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名古屋最強ミニシアターを探せ!ナゴヤキネマ・ノイ VS シネマスコーレ

1月23日の夜はTOKUZOのトークイベント「名古屋最強ミニシアターを探せ!ナゴヤキネマ・ノイvsシネマスコーレ」に参加しました。

TOKUZO入り口の手書きボード


開場後

永吉直之・仁藤由美(ナゴヤキネマ・ノイ) 坪井篤史・大浦奈都子(シネマスコーレ)温泉太郎(イラストレーター) 司会:山口雅(ライター)
以上が登壇された方々のお名前です。

名古屋シネマテークVSスコーレ方式で、過去から現在に至るまでのそれぞれの劇場の歩みから、各人が、自身の劇場でかけた上映作品の中で最も思い入れのある映画を一本選んでこられ、それにまつわるエピソードを語るところから始まりました。

シネマスコーレ創設


名古屋シネマテーク創設


私にとって大切な名古屋シネマテークの存在と歴史があるからこそ、ナゴヤキネマ・ノイという現在に繋がっていることは紛れもない事実であり、ミニシアターの明るい希望となるトークイベントでした。

ナゴヤキネマ・ノイ代表の永吉直之さんと仁藤由美さんは、名古屋シネマテークで90年代から閉館まで30年以上勤務された映画のベテランです。
永吉さんは映画館で働く経験は名古屋シネマテークが3つ目の劇場だったそうで、シネマテークで働き始めて最初に映写した映画が、ホウ・シャオシェン監督『非情城市』だったそうです。それまで氏が勤めた2つの劇場では、学生アルバイトだったため経験が浅く、フィルム上映の切り替えの目印を判断することが難しく、とても緊張した映写だったそうです。

ナゴヤキネマ・ノイ代表 永吉直之さんが
選んだ一本の映画

仁藤さんは、テオ・アンゲロプロス監督『霧の中の風景』。仁藤さん曰く、代表者が新婚旅行により不在の期間中で、他のスタッフと奥三河へ一泊二日の社員旅行に出かけた思い出を語り、旅行から帰ってこの映画を映写した時の記憶と結びついているそうです。そのような秘話が聞けるとは思わなかったので、嬉しいサプライズでした。この映画はアンゲロプロスの代表作であるロードムービーですが、ラストシーン(姉弟が一本の木に向かっていく抽象的で美しいラストシーン)と、映画内の終わりゆく時間感覚が実体験と重なり、タイトルを聞くだけで涙が出そうになると語られていたのが印象的でした。

ナゴヤキネマ・ノイ代表 仁藤由美さんが
選んだ一本の映画

映画の記憶は、映画館、特にミニシアターと密接に結びついています。
私が、名古屋シネマテークで観た映画を一本選ぶとしたら何だろう。テークでは濃厚な映画体験が多く選ぶのが難しい。

一番の長尺映画、438分のタル・ベーラ監督『サタンタンゴ』は、2回休憩を挟んでの苦行にも近い鑑賞でしたが、大雨だった当日の悪天候と映画の空気感・世界観と相まって、名古屋シネマテークでの体験の記憶として結びついています。

特集上映を観に行くことが多かった中で近年ではシャンタル・アケルマン監督作品は記憶に新しい、鮮烈な映画体験でした。
大好きなブレッソン、ゴダール、ヘルツォーク、ブニュエル、ペドロ・コスタ、アラン・ロブ=グリエ、クリス・マルケル、ケリー・ライカート、寺山修司特集など、枚挙に暇がない。

2018年のベルイマン生誕100年映画祭は特に印象に残っています。中でも、1972年『叫びとささやき』の毒々しいまでに真っ赤な映像表現のなかで繰り広げられる、姉妹の愛憎劇は強烈な映画体験でした。実際に画面を直視できない痛々しい描写もあり、『エクソシスト』や『ミッドサマー』など数々のホラー映画に影響を与えたことでも有名です。血縁関係、または女性であるからこそ逃れられない運命の果てに、精神的な救済であるかのようなラストシーンの美しさは、シネマテークで観た映画の中で最も忘れられない一本です。

スウェーデンの巨匠イングマール・ベルイマン
生誕100年映画祭(2018年)
イングマール・ベルイマン監督
『叫びとささやき』(1972年)

話が脱線しましたが、スコーレのお話では、亡き若松孝二監督の逸話や、坪井支配人とスタッフ大浦さんによる劇場の現状について、自虐的なユーモアを交えつつも切実な思いを直接聞くことができたのは良い機会だったと思います。

ナゴヤキネマ・ノイは、3月にオープン時期が遅れると言う事でしたが、トークの締めくくりとして、こけら落としとして上映される予定の東海テレビドキュメンタリー『その鼓動に目を当てよ』『神の道化師、フランチェスコ』、カール・Th・ドライヤー監督特集の予告が上映されました。

東海テレビドキュメンタリー
『その鼓動に耳をあてよ』
カール・テオドア・ドライヤー
セレクションvol.2
『神の道化師、フランチェスコ』
デジタル・リマスター版

ドライヤー版『吸血鬼』は以前から観たかった待望の映画です。仁藤さんが、他のあらゆる古典の吸血鬼映画より、ドライヤー版『吸血鬼』が一番好きと断言されていたので、ますます鑑賞が待ち遠しい。TOKUZOというライブハウスならではの音響の臨場感と、映画館で映画を見ることの価値観の奥深さを改めて感じ取った時間でした。

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