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トラペジウム

トラペジウム。ラテン語で「台形」の意味。

高山一実さんの小説、トラペジウムを読みました。私はアイドルが好きなので、アイドルを目指す女の子の小説、かつ乃木坂の子が書いたという理由だけで手に取ったミーハーです。

あらすじ👧🏻主人公・東(あずま)ゆうは、絶対にアイドルになりたい高校一年生。同じ地域にある、東西南北各高校のかわいい女の子を集めてアイドルになる。それが東の野望。そのために黒髪のボブをキープ、ボランティアをする、など愛しいくらい想いがストレート。策士のようだけど、理由が明確なので、納得してしまう。彼女がアイドルを目指し、アイドルになる10年間の物語。

表紙の絵がものすごく可愛くて、まさに「アイドル」と言われて思い浮かべる、清純さや可憐さの様な印象を抱きました。
読み進めていくと、これは東が目指すアイドルの姿なんだなと分かります。

アイドルになる前から、「アイドルになった時のため」を考えてSNSをやらない、恋愛をしない、などとにかく真っ直ぐで、夢というより目標であり、彼女はアイドルになれなくてもなるんだなと感じさせます。

私は、アイドルは誰かが「アイドルだ」と言えばアイドルだし、ファンもいないのに自分で「アイドルです!」と言ってなれるような、申告制のものではないと考えています。
でも東は、そういう概念としてのアイドルではなく、東が思い描くアイドルとしての資格があり、それを有していればアイドルになれると思っていて、職業としてのアイドルがあると信じているのだろうと思います。

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誰かがとにかくキラキラ光って見える時がある、シャッターを押したい瞬間がたくさんある人がいる。アイドルと写真は相性が良いな、と思う。今!この瞬間!みたいな一瞬が、好きすぎて苦しくなる時間が、たくさんある。だからアイドルのオタクって、いや、アイドルだけじゃない。イルカだって電車だって、好きは、カメラを持つきっかけになる。

この物語の中には、真司という男の子が出てくる。彼と東はまるで…。
私は、男女が出てくると恋愛の物語になってしまうのが好きではない。
彼は東と最後に会話を交わしてから8年後、写真展を開く。「ほしぞら写真展」というタイトルで。
その写真展には、8年前に撮った東たちの写真が。真司にとって東は、ピカピカキラキラ光る、星のような存在だったのだろうと思う。
それは、恋か恋でないか、そんなことはどうでも良いと思わせるほどの解だなあと思う。
まるで星のように感じる、シャッターを切りたくなる存在がいる、それだけで良いのだと思う。

自分がまさに誰かの星である高山さんがこの事実を描くなんて、優しいなあと思った。推しがこんなの書いてくれたら、泣いちゃうよ。推しが書いた文を読みたいなあ。

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