つのパフォーマンスが強く印象に残りました。

それが、KNFというアフリカダンスチームのパフォーマンスです。メンバーはアフリカ人ばかりでは無いけど、今までに見たことのないようなダンスで、メンバーが皆本当に楽しそうにやっている!

参考までに、アフロダンスとは以下のようなダンスです。(実際に私たちもやったものです)

その数日後、全校メールでKNFの新メンバーのオーディションの案内が。

「アフリカダンスが好きでチームに入りたい人。チームに入るつもりで無くても、アフリカダンスを一回やってみたい人。みんな大歓迎です!」

メールにはそう書いてあったので、ダンス経験の無い私でもアフリカダンスを「一回やってみたい人」として行くことにしました。

そして指定された時間にダンススタジオに行くと、20人ほどの1年生が集まっています。オーディションは2回に分けて行われたので、ざっくり合計40人ほどが受けたことになります。

そしてオーディション開始。まずは1時間半ほどじっくりと1つのダンスを教わり、最後に数人ずつで披露する、という形式です。

ただ、教えてもらうダンスが激ムズ。足の動きが多すぎて全然付いていけません…ただそれでも、教えてくれる2年生たちの優しさ、そして常に熱く盛り上げようとする雰囲気がとても好きになり、急にものすごくチームに入りたい気持ちが出てきました。

あっという間に練習時間は終わります。最初の数人を見ていると、案の定ほとんどの人がダンス自体はほとんど習得できていません(笑)。リーダーからは「どれだけダンスが出来ているかよりも、エネルギーが大事!」と。その言葉を鵜呑みにして出来ているフリをとにかく全力でやりきりました。

その1週間後、まさかの新メンバーとして選ばれた5人の中に入ったという連絡が。オーディションに行っておいて、すごく入りたくなっておいて言うのもなんですが本当にびっくりでした。

そしてすぐに顔合わせのような形での集まりがあり、早速踊ろう!と。アフロビートの音楽をひたすらかけて円になり、1人ずつ真ん中に入っていって即興のダンスをするという私にとっては超難易度高めです。

なんとなく動いてみただけですがそれでもめちゃくちゃ盛り上げてくれ、とても楽しい時間を過ごすことができました。

初パフォーマンスは食堂でーBlack History Month

そして2回目の集まりで発表が。

「金曜日の昼にdining hallでパフォーマンスやるよ!」

え?金曜日って2日後じゃん???

割と1年生メンバーみんな驚いてはいたのですが、どうやら10月のBlack History Month に合わせて他のダンスチームとも一緒にパフォーマンスをすることに決まったそうです。

早速練習開始し、かなりシンプルな振りではあったのですがその次の日の夜にはもうリハーサルとして食堂で実際にやってみます。

そしてその次の日の昼ごはん中、ちょっとしたサプライズとしてパフォーマンス。私はものすごく緊張していたのですが無事成功し、もちろん大歓声があがります。

人前でダンスするのって楽しい!と、ACに来る前の私では信じられないようなことを感じていました。

そして1年間を通していくつものパフォーマンスを実施することになります。

例えば、
経済状況が厳しく学用品を支払えない生徒たちのためのファンドレイジングイベント。
Queer Conference(LGBTQ会議)のオープニングセレモニー。
SLACC(イベント委員会)の会長選挙の応援パフォーマンス。

Queer Conferenceでのパフォーマンス

学校内のどちらかというと真剣にダンスをやるヒップホップチーム、コンテンポラリーチームと並ぶぐらい人気はあり、依頼があったり何かダンスを披露する機会があったら行く、というような足軽さでした。

パフォーマンスで使ったアフロビートの曲の中でも好きなものをいくつか。


1時間後に練習?!

さすがに2日後に本番、ということは最初の時以降は無かったのですが、いつもパフォーマンス本番の1週間前、早くても2週間前に練習を開始します。

それでいて3曲、フルでないにしても覚える必要があったりして、必然的にほぼ毎日練習が入ることになります。いつも大抵夜の7時から9時など、私は空いている時間ではあるのですが、参加率がかなり低い…

そして一番困るのが、その日の、本当に数時間前に練習があることを知らされる時です。何回かあったのは、特に土日など、「5時から練習やるから集合して!」というメッセージが来るのがその1時間前の4時だったり。最短では20分前に言われたこともありました。

私は日本の感覚でいくら生徒だけのものであっても遅刻は絶対に許されない感覚なので可能な限り何としても時間通りに行くのですが、そもそもリーダーたちもほぼ毎回遅れてきます。そして普段の練習であっても来ないことの多いメンバーたちは、直前に知らされた練習は「知らなかった」という言い訳が簡単なのでほぼ100%来ません。

すると、10人以上いるメンバーの中で、結局集まるのは私とリーダーともう1人、みたいなことが多く、それでも練習はやります。結果私は他の人たちの倍の日数ぐらい練習に参加していることになるのですが、毎回一番練習に来ていない人に合わせて私は同じ振りを何回も教わることになります。

ただ、ほとんどの人がダンス経験者、アフリカダンスをやっていた人もいるので倍の回数教わって同じぐらいのレベルになれる、というのが悔しいところでした(笑)。

特にアフリカ地域ではみんながとてもリラックスしているため、日本のようにカチカチした感じは好まれず、文化として遅れたり無断ドタキャンは当たり前、ということでもあるそうです。

ここまででは無いにしても、AC(私の学校)全体としてかなり時間にルーズに所なところがあり、5分10分遅れても「ACタイム」と呼ばれます…

確かに寮生活である上、ほとんどの集まりが350人しかいない生徒だけで行われるので、お互いが最低でも顔見知りで甘いのは分かるのですが、それでも他の人の時間を無駄にしている意識が無いのはどうかなーと、私は意地で絶対に何でも時間通りに行くようにしていました。

Savage Show

1月ぐらいにAfrocarrib national groupとしてnational eveningとは別にSavage Showというショーを企画していると伝えられました。

このショーは、アフリカ地域の過去の植民地支配や、アフリカ人の奴隷制の歴史をパフォーマンスを通して伝えようというものでした。その中で私たちKNFも何個かダンスを行うとのこと。

早速練習を始めたのがZombieというダンス。その名の通り、植民地支配されたアフリカ地域で酷使されたアフリカ人をゾンビに例え、多くのフォーメーションチェンジや行進などで表現したパフォーマンスです。

ブロードウェイで上映されたミュージカルの中のパフォーマンスを参考にしたそうです。

もう1つの曲も進め、いつもと違って1か月も前から練習をし続けかなり上手くいっていました。

思わぬショック

Savage Showは私の東アジアnational eveningの前日の土曜日に行われることになりました。そしてSavage Showのフルリハーサルもその前日の金曜日、national eveningのリハーサルと同じ日に行われたのです。

ただ、national eveningの方では1週間前から細かいリハーサルスケジュールが送られて来ており、national leaderからも「事前に送っているんだから自分が来ないといけない時間はこれを優先してね!」と言われていました。

一方でSavage Showの方は前日になっても何時にどこに行けばいいのか全く分からない。やっと当日、金曜日の午前中になって送られてきたのですが、KNFの時間帯は私のnational eveningのスケジュールと丸被りでした。

私の中では至極当たり前に、「ごめん、national eveningのリハがもう入ってたからいけない」とメッセージを入れたのですが、あとから大変なことになります。

リハーサルが終わった後、食堂で夜ご飯を食べているとKNFのリーダーのNさんを見かけたので、「今日行けなくてごめんね」と、本当に一応のつもりで謝りました。すると、思わぬ反応が。

「何で来なかったの?すごい大事なショーなんだから。もし明日も来なかったらあなたは本番には出さないよ」と。

かなりショックでした。今まで一番真面目に練習してきたのは私だったのに。そしてNさんとはKNF以外でも様々な活動で一緒にやってきて個人的にも仲が良く深い信頼関係が築けたと思っていました。それなのに私が適当な理由でサボったりするような人間ではないことも分かってもらえていなかったの?

怒られた内容よりも、その人との今までの人間関係がパーになったような気がしてとにかく悲しくなり、食堂の中ではありますが涙が出てきました。すると周りにいた人たちはみな、「Saraは悪くないよ」と慰めてくれ、台湾人の友達、Mさんはそのまま私に付いてきて話してくれ、「もう一回話しに行こう」とNさんの住む寮まで付いてきてくれました。

まずMさんがNさんと話をしてくれ、そのあと私を見るとすぐに「ごめん、言い方を間違えたって反省してた」と。そもそも私が午前中したメッセージも見ていなく、完全に無断で来なかったと思っていたとのこと。そしてAfrocarrib national leaderも務めるその人はSavage Showの全体のとりまとめも行い、かなりストレスがたまっていたと。

「言い訳でしか無いけど」と言い、本当にごめんと謝ってくれました。私からするとそれを言ってくれるだけでかなり気分は良くなったのですが、Mさんの助けも借りて私が悲しかった理由を話します。

すると、「あなたみたいなこんな素晴らしい人はいないよ。本当にいつも感心しているし、自分と友達でいてくれて感謝している」と言ってもらい、余計涙が。仲直り以上に、お互いの尊敬するところ、そして感謝を言い合うことができ、その場を作ってくれたMさんには本当に感謝しています。

その後、Nさんの卒業までの数か月間、一層距離が近くなり一緒に座って何時間も話すことも多くありました。そしてNさんの卒業後、私が2年生になってからも頻繁に連絡したり、よくビデオ電話をして私が他の活動のリーダーとしてきつい時など、いつも通りの明るさでものすごく励ましてもらい続けました。

話は逸れましたが。もし同じことが日本時代に起こったら、私の場合、だんだんとその人との距離が広がっていくだけだと思います。ただ24時間同じ空間で暮らしているACでは逃げ場がなく、良い意味でも悪い意味でもお互いの心の関わり合いが大きい。

日本にいた時だったらこの時ほどショックは受けなかったでしょう。でも逆に、日本だったらこれほどの信頼関係を築くこともなかったし、その関係性をより深めるきっかけも無かっただろう、と思うのです。

本番!

土曜日は朝から練習となり、もちろん私は一層やる気が入りますが、他の人たちがみな遅れてくることには変わりありません(笑)。

そして7時に開演。バックステージ待機なので他のパフォーマンスはあまり見れないのですが、詩、歌、ダンス、スピーチなどで重いテーマでありながらもアートとしてAfrocarrib national groupの人たちが様々なパフォーマンスを行います。

そしてZombieダンス。今までに浴びたことのない歓声、拍手の量でした。そしてショーが終わるとあまり出演回数の無い私でも「Zombieすごかった!」と何人もが声をかけてくれました。この時のZombieダンスはショーの中でも目玉パフォーマンスとして2年生になってからもたまに話題になるぐらいでした。

Zombie Dance

Savage Show自体も大成功で、本当にその一部として参加できて光栄でした。


2年生リーダーの引退

Savage Showの数週間後、1年間の最後のパフォーマンスとしてFemiCon(フェミニズム会議)でやることに。Savage Showで燃え尽きたのかこの頃にはほとんどのメンバーが練習に参加しなくなっており、まさかのリーダー2人と次期リーダーの1年生1人と私、という4人。

しかも他は全員アフリカ人なので「これ私いていいの?」と聞いてしまったのですがKNFのメンバーなんだから!と言ってもらい最後なのでやることに。

そして本番直前の最後の練習の時。Nさんでは無い方の、あまり距離は近くないけど私はとても尊敬していたリーダーから「Sara、本当に1年間ですごい上手くなったよね。びっくりしてるよ。」と言ってもらいました。

というのも、その人は最初からダンスの基礎も何も無い私に何度も一対一で付きっきりで振りを教えてくれたり、私のダンス力の無さにおそらく不安ながらも、やる気に応えてとても辛抱強く教え続けてくれた2年生なのです。
そしてよく考えてみると自分のダンスの習得も早くなったし、前はどこをどう動かせばいいのか分からなかった動きも何も考えずに簡単にできるようになっている!

オーディションでのリーダーたちの私のレベルの見誤りだとしても、あの時エネルギーを見せることに集中して受かっていて本当に良かったと思っています。

その後は私の同級生たちにリーダーが引き継がれ、2年目も続けました。パフォーマンスは何回かあり、その度に新しく入ってきた元気な新1年生のメンバーたちと楽しい時を過ごしました。

しかも1年生が率先して時間を守ることや欠席連絡を事前に入れることを大事にし、リーダーたちにもスケジュールを前もって知らせるよう抗議するので、そういったことをあまり口に出しては言えない2年生で情けないのですが、練習環境は良くなったと思います。

そしてまだリーダーたちが引き継がれ、今の1年生たちが上の代になった来年のチームがとても楽しみです。


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